第十三話 JUMと詠唱
「一つ屋根の下 第十三話 JUMと詠唱」
「ああ~、また全滅かしらぁ・・・どうやったら勝てるの~?」カナ姉ちゃんがGBAをやりながら頭を抱えている。「姉ちゃん何やってるんだ?」ボクはGBAを覗き込む。どうやら往年の名作、FF4のようだ。FF4といえば、FFで唯一(?)5人PTを組めて次々にPTメンバーが変わっていき、おまけにラスボスはかなり強くイージータイプさえ出た作品だ。「デモンズウォールかしら・・あいつが迫ってきて次々に潰されちゃうかしら~。」カナ姉ちゃんがずーんとしている。ああ、あいつか・・・確かに、普通にやってると結構強いんだよな。恐怖の壁のモンスターで、どんどんPT側に迫ってきて、迫りきるとクラッシュダウンで一人ずつ確実に戦闘不能にさせる。近づかれる前に倒していかないと、回復が追いつかなくなるんだよなぁ。「これで23回目の全滅かしら~・・・」そんなにかよ!戦法を変えようとか思わないのだろうか。「ふ~ん・・・金糸雀、もっかいやってみてよぉ。見ててあげるからぁ。」テレビを見てた銀姉ちゃんがヤクルト片手によってくる。カナ姉ちゃんは言われるままにもう一度戦闘をする。ボス戦のBGMが響き渡り、カナ姉ちゃんがあーとかうーとか言って、結局は全滅のようだ。「金糸雀、リヴァイアサンとってないの?あれあると楽勝なんだけど。」「ないかしらー・・・うう、強すぎるかしら~。」カナ姉ちゃんが半ベソだ。すると、銀姉ちゃんが言った。「リヴァイアサンがないなら、バイオよ。バイオを使いなさい。黙ってバイオを使いなさい。バイオよ。」
「え?でも、召還魔法の方がつよー」「召還魔法なんてどうでもいいの。バイオを使いなさい。」やけにバイオにこだわるなぁ。ちなみに、僕はバイオのエフェクト音は結構好きだ。「後はスロウとかヘイストも使いなさぁい。バーサクもいいわねぇ。あ、いらない武器は投げるのよぉ。」「うう・・・や、やってみるかしら。でも、どうしてバイオなの?」カナ姉ちゃんの顔にはハテナが浮かんでいる。「FFは何気に早い段階から詠唱時間があるのよぉ。召還は結構詠唱が長いけど、バイオは短い・・・というかゼロなのよぉ。つまり、短い時間で連発できるってわけぇ。」銀姉ちゃんが得意げに説明をする。確かに、FF4は魔法を選んで発動するまでに詠唱が設けられてる。「ふぅん・・・まぁ、やってみるかしら~!」カナ姉ちゃんが再びGBAに目を戻す。すると、話を聞いていた翠姉ちゃんが言う。「そう言えば、最近のRPGはちゃんと詠唱文まで言うのもあるくらいですね。翠星石は結構好きですぅ。」「そうね。詠唱というのは魔法を扱う上で欠かせないものだと思うのだわ。」真紅姉ちゃんが本を読みながら言う。「何か意外だなぁ。真紅姉ちゃんがこんな話に参加するなんて。」「あら、そう?別に詠唱はゲームだけではないのだわ。」すっと真紅姉ちゃんは紅茶のカップに口をつけた。「そういうのならヒナも知ってるの~。えっと・・・エロイムエッサイムエロイムエッサイムなのー!」ヒナ姉ちゃんが手を上げて元気よく言う。うわ、古いな・・・「そういうのでしたら私も知ってますわ。テクマクマヤコンテクマクマヤコンマハリク幕張メッセッセー!ですわ。」キラ姉ちゃん、後半は何か違うから・・・
