エピソード004 闘いの序曲
炎の矢が乱れ飛ぶ。矢は紅の姫を守る騎士の盾で防がれる。「くそ、近づけない!!」JUMはエルダーのファイヤーアローを盾で防ぎながら反撃を試みるが、詠唱せずに魔法を連発するエルダーに全く近づけないでいた。「はははっ、我が魔力を甘く見るな。ファイヤーアロー程度ならば詠唱など不要。いつまで耐えれるか?」エルダーが杖の先から次々に矢を放つ。JUMは変わらずそれを防ぐので精一杯だった。「巴!先に雑魚を叩くのだわ。複数で仕掛ければ活路が見出せるはずよ!」真紅が手近にいた、エルダーの召還したスケルトンの剣を弾き飛ばし、1撃で粉々に破壊する。「うん、分かった!ヒナ、何とか桜田君を援護してあげて。」巴がスケルトンをカタナで斬る。だが、スケルトンは骸骨だ。切れ味鋭いカタナでの斬撃はしっかり身のある魔物に比べて効果が薄い。「くっ……なら!!」巴が左手で腰の鞘を引き抜き、それでスケルトンを殴打する。スケルトンは頭部を破壊され倒れる。「えっと…えっと…猛き炎よ 汝矢となりて敵を討て・・・・ファイヤーアローなのー!」雛苺の周辺に力が奔流する。杖に集中したマナは幾本もの炎の矢に姿を変える。「JUM!今助けるの!いっけーー!!」雛苺の炎の矢がエルダーに向かって放たれる。「む!生意気なぁ!!」エルダーはファイヤーアローで雛苺のファイヤーアローの相殺を試みる。しかし、詠唱ありと詠唱なしでは矢の本数が違った。数本は相殺しきれずエルダーへ向かう。「小癪な!魔力の石よ 汝盾と姿を変え我を守れ!!カウンターマジック!!」
エルダーが懐から石を取り出したと思えば、次の瞬間に石は盾へと姿を変え、雛苺の矢を防いだ。「ナイスだ、チビっ子!」JUMがその隙を突くようにエルダーに向かっていく。エルダーは慌てる素振りを見せずJUMに手を向ける。「バカめが!荒れ狂う雷よ 汝奔流せよ!!ライトニング!」エルダーが高速で詠唱する。次の瞬間、エルダーの手に雷が集まりJUMに向かって放たれる。「なにぃ!うわぁ!?」JUMが盾で走った雷を防ぐものの、JUMは魔力に押されて大きく吹き飛び地面に体を打ちつけた。「JUM!?雛苺、JUMを!巴、エルダーを押さえて!」「了解…!」真紅が矢継ぎ早に指示を出す。真紅の本当の力。それは、剣術ではなく冷静に戦局を見極め的確に味方に指示を出して戦う事なのかもしれない。「JUM、しっかりするのよ~。癒しの光よ……ヒール。」雛苺がJUMに杖を当てて傷を癒す。一度では全快せず、もう一度かける。「今度はお嬢さんかね?焼き焦げるがいい!!」エルダーは再びファイヤーアローで巴を攻撃する。「……軌道は直線。詠唱なしなら一度に1発のみ……踏み込める!!」巴が炎の矢の軌道を読み、回避しながら最短でエルダーに向かっていく。「むお!?ならば…荒れ狂う雷よ 汝奔流せよ!ライトニング!!」再びエルダーの手から雷が迸る。しかし、巴は一度見てその軌道も読んでいた。確かにライトニングは強力な魔術だ。しかし……それも術者の手から直線にしか攻撃範囲はない。「どうだ!!」一閃。ライトニングをサイドステップでかわし、得意の居合いでエルダーを斬る。「ぐっ・・・やる・・・!」斬撃は浅かったのか、エルダーのローブを少し切り裂いただけに留まっている。エルダーは再びファイヤーアローで巴と距離をとろうとする。しかし、急に巴の攻撃はとまる。
巴はエルダーを斬った手応えに違和感を感じていた。「何……全く斬った感触がない?どういう…はっ!?」巴が立ち止まって思慮を張り巡らしていると、背後から殺気を感じる。振り向けば、スケルトンが剣を振り下ろす所だ。ヒュオンとスケルトンが剣をふる。巴はそれをカタナで受けると鞘で殴り壊す。「隙ありだ!失せろ!!」しかし、その一連の動作の間に今度はエルダーが巴に炎の矢を放つ。「ちぃ!?」巴は鞘で矢を受けるが、炎の矢は爆発し巴は大きく吹き飛ばされる。「柏葉!雛苺、柏葉を見といてくれ!」「う、トゥモゥエー!」回復したJUMが再びエルダーと対峙する。それに並ぶように真紅もたつ。「JUM、二人で攻めるのだわ。スケルトンは全部倒した…二人なら攻めきれるはずよ。」「ふん、スケルトンではあんなものだろう。だが、どの道貴様らでは私は倒せん!」エルダーの声には自身が溢れていた。JUMと真紅が2方向から攻撃をしかけていく。「巴、しっかりするのよ。癒しの光よ……ヒール!」癒しの光が巴を包む。左腕の火傷が治っていく。「ん……御免有難う。それより、ヒナ。魔力はまだ残ってる?」「うよ?もう少しだけなら……」「ならいける……いい?雛苺。真紅の剣に……」巴が雛苺の耳に口を当てて耳打ちする。「いい?チャンスは一瞬だと思うから……見極めてね。」「うい、が、頑張るの…」巴はそれだけ言うと、再びカタナをとりエルダーに向かう。雛苺は杖を構えると精神を集中しだした。
