第四十七話 JUMと巴
「一つ屋根の下 第四十七話 JUMと巴」
さて、真紅姉ちゃんはダッシュで翠姉ちゃんと蒼姉ちゃんのクラスに駆けて行き、僕はヒナ姉ちゃんと柏葉の三人となった。とりあえず、適当に練り歩いている。「あ、見て見て~!クレープがあるの~!買おうよ~!」ヒナ姉ちゃんがクレープ屋を見つける。以外に食べ物屋があるなぁ。ウチは大丈夫だろうか……「ん?チョコバナナも売ってるんだ。じゃあ、僕はチョコバナナにしようかな。」お祭りといえばチョコバナナだろう。クレープは普段でも売ってるけど、チョコバナナは普段はあまり見かけない。「じゃあねぇ~、ヒナはストロベリークレープにするの~。」相変わらず苺ジャンキーだ。我が家はジャンキー多いなぁ。乳酸菌信者しかり、玉子焼き信者しかり、紅茶ジャンキーしかり……後は、食べ物全般?「私もチョコバナナにしようかな。」柏葉が言う。多分、ヒナ姉ちゃんと半々にでもするんだろう。この二人は本当に仲がいいからな。「甘くて美味しいのぉ~。」ヒナ姉ちゃんが満足気にクレープを頬張っている。うん、僕のチョコバナナも美味いよ?たださ……黙々とチョコバナナを咥えて食べてる柏葉が何て言うか……うん、エロスだ。「巴とJUMの美味しい~?」「ん、ヒナ姉ちゃん食べる?」僕がすっとチョコバナナの棒を持って、ヒナ姉ちゃんに向ける。ヒナ姉ちゃんはパックリとそれを咥えて美味しそうにチョコバナナを食べる。「甘いの~。じゃあ、JUMにもクレープ食べさせてあげるね!あ~んするの~。」ヒナ姉ちゃんが精一杯背伸びをして、僕のほうにクレープを向ける。僕も背は高くないが、ヒナ姉ちゃんは低い。いや、低すぎる。僕は体を屈めると、それを一口頂戴した。そんな僕らを見ながら柏葉はクスクス笑っている。「ん?何だよ。何か可笑しかったか?」「ふふっ、仲いいなぁって思って。」柏葉が言う。いやいや、貴方達には敵わない気がしますけど。
「あら…雛苺、頬っぺたに苺がついてるよ。とってあげるからジッとしててね。」「およ?分かったの~。」柏葉が屈んでヒナ姉ちゃんの頬に顔を近づける。そして、このお方は何を思ってるのか、ヒナ姉ちゃんの頬をぺロリと舐めた。「う……トモエくすぐったいのよ~。」ヒナ姉ちゃんがくすぐったそうに笑う。いやさ、くすぐったいとか、そんな問題じゃないような気がしますけど?「何時もの事だから……気にしないで桜田君。」いや、普通は気にしますよ。でもまぁ、ツッコミ入れても仕方ないんで僕らは校内を歩く。「お、あの金髪の小さい子と黒髪のショートの子もアリス候補だったよな。」「ああ、違いないな。あれ?あの眼鏡。さっきは金髪ツインといなかったか?」「そういえば……あいつは一体何者なんだ!?」歩いてると、僕の耳にそんな声が届いてくる。何者て……弟と友人としか言えない……「そういえばさ、よく柏葉がアリスゲームに出る気になったな。」めぐ先輩は何気にノリのいい人だ。参加してもオカシクはない。でも、柏葉は我が家で言えば真紅姉ちゃんや蒼姉ちゃんみたいに、こういう行事には控えめな感じだと思っていた。「うん、雛苺が一緒に出ようってせがむからね。だからかなぁ。一応クラスの推薦もあったし……」そういう事か。クラス推薦と言えば、うちのクラスは桑田さんだな。「今回だけはトモエには負けないのよ~。ヒナはアリスになってJUMを貰うのよ~!」ヒナ姉ちゃんが言う。そういう事を校内で言いなさんな……「へぇ~…アリスになったら桜田君が貰えるの?そうなんだ。ふふふっ・・・・」あれあれ?何ですかその微妙に黒い笑いは。まぁ、見なかった事にしよう。そんな事を思ってると。ある教室から聞き覚えのある声がした。
「さぁさぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃいかしら!今からこのアリス高校の才女金糸雀が実験をお披露目してあげるかしら~!」そこは、カナ姉ちゃんのクラス3-Bだった。教室には色々なカナ姉ちゃん作と思われる怪しい物体が沢山ある。「JUM、かなりあなの~。見て行こうよ~。」「うん、僕はいいけど。柏葉は?」「いいよ。私も興味あるし。」そんな感じで僕らは教室に入り、用意されてた椅子に座る。何だ、結構お客いるじゃん。「いいかしら?この液体と液体を絶妙にブレンドすると……何と!媚薬が完成かしら!!」そんなものを学校で作らないでください。しかもそれ、以前(3話)で作った奴か?あの時は大変だったなぁ。銀姉ちゃんが間違って飲んじゃって銀姉ちゃんとカナ姉ちゃんの百合的な展開に……「いいかしら?絶妙なブレンド加減かしら……こ~んな感じにぃ~……ひゃあ!!?」二つの試験管に入った液体をビーカーに入れて混ぜていく。すると、ビーカーからボンと煙が吹いた。「ごほっごほっ……ええっとぉ……今のは悪い見本かしらー!」あるあるぅ!昔のCM思い出したよ。タ○リがやってた奴ね。体育の時間に先生が~、失敗すると今のは悪い見本!って奴。カナ姉ちゃんはそれを地でいっていた。でもまぁ、お客さんには受けてるな。元々愛嬌があるもんなカナ姉ちゃんは。「媚薬は危険なのでここまでかしら。次は……カナの発明品!指でつついても割れない水風船かしら!!」ドラ○もんの道具のようにババーンと水風船を出すカナ姉ちゃん。指でつついて割れないのはいいけどさ。それって何かメリットあるのかな……「これがあれば、縁日とかで釣った水風船があっと言う間に破裂しないかしら!激しくヨーヨーしてもバッチこーいかしらー!」どんだけ激しくヨーヨーすれば割れるんだ?しかもあれ。基本的には割れるんじゃなくて、水と空気が抜けて普通の風船になるのが末路だ。ずっと膨らんだまま!とかのが凄い気もする。
