最終話 てんし
ジリリリと目覚ましの響く音で目を覚ましますいつもとは違う朝に戸惑いを覚えながら眠い目を擦ります昨日の早朝メグが昏睡状態から奇跡的に回復すると同時に緊急検査がおこなわれました検査の結果は異常なし、そして驚くことに心臓の病気が消えているということで病院内は大騒ぎですけど、メグには全部わかっていましたメグ:パパ、ママおはよう笑顔で挨拶すると向こうからも笑顔でおはよう、と挨拶が返ってきましたキッチンからはベーコンの焼ける良い匂いが鼻をくすぐりますメグは退院しました昏睡状態との連絡を受けて海外で仕事をしている両親が駆けつけてきたのですメグは泣きました泣いて泣いて涙が出なくなって声を枯らしながらパパとママに来てくれてありがとう、そして今までごめんなさい、と自分の気持を伝えることができましたそのときはパパとママも泣いていましたそして二人は決めました、もう二度と自分の娘から逃げないということを二人はメグに拒絶されたため逃げたことを謝りましたそして今度はお願いをしました、日本で一緒に暮らしてほしい、とメグ:天気が良いから少しお散歩してくるねお天気が良いのも散歩に行く理由の一つですがメグにはまだ心残りがありましたママ:病み上がりなんだからあんまり無理しちゃだめよその言葉にメグは元気良く返事をして外へ出ます一人で外を散歩するのは初めてのことなのでメグには目に映るすべてのことが新鮮なものに見えましたしばしメグは外の世界を堪能しますメグ:いつも見ていた風景だ…メグは病院の部屋から何年間も眺め続けていた景色に目を向けます外の世界はこんなにも変わって見えるんだということがメグにはたまらなくうれしいのですそしてメグはある小学校の前に来ました来月からメグの通う初めての学校そして、水銀燈の通っていたはずの学校ですメグ:ねえ、水銀燈って女の子知ってるかな女の子:知らないよメグ:あなた水銀燈って女の子知ってる男の子:誰それ?変な名前~初めは校庭で遊んでいる子達から先生に聞くと全てが分かってしまうからけれど、職員室はもう目と鼻の先でした軽くノックして中に入りますメグ:すみません、水銀燈って生徒はいますか学校の先生:え~と、そんな名前の生徒はこの学校にはいないわねやっぱり水銀燈はいなくなってしまった誰も覚えていない酷いよ私だけこんな悲しい思いをするなんて水銀燈…会いたいよメグはとぼとぼと歩いていると最後の手がかりの場所に来ました昨日までずっと入院していた病院の一室水銀燈と初めて出会った場所ですメグ:お祝い…できなかったね…せっかく病気が治ったのに、もう一緒に遊ぶことも雪を見ることもできなくなっちゃったねガチャリとメグのいる病室が扉が開きます一瞬まさか、と思いましたがそこにいたのは看護婦さんでした看護婦さん:メグちゃん?どうしたの、せっかく退院できたのにこんなところでメグはもう退院しているからもう部外者です看護婦さんにそう言われて部屋を出ようとしました看護婦さん:あ、待って これ忘れ物よ差し出されたのは1冊の絵本ですメグ:これは…看護婦さんから渡されたものは紛れもなく水銀燈が持って返ったはずの絵本でした看護婦さん:部屋に置いてあったわよ、それにしても著者名も何も記されてない絵本なんて初めて見たわ看護婦さんは病み上がりなんだからすぐに帰るのよ、と言って部屋を後にしますメグ:水銀燈との思い出か…よく考えたら私あの子に辛くばかり当たっていたのよね…もう少し優しくしてあげれば良かった…あんなに一緒にいたのに二人の思い出もこの絵本しか残ってないなんて…メグは絵本を開きパラリとページをめくりますするとメグ:ぷっ、あはは…なんだ…そうだったんだメグは優しく笑いますその瞳には光るものが見えましたメグ:そっか…水銀燈、あなたは…小さな町の小さな病院の小さな病室で小さな小窓から小さな景色を観ている女の子がいました緑の瞳頭には大きな花のブローチ悲しい目をした少女は寂しさを紛らわすため今日も独りで大好きなバイオリンを演奏しますふと、扉が静かにがちゃりと開きました目を向けるとそこには銀髪の女の子が一人「すてきなえんそうね、もっときかせてほしいな」幸せは終わりません
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