薔薇水晶の修学旅行
翠星石「はぁ……修学旅行なんてかったりぃ~ですぅ。家でゲームでもしてたほうがよっぽど有意義です」水銀燈「あらぁ、いいのぉ?修学旅行といえば恋のチャンスだっていうのに…」雛苺「ヒナねぇ、バス席、ジュンの隣がいいのぉ――!」翠星石「こ、こらチビ苺!勝手に決めやがるなですぅ!!馬鹿ジュンのお守りは委員長のわたしが…」水銀燈「そう言うことなら私だって……ん?」薔薇 「………」 じぃ~。水銀燈「……な、なによ」薔薇 「…………………にたぁ」水銀燈「ひ、ひぃっ――!?」真紅「あの獲物を狙うヘビの目…あなた、何か恨まれることでもしたの?」翠星石「あーあ~、水銀燈は薔薇水晶に消されるですぅ~♪」薔薇 「……」薔薇(……………隣の席、座りたかっただけなのに…)ジュン「なあ…もしかして薔薇水晶、皆と仲良くしたいだけなんじゃ…」水銀燈「あん!ジュン助けてぇ~!あの子が私のこと睨んでくるのぉ……怖ぁい~」ジュン 「お、おい抱きつくなっ!?」薔薇 「……・ぎろり」ジュン「な、何で僕を睨むんだ!?……い、いや……本当は皆と仲良くしたいだけなんだよな?」薔薇 「うん………だから、握手」ジュン「え?あ……や、やっぱり悪いヤツなんかじゃ………ん?」水銀燈「こ、この子!手の中に画鋲仕込んでるわよ!?」薔薇 「………ちっ」失敗の悔しさに、薔薇水晶は拳を握りしめ、ぷすっ。薔薇 「……いたた」ジュン(…悪いヤツじゃないとは……思うんだけどなぁ) 蒼星石「せっかく修学旅行なんだから、地元のお寺巡りとかしたいな」雛苺 「えぇ~~? お寺なんか嫌ぁ!!遊園地がいいのぉ~」真紅 「この店珍しい紅茶売ってるわね……ここにしましょ」水銀燈「あら、お菓子切れちゃったのぉ?誰か買ってきてくれない?」薔薇 「……しゅ、しゅーまいっ…………どぞ」翠星石「…シューマイぃ?ご飯前にそんな重いもん食えるわけねーですぅ!」水銀燈「使えないわねぇこの子」薔薇 「ご、ごめっ……………………すててくる」ジュン 「お、おい!?」ジュンが後を追うと、薔薇水晶はべそかきながら、焼却炉にシューマイを投げ捨てていた。薔薇 「………っく……ぐす……っ」ジュン 「何やってんだよ!……って、うわっ!?シューマイ投げるな!!」薔薇 「――お前なんかに……わたしの気持ちが……っ!この引きこもり真中!!」ジュン 「な――っ!?お、お前言って良いことと悪いことが…っ!」薔薇 「は、離して……っ!」ジュン「これは没収だ。……投げつけられるくらいなら僕が貰う。ったく、食べ物を粗末にするなよな」薔薇 「……ぁ」ジュン 「……水銀燈と仲良くしたいんだろ?僕もできる範囲で手伝ってやるから、こんな真似はやめろよな」薔薇 「ほんとに………手伝って、くれるの?」ジュン「ああ。っていうか、友達になるくらいなら簡単だろ?水銀燈って結構話しやすいし、友達と話す感覚で…」薔薇 「……………………友達いませんが……なにか?」ジュン「……ごめん悪かった、僕がなってやるから。まあ、手は色々あるから前向きにいこうぜ」薔薇 「…………ぷいっ」ジュン (馴れ馴れしすぎたか…? 扱い難しいな……)薔薇 (………ともだち、できちゃった……///) 翠星石「はい水銀燈の負けですぅ~!毎回ババ引くなんて、さすがババアですぅ」水銀燈「ぬぁんですってぇ!?も、もう一度勝負よ小娘が!!」真紅 「あまり興奮するとバス酔いするわよ」ジュン「よし、今がチャンスだ。一緒に混ざって仲良くなってこい!」 薔薇 「……ん!」水銀燈「次こそは絶対勝ってやるんだから……見てなさいっ」薔薇 (…頑張ってっ!!)水銀燈「ここでエースがくれば……」薔薇 (…左端はとっちゃダメッ!!)水銀燈「ああもう! また負けたわ!!悔しいぃ~~ッ」薔薇 「………ジュン、ダメだった」ジュン「いや、お前見てただけだろ。