第四十話 JUMと巡り合い・ラプラス
「一つ屋根の下 第四十話 JUMと巡り合い・ラプラス」
「んじゃあ、うちのクラスの出し物は喫茶店で決まりだな。」教壇に立っているべジータが言う。現在、HRの時間だ。クラス委員のべジータが学校祭の催し物の決議を取っていた。どうやら、うちは喫茶店になりそうだ。「ちょっといいかな、べジータ。」さて、決まったと思ったところで梅岡がしゃしゃり出てくる。相変わらず空気が読めない担任だ。「折角だから、喫茶店でも趣向を凝らしてみてはどうかな!?普通のお店じゃあお客さんの関心は引けないよ?もっとこう奇抜にサ。我が校は比較的自由だから無茶な案じゃない限り通りやすいしね。」ウインクする。言う事はもっともなんだけど、何でわざわざウインクするんだろう……僕の隣でスッと手を上げる。薔薇姉ちゃんだ。「お、薔薇嬢。」「……メイド喫茶……とか……」ボソリと言う。まぁ…薔薇姉ちゃんは慣れてるだろうしね。「うん、そういうのもいいよね。そういえば、薔薇水晶は白崎のお店でバイトしてたしね。先生もよく行くよ。」あれ?こいつ白崎さんと知り合いなんだろうか。そういえば、歳も近い気がする。って…お前ラプラス行ってるのかよ……コイツの相手をする店員は大変だろうなぁ……「へ~、いいかも。私も一回ああいうの着てみたかったし。」「うっひょ~、うちの女子のメイド服かよ。たまんねぇぜ。」「接客なら私もバイトしてるから、結構できるよ~。」色々な声が教室中を飛び交う。どうやら、薔薇姉ちゃんの案は案外好評のようだった。「じゃあ……メイド喫茶でいいですか?」「いいでーーーす!!」女子のクラス委員の桑田さんが採決をとる。どうやら、決まりのようだった。
「ふむ……メイド喫茶となると服から作らないとなるまいな。デザインとかから考えた方がいいか?」「そうだね……思いっきり可愛い奴にすればお客さんも来てくれるんじゃないかな。」べジータと桑田さんが話している。メイド服ねぇ……一応学校って事を考えるとあんまり露出は不味いだろうから……露出抑え目で尚且つ可愛く見せるには……って。僕は何考えてるんだろう。「誰か、デザインとか……みんなで考えるか?」一瞬、べジータが僕の方を見るがすぐに視線を外す。こいつなりの思いやりなんだろう。ベジータは僕が服とかデザインしたら作る事を出来る事を知ってる。でも、それと同時に小学校のときソレで虐めにあったのも知っている。だからこそ……僕を指名したいんだろうがやめたんだろう。馬鹿な友人だけどさ……そういう気遣いが出来る奴だ。ベジータは。「……JUM……私はJUMの着たいけど……あの時とは違うもんね…状況が……」薔薇姉ちゃんが小さな声で言う。薔薇姉ちゃんも僕に作って欲しいんだろう。それでも……やっぱり僕を気遣って言わない。そう、夏休みのラプラスでは僕は確かにデザインもしたし、ドレスを作りもした。でも……あれは、姉妹内での話だ。そりゃ、白崎さんやみっちゃんさんも居たが、あの人達とクラスメイトでは違う。薔薇姉ちゃんもそう思ってるんだろう。昔の僕らならそこで事勿れを望んでいた。でも……今の僕は…「なぁ、みんな聞いてくれ!先生な、知り合いに聞いたんだ。このクラスにそれに打って付けの子がいるんだ!」梅岡がシャシャリ出てくる。僕の心臓が高鳴っていくのを感じる。いや……これは予感じゃなくて確信。梅岡は白崎さんと知り合いだ。なら……きっと……「先生な、こんな事もあろうかとその子のデッサンしたドレスの写真を借りてきたんだ!ほら、凄いだろ?」どんな事もあろうかと、なのか分からないが奴の出した写真。それは……矢張り僕がデザインした姉ちゃん達のドレスだった。