「3人がかりか?それでも私は倒せぬがな…荒れ狂う雷よ 汝奔流せよ!ライトニング!!」再び雷が走る。今度の目標は真紅だ。真紅はそれを間一髪で回避する。「くっ……静電気が痺れるのだわ。」真紅が立ち止まる。そこに巴がやってくる。「真紅、いいかな。あのね………」「!?成る程。それで貴方の斬撃が……分かったのだわ。やってみる。」「チャンスは一度だよ。一気に決めよう……桜田君!真紅の所に!!」巴が真紅にそれだけ言うと、JUMを呼んで自分がエルダーに向かっていく。「どうしたんだ?真紅。攻めきれないぞ?」「いい事JUM……これから貴方には私の盾になってもらうわ。」「……よく分からないけど。どうせ元々僕は真紅の盾。やってやるさ。」JUMが盾を構えなおし、エルダーを見る。巴がファイヤーアローをかわしながら戦っている。「……今よ!JUM、突撃なさい!!雛苺!!」「応!!いくぞ、エルダーーーーー!!」JUMが盾を前面に押し出し、エルダーに向かっていく。エルダーはJUMに手を向ける。「愚かな!今度は無事ではいられぬぞ!荒れ狂う雷よ 汝奔流せよ!ライトニング!!」「いくのよ、真紅!聖なる光よ 我らが剣に光を宿せ!ホーリーウェポン!!」JUMに向かって雷が放たれる瞬間、真紅はJUMの肩に乗り大きく跳躍する。そして、真紅の剣に聖なる光が宿る。JUMはライトニングに吹き飛ばされるが、エルダーは真紅に反応できない。「な、なにぃいいいいいい!!!!???」「これで決まりよ!エルダー!!!」急降下する真紅とホーリエ。その刃がエルダーのローブを二つに切り裂いた。
「ぬぐおおおおおおおおお!!馬鹿な!私が人間如きに!?何故だ!何故私の弱点が・・・・」切り裂かれたエルダーは血を噴出さない。いや、肉体がなかったのだ。バフォメットの作り出した瘴気の塊。それがエルダーの中身だった。巴が感じた違和感はこれだった。この違和感から巴はエルダーの正体を見抜き、雛苺の魔法で聖なる力を宿らせたホーリエで撃破を考えたのだ。「っつ……こういう事か……あいつの魔法の連発を防ぐには、詠唱させるしかないもんな。」JUMが雛苺に治療を受けながら言う。そう、その作戦に必要なのはエルダーにライトニングを詠唱させる事だった。ファイヤーアローは連発が可能。渾身の一撃を当てるのは困難だ。しかし、エルダーを詠唱させる事に隙を作り出したのだ。「せめて、斬り心地は再現すべきだったね。私の手は誤魔化せないよ。」巴がカタナを鞘に収めながら言う。「くっ・・・口惜しや…人間如きに敗れるとは……」エルダーの体を形成していた瘴気がローブから抜けて消えていく。「その人間如きと言うのが、貴方の敗因よ。相手を甘く見ない事なのだわ。」「ぐあぁっ……っくっ…お許し下さい…バフォメット様ぁああああああ!!!!」エルダーが絶叫すると、後に残ったのはローブと杖だけだった。真紅はそれを拾う。「巴、雛苺、JUM。助かったわ。貴方達が誰か一人でもいなかったら、私はここで朽ちていたでしょうね。感謝するのだわ。」真紅がスッと頭を下げる。「ううん、エルダーはみんなで倒したんだよ。」「そうなの!真紅もいなかったら倒せなかったのよ~?」「ま、そういう事だな。それじゃあ……エルダーも倒したし、帰るか。」JUMが剣を鞘に収める。真紅もホーリエを同じように鞘に収めた。「そうね。グンターさんの所に戻りましょう。」4人は話せる島のケイブを後にした。しかし、これは闘いの序曲に過ぎないのだった。To be continued
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