「薔薇しーはこういうの好きじゃない?」銀姉ちゃんがリビングで連ジをやっている薔薇姉ちゃんに声をかける。プレイ中じゃないのか、薔薇姉ちゃんは振り返って言う。「うん・・・体は剣で出来ている。血潮は鉄で心は硝子・・・とかだよね。エッヘン・・・」薔薇姉ちゃんはそう言って自慢げに胸を張る。「あー・・・薔薇しー?それ18歳未満は・・・・何でもないわぁ。」言っても無駄だと思ったのか、はぁとため息をつく銀姉ちゃん。「でもさ、そういうの考えるのって面白そうだよね。」蒼姉ちゃんが言う。確かに面白そうではあるけど・・・頭使いそうだ。「そうねぇ・・・じゃあ第一回詠唱文を考えよう大会~。最優秀者にはJUMを送呈~!」銀姉ちゃんが一人で盛り上がって言う。てか、人を勝手に賞品にしないで下さい。「ったく、何馬鹿な事言ってるんだよ。大体さ、そんなのみんなが考えるはずが・・・」僕はそう言って目を疑う。考えてるよ・・・メチャクチャ真面目にブツブツいってるよ・・・すると、薔薇姉ちゃんが思いついたように僕の目の前に来て、僕を指差した。「えへ、いくよ~・・・私の事を好きにな~る、好きにな~る・・・ダメ?」トンボでもとるように僕の目の前で指でクルクル円を描き、首を傾げる。ダメです。そして、パクリですよ、これは。これを皮切りに、次々と姉ちゃん達が謎の呪文を聞かせてくる。正直、僕は剣と魔法の世界にでもワープしたんじゃないかと思ったくらいだ。そんな時、だった。「ぷぷっ・・・・」蒼姉ちゃんが一人で笑い出したのだ。「蒼姉ちゃん?何か思いついたの?」「ひゃっ!?ええと・・・その・・・笑わない・・・?」蒼姉ちゃんは僕を見つめながらそう言った。
「いやさ、自分で笑ってて笑わないってオカシクない?」「あ、そ、そっか。じゃあ・・・笑ってくれる?」何か面白い事のようだ。正直、真面目な蒼姉ちゃんがギャグを言うのは想像できない。「蒼星石が笑うような事ならきっと面白いですぅ~。」「そうね、私も聞きたいのだわ。」と、前評判は上々だった。僕は思う・・・結末を知ってれば必ず止めたと・・・「え・・えと・・・じゃあ、言うよ。FFのポイズンの詠唱ね・・・・」蒼姉ちゃんはふぅと深呼吸すると言った。「い、言いたい事も言えないこんな世の中じゃ・・・ポイズン!!!」・・・・・・・・・・・えっと・・・・?家中が吹雪に呑まれる・・・一部を除いて・・・「ぷぷっ・・・い、言いたい事も言えない・・・くっ・・・こんな世の中じゃ・・・ポイズン・・・ふふふっ・・・・」明らかに笑いのツボがずれている薔薇姉ちゃんがお腹をかかえて笑ってる。「え・・・ええと・・・そ、そーせーせきはグレイトなティーチャーになるの~・・・?」ヒナ姉ちゃんが何か言おうと考え抜いた結果、こんな言葉が出てくる。「ううっ・・・やっぱり面白くないんだ・・・僕はやっぱり・・・・」ネガティブになる蒼姉ちゃん。でもさ、聞いた方も何故かネガティブになってますよ?「やっぱり僕は・・・面白くないんだ・・・うわーーーーんん!!!」蒼姉ちゃんがダッシュで部屋に戻っていく。「あ、待つです蒼星石~!確かに面白くないですけど・・・その・・・待つですぅ!」慰めようとしたが、言葉が出てこなかったらしき翠姉ちゃんが蒼姉ちゃんを追っかける。「・・・じゃあ、これで大会終了ね・・・かいさ~ん・・・・」蒼姉ちゃんのギャグ(?)が効いたのか銀姉ちゃんも部屋に戻っていく。ああ、我が家は平和だな・・・「やったかしらー!これで闇のクリスタルゲットかしらー!ふっふっふ、ゴルベーザの好きにはさせないかしら!」感情移入しまくりのカナ姉ちゃん。ああ、この後それだけ苦労したクリスタルも、FF至上・・・いやRPG至上最高の裏切りキャラのおかげで水泡に帰すのを知ったら落ち込むんだろうなぁ・・・END
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