まあ声掛けづらい気持ちはわかるけどさ…」薔薇 「……水銀燈、ジュンには沢山話しかけてくる。わたしには全然……」ジュン 「な、なんだよその目は!?僕は味方だっていってるだろ!?」薔薇 「ジュンが水銀燈をばっさり振っちゃえば……落ち込んでる水銀燈を私が慰めて、一件落着……」ジュン 「お前結構酷いこと思いつくな…」水銀燈「何こそこそしてるのよぉ~ジュン♪ あっちで一緒にいいことしなぁい?」ジュン 「だから抱きつくなって…………ちょ、ちょっ!?薔薇水晶っ!?」薔薇 「………うらぎり? ……ねえ、うらぎったの……っ?うらぎったら、目にからし入れるって…」水銀燈「さっきから薔薇水晶ばっかり……まさか、この子のこと好きなんじゃないでしょうねぇ?私の方がいいわよねぇ?」薔薇 「うらぎりものには……からしを……っ」ジュン (どうすりゃいいんだよ!?)水銀燈「だいたい、薔薇水晶って無口で何考えてるか判らないし、一緒に居てもつまらないでしょぉ?」薔薇 「……」水銀燈「ジュンが同情で一緒にいてやる必要なんて、どこにも……」ジュン 「…別に同情なんて」薔薇 「……もう、いい」薔薇 「もういいから……ジュンも返す、から…………ごめんね」水銀燈「ほら、薔薇水晶もいいって言ってるしぃ」ジュン 「…僕はよくない」薔薇 「え…」ジュン「別に同情なんかじゃない。口数が少なくても、ちゃんと聞いてやれば話しかけてくれるし」ジュン「確かに変わってるとは思うけど……別に僕は嫌いじゃないし…」薔薇 「………ぁ」水銀燈「……ジュンが………ジュンの趣味が小さい子だったなんて……ロリコンだなんてぇ―――っ!!!」ジュン 「おい待て!! 誰もそこまで言ってないだろ!? ………ったく、結局進展なしかよ」ジュン「…あ、そういやさっきの作戦、今がチャンスなんじゃないのか?」薔薇 「………」ジュン 「落ち込んでる水銀燈を慰めて……って、おい!聞いてるのか?」薔薇 「…………ジュン……わたしのこと、好きなんだ…」ジュン 「言ってない! 言ってないぞそんなこと!!何顔赤くしてんだよ!?」梅岡 「皆、パーキングでの休憩は30分までだからな」翠星石「も、もるですぅ~!」薔薇 「うぷ……」ジュン 「おい大丈夫か? 吐きそうなのか?」薔薇 「大丈夫………それより、水銀燈が一人の今が……・チャンス……ぉぇ」ジュン「…あれだけ言われて、まだ諦めてないのか?」薔薇 「今は嫌われちゃってるけど……ひとりぼっちだった私に最初に声かけてくれたの、銀ちゃんだから……」露天商「シューマイ安いよぉ~!!10個で300円!!」薔薇 「ぴくっ…………だ、だから……今度は私から声掛けて、友達になれるまで…」露天商「おいしいシューマイ!長旅の疲れも吹っ飛ぶよ~~!!」薔薇 「……ぜったい……・しゅーまい……諦めない…」ジュン「雑念混じってるぞ。水銀燈とシューマイどっちが大事なんだよ…」薔薇 「え………………ぇ………選ばなきゃ、ダメなの?」ジュン「いや、質問した僕が悪かった。食ってから追っかけろ」薔薇 「じゃあ、五箱下さい………はくはくっ………ぉぇ」ジュン「吐きそうなのに無理すんなよ。おさまるまで我慢すればいいじゃないか」薔薇 「…………食べてから吐く」ジュン 「最悪だなお前」薔薇 「はくはくっ………はくは……げほっ!げほっ!!」ジュン 「おい! だいじょう――」水銀燈「子供みたいな食べ方しないの。……ほんとあんたって、お馬鹿さぁん」ジュン 「水銀燈…?」水銀燈「まったく……こっちがわざと追い払ってるっていうのに、馬鹿みたいに引っ付いてくるんじゃないわよ…」水銀燈「あなたみたいなドン臭いの、皆の輪の中に居たら馬鹿にされるだけでしょうがっ」薔薇 「……」ジュン 「水銀燈……お前、わざと?」水銀燈「ちょっと優しくしたくらいでいちいち懐かれたってねぇ…………ほら、口元汚れてるわよ」薔薇 「………銀、ちゃん…」水銀燈「その呼び方やめてって言ったでしょ!