「あら?JUM達かしら。丁度良いわ。こっちに来て、カナの風船の頑丈さを試すかしら。」カナ姉ちゃんが僕らを手招きする。う~ん、人の前に立つのって苦手なんだが……「ちょっと待つかしら。今水を入れるかしら~。」カナ姉ちゃんが風船に水を入れて、水風船にする。あっと言う間に手ごろな大きさに風船は膨れ上がった。「さ、指でつつくかしら。全然丈夫だから全く問題なかしらー!」う~ん、突付いたら見事に割れて濡れるとか勘弁だよ?そう思ってると、ヒナ姉ちゃんは興味ありまくりなようでツンツン突付いていた。お、すげぇ。割れる気配がない。「ふっふ~ん、どうかしら?もっと大きくても問題ないかしら!」カナ姉ちゃんが再び水を入れる。風船はどんどん巨大化していく。これ、割れたら僕らへの被害は甚大だ。「さぁさぁ、どんどん突付くかしら~!」僕が恐る恐る突付く。ツンツン……お?何か大丈夫っぽいぞ。コレは凄い…かも。「じゃあ、これで突っついてみるの~!」ヒナ姉ちゃんがどっから持ってきたのか、針を風船に当てる。「え!?ちょっとヒナ針はダメ・・・」「えい!!なのー!」瞬間、巨大な水風船はパーーーーン!!!と盛大な音を立てて破裂した。中に入ってた水が、僕とヒナ姉ちゃん、カナ姉ちゃん。さらに柏葉に思い切り降りかかった。「きゃーかしら!!……うぅ……な、何で針で突付くかしらー!!」「うよ……だって、指じゃ割れないから……」「割るのが目的じゃないかしらー!!」全く持ってその通り。だけどさ……怒鳴る前に自分の状況を見た方が……場外からうおおおおおおお!!!と声が上がる。それもそうだろう。何せ、3人の美少女が制服を水で濡らしてるんだから。ブラウスに水なんてお約束コンボでしかない。「え……ったっとぉ!!た、タオルタオル!!あ、あとカーテンかしらー!ヒナ達はこっちにくるかしら!!」ようやく気づいたカナ姉ちゃんがそそくさと僕等を引っ張って客の目の届かない裏に行く。
「うぅ……髪がぁ……」水を豪快に浴びたカナ姉ちゃんはいつもの巻き髪がへにゃへにゃになり、お風呂上りみたいな下ろし髪になっていた。ちなみに、ブラウスの奥から黄色が見える。うん、どうでもいいね。「うよ……ごめんなさいなの……」ある意味、ナイスなヒナ姉ちゃんも髪がすっかり濡れている。ブラウスの奥からはピンク……いや、見えるもんは仕方なくない?好きで見てるわけじゃないよ、断じて。「ふふっ、もういいよ。ほら、雛苺も髪の毛拭いて。風邪引いちゃうよ?」すでに髪を拭いたのかショートの黒髪がしっとりとしている柏葉。何だか、妙に色っぽい。ほほう、青か……ってそうじゃなくて…べっとり張り付いた制服のせいで柏葉って結構自己主張が強いのが分かる。着痩せするタイプなのかな……いやいやいや!そうでもなくてさ!僕変態じゃん!「と、と、ともかく三人ともタオルで拭きなよ。僕は外で待ってるからさ。」僕はそそくさと裏から飛び出す。まぁ……とある部分に血が集まって仕方ないからなんだけどね。
「やれやれ……ごめんな、柏葉。ヒナ姉ちゃんに引っ張りまわされてさ。」それから……僕らは時間まで校内を見て回った。濡れた制服は、宣伝がてら出し物の衣装で代用した。「ううん、楽しかったから私は全然気にしてないよ。それにしても……たくさん遊んだからね。よっぽど疲れちゃったんだろうね、雛苺。」僕の背中におぶられているヒナ姉ちゃんの頬をツンツンと柏葉はつつく。そう、ヒナ姉ちゃんは相変わらずのお子様ぶりを発揮し、すっかり帰る頃には眠ってしまったって訳だ。「それに、まだ文化祭は二日あるしね。急がなくても、ゆっくり見て回るよ。」「そうだな。僕も明日は店番があるけど……何なら来てくれよ。サービスするよ。」「ふふっ……時間があればお邪魔させてもらうね、桜田君。それじゃあ、私はこっちだからここで。雛苺によろしく言っておいてね。」分かれ道で柏葉はそう言うと、僕らと違う道に進んでいった。僕はヒナ姉ちゃんを背負いなおすと、帰路を歩く。そういえば……柏葉とあんなに話したの初めてかもな。口数少ない奴かと思ってたけど……何て言うか、結構笑う奴なんだな。まぁ、こういうのも文化祭の醍醐味って奴なのかもしれない。END
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