教室中がガヤガヤとざわめく。薔薇姉ちゃんとべジータは心配そうに僕を見ている。「先生な、これは凄い才能だと思うんだ。これを考えたのはな………」僕の背筋に汗が流れる。ゴクリと唾を飲む。「桜田だ!ほら、ドレスのモデルも桜田のお姉さんたちだろ?薔薇水晶も…ほら。」一斉にクラスの視線が僕のほうに突き刺さるのを感じる……色々な声が飛び交ってくる。覚悟はしていた……ドレスは必ず人目に触れるものだ。どっからか、僕がデッサンしたとバレル可能性は幾らでもあった。それでも、僕はデッサンした。作った。何故なら……僕は、やっぱり好きだから……だから……僕はガタンと音を立てて席を立った。クラス中の視線が益々感じられる。そして、僕は言った。「……それ、僕とこの学校のOGの人とでデッサン、作成した奴です。もし……そのドレスのデザインを見て気に入って貰えたなら……」「………JUM……?」薔薇姉ちゃんが心配そうに言う。大丈夫だよ、姉ちゃん。僕は……「気に入って貰えたなら……催し物のメイド服のデッサン……僕にさせてください!!」それが僕の出した答え。僕は、デザインも作るのも好きだ。そして、みっちゃんさんも、白崎さんも……姉ちゃん達もそれをとっても褒めてくれる。みっちゃんさんは言った。僕には才能がある。そして、その才能を生かさないのは勿体無い事だって。自分では才能があるかなんて分からない。でも……僕のデザインが好きという人が居てくれるなら……僕は、それをやりたい。クラスが静まり返る。それは一瞬だった。次の一瞬には歓声にも似た声が響いていた。「すげえよ、桜田!!是非是非お願いしようぜ!!」「桜田君、凄いよ。可愛いのデザインしてね!!」教室中に声が飛び交う。ただ……その声はどれも僕を認めてくれる声だった。「ふっ……変わったなJUM……よぉし!!じゃあ、JUMのデザインで衣装を作りメイド喫茶を成功させるぞ!!」ベジータの号令にクラスが一致して掛け声をあげる。隣の薔薇姉ちゃんは、本当に嬉しそうに笑ってくれた。「うんうん!!僕の求めてたのはコレなんだよ!!よぉし、みんな頑張ろう!!!」とりあえず、先生には沢山請求書いくんで支払いお願いしますね。
「……JUMがああ言ったのって……みっちゃんの事が噛んでるでしょ…」お昼休み。僕は薔薇姉ちゃんと屋上に居た。9月になると屋上もなかなか寒い。「うん。でも、よかったよ。みんなが…その、認めてくれて。」「認めないはずないよ。JUMには本当に才能があるんだから…でも……みっちゃんには少し妬いちゃうな…だって……みっちゃんに会うまでのJUMならきっとあんな事言わなかったでしょ?今まで……私達姉妹が出来なかった事を……みっちゃんは簡単にやってのけちゃったんだもん……」薔薇姉ちゃんが僕の手をギュッと握る。その顔は寂しそうだった。「それは違うよ、薔薇姉ちゃん。」僕は強く手を握り返す。薔薇姉ちゃんが顔を上げて僕を見る。「僕は思うんだ。人の巡り合いって不思議なものだなって。みっちゃんさんだって、元はと言えば薔薇姉ちゃんのお陰だよ?薔薇姉ちゃんがあそこでバイトして…テレビが壊れたからみんなでバイトして…そこでみっちゃんさんと僕は出会った。だから、僕は変われた。ね?そう考えると薔薇姉ちゃんのお陰でもあるんだよ。」薔薇姉ちゃんはポカンと珍しい顔をする。そして、フフッと笑った。「JUMは面白いね……でも…確かにそうかも……私とJUMが…私とJUMと、お姉ちゃんたちが出会ったのも見えない糸で繋がってたから……かもね。」薔薇姉ちゃんが小指を立ててちょっと下手なウインクをする。そう……その指から出てる見えない糸で僕たちはきっと繋がってる。それが人と人との係わり合いを作ってるんじゃないかって思う。「JUM……学校祭頑張ろうね……JUMのデザインしたメイド服……私に一番に着せてね♪」「うん、それは勿論だよ。」秋風が僕と薔薇姉ちゃんを揺らす。風はホンノリ冷たいけど、僕等の胸のうちはとても熱かった。END
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