この馬鹿水晶!」薔薇 「あ………馬鹿水晶って言った…………はじめて会った時と、おんなじ……」水銀燈「…下らないこと、いつまでも覚えてんじゃないわよ」薔薇 「銀ちゃん、わたし………わたしね………………………………ぉぇ」水銀燈「ちょ、ちょっとっ!?こんなとこで吐くんじゃ………」薔薇 「~~~ぉぇぉ(自主規制)」水銀燈「嫌ああああああぁぁ――――――っ!!?」 体調の悪化した薔薇水晶を、近くのベンチに寝かせた。出発まであと十数分ある。ジュン「少しは落ち着いたか?」薔薇 「………うん」ジュン「まあ気にするなよ、ちょっと戻したくらいで。水銀燈も怒ってないって」薔薇 「……ゲロ水晶って言われた」ジュン「…忘れろ」薔薇 「……ん」ジュン「見ててやるから、少し寝てろって」薔薇 「……」ジュン「もう寝たのか?」薔薇 「……」薔薇水晶の子供のような寝顔。その純粋さに、しばし魅入ってしまう。ジュン(……この寝顔見たら、皆こいつの事好きになるのにな……)不器用で、誤解されやすいけど、一生懸命な女の子。ジュンは薔薇水晶の額に触れ、そっと撫でる。薔薇 「……ん」薔薇水晶の瞳がわずかに開き、ジュンと目が合う。嫌がられるかと思ったが、特に抵抗もせず、薔薇水晶は心地よさそうに撫でられ続けた。薔薇 「わたし、ね……いつも駄目駄目なの…」ジュン「……」薔薇「輪の中に入ろうとして、いつも失敗して……気がつくと一人……今日も沢山、駄目駄目だった……」薔薇「なのに、どうしてだろ………隣にジュンがいる……なんで?」ジュン「何でだろうな…………薔薇水晶が、駄目駄目だからじゃないか?」薔薇「ジュンは…駄目でもいいんだ……だめでも………」薔薇 「………………っ……っく…」そのまましばらく、二人だけの時間を過ごした。集合時間まで数分を切った頃、ジュンが立ち上がる。ジュン「…そろそろ戻るか」薔薇 「あ……待って…」薔薇水晶に袖を掴まれる。弱々しい握りで、それだけに無理矢理剥がすのもためらわれた。ジュン「水銀燈に謝る時間も欲しいだろ?早く戻った方が…」薔薇 「もう少しだけ……このままがいい」薔薇 「………そばにいて?」ジュン「…五分だけだぞ」わがままを聞いて貰った子供のように、にやりと笑う薔薇水晶の笑顔が反則的に可愛かった。 翠星石「あ~~! ゲロ水晶が戻ってきたですぅ!臭いからバスに乗るな……ひでぶっ!?」水銀燈「……その話はやめて頂戴。早く忘れたいんだから」薔薇 「………ぅ」ジュン 「ほら、薔薇水晶っ」薔薇 「……あの、あのね水銀燈……」水銀燈「なによあなた。まだ人の服汚し足りないわけ?」薔薇 「ち、違くて……そのっ……………じゅ、ジュンどうしよう…?」水銀燈「な――っ!?ちょ、ちょっと何どさくさに紛れてジュンに抱きついてるのよ!?」薔薇 「ぇ……だ、だって…………困ったら助けに呼んでいいって、ジュンが…」水銀燈「私でさえそんなの言われた事無いってのに…きいぃ―――っ!!い、今すぐ離れなさい!!」薔薇 「ぁ……銀ちゃんの胸、あったかい…」水銀燈「な、何しがみついてるのよっ!私から離れて!」薔薇 「うぅ………………ジュン、抱っこ!」水銀燈「ちょ――っ!?あ、あんたに男の胸板は早いわよ!そこはわたしの…」ジュン 「二人して抱きつくな……く、苦しいって!」薔薇 「…銀ちゃんと押しくらまんじゅう………えへぇ」ジュン 「お前、僕を餌に使ったな…?」薔薇 「……うん。ジュンにすりすりすると、銀ちゃんもついてくる………だぶるでおいしい…」ジュン「ったく、ダシにされるこっちの事も考えろっての」薔薇 「……銀ちゃんも好きだけど…………ジュンと近くにいるとぽかぽかするのも、ほんとだよ……?」ジュン 「え…」薔薇 「………二股しても、いい……?」
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