ジュンのぼり
雛「ジュンのぼりなのー!」J「いい加減いっつもいっつも僕に登るのやめろよな!」翠「そうですちびちび!ジュンが嫌がってるです!」雛「そんなことないのー。ねぇ、ジュン?」J「い・や・だ。迷惑だ!重い!降りろ!」雛「うぃ~・・・」よじよじとJUMの肩から降りる雛苺。しょんぼりと自分の席に戻る。紅「どうして雛苺はジュンに登る事に拘るのかしら?」巴「わたしは昔聞いたことあるけど・・・」銀「ちょっと興味深いわねぇ?」紅「ちょ、水銀燈!いきなり会話に割り込まないで頂戴!」銀「何言ってるのよ真紅。今始まったばっかりじゃない。おばかさぁん」紅「くっ!」巴「やめなさいよ二人とも・・・教えないわよ、雛苺の話」銀「はぁい」紅「っふん!」
巴「桜田君は覚えてないかもしれないけど・・・」巴はゆっくりと話し出した。
十年ほど前の話。雛「ふんふんふ~ん♪今日のおやつはうにゅうなの~♪明日もうにゅう・今日もうにゅう♪あさってもずっとうにゅうなの~♪」ご機嫌で歌を歌う雛苺。右手には木の枝、小石を蹴りながら歩いている。雛苺の歌はだんだんとエキサイトし始め、小石の飛距離も増していく。雛「うにゅうな・のーーーーーーっ!!」スカーン!と音がしそうなほど綺麗に放物線を描く小石。雛「ふうっ、きょうのうにゅう楽しみなのー」きゃいんっ!雛「???何の音なの?」音は小石の消えた塀の向こう側から聞こえた。塀に続く門扉から一匹の犬がのそりと現れた。中型犬位の大きさではあるが、小学校に入るか入らないかの彼女からすれば十分大きい。犬「ぐるるるるるる・・・」雛「ひぃっ!犬さん・・・怒ってるのなの」犬は雛苺を警戒するようにゆっくりと近付いてくるが、雛苺は恐怖のあまり立ちすくみ、逃げる事さえ出来ない。雛苺の持っている鼻先に犬が近付き、ゆっくりと匂いを嗅ぎ始める。恐怖のあまり手を振ったのが小さな雛苺の大きな過ちだった。雛「こ、こないでなのー!」雛苺の持った枝は的確に犬の鼻面を打つ。犬は思わず首を引き、情け無い悲鳴を上げた。その行為が犬のプライドを傷付けたのか犬は怒りの炎をともした視線で雛苺を射抜いた。雛「に、逃げるの・・・」初めはゆっくりと、だが恐怖に駆られて雛苺は思わず駆け出した。雛「こ、来ないでなのーー!!」犬「ガウガウガウガウガウ!!!」
J「ったく、ねーちゃんのやつ、傘を学校に忘れたからって取りに行かせること無いだろ。こっちはまだ小学校に入りたての一年生だぞ」この可愛くない台詞のガキがJUM。将来の我々の敵である。なぜかって?決まってるだろう、薔薇乙女達を独り占めしているからだ!それはさて置き、JUMは学校へ忘れた傘を取って帰路についていた。J「傘を持ってこないとおやつの苺大福は無し!だってさ。りふじんだよな、子供って」?「―――――!」J「ん?」?「―すヶてー!なのー!」ジュンの視線の先から何かが走ってきた。雛「誰か助けてなのー!」J「犬に追っかけられてるのか?・・・僕には関係ないね」雛「あ!そこの人!助けてくださいなの!」雛苺はすばやくJUMの後ろに回りこみ、犬と自分の間に挟む。雛「どこの誰かは知りませんがありがとうなの。助かったの」J「ばか、まだ助かったわけじゃないだろ!僕を巻き込むな!」雛「うゆ~それは悪い事したの。でも、雛もピンチなの!」犬「がるるるるるるる」雛「ひいぃっ!」J「く、くそ・・・」JUMは傘を構える。小さい頭で必死に考えた結果、雛苺を連れて逃げるのは得策ではなかった。明らかにお荷物にしかならないからだ。JUMは覚悟を決めて犬を追い払う事にする。犬はJUMの様子をうかがう様に一定の距離を保っている。雛「ふゆ・・・」緊張に耐え切れず、雛苺が泣き出す。JUMは雛苺をなだめようと後ろを振り返ったのだが、それが大きな間違いだった。犬(キラーン!今だ!喰らえ・絶・天狼抜刀牙!)犬は高く跳躍し、JUMの頭に喰らい付こうと牙をむいた。J「う、うわあーー!」
JUMは思わず傘を突き出し、手元のボタンを押した。バンッ!大きな音と衝撃がJUMの両手に伝わり、JUMは思わず傘を取り落とした。目を開けたJUMの前には壊れた傘と、顎を外した犬が転がっていた。JUMが突き出した傘に犬が思わず噛み付き、開いた傘の衝撃で犬の顎が外れたのだ。犬「ひゃんひゃんひゃん!」情け無い泣き声をあげて犬が去って行った。雛「た、たすかったの・・・」地面に尻餅をついた雛苺がほっと息を吐く。雛「あ、あれ?立てないの・・・」J「犬は追っ払ったんだし、もう用は無いだろ。じゃあな」雛「ま、まってなの!ヒナ立てなくなっちゃったの・・・」J「・・・僕も傘が壊れたし、帰るの遅くなったらねーちゃんに怒られる」雛「うゆ・・・それなら仕方ないかもなの・・・」J「・・・ったく、しょうがねーなー」JUMは雛苺の前で背を向けると、その場にしゃがみ込んだ。J「ほら、登れよ」雛「???」J「おんぶしてやるって言ってるんだ。ほら、早く」雛「あ、ありがとうなのー」
JUMは雛苺を背に乗せてゆっくりと歩き出した。
銀「へぇ~、そんなことがあったの」巴「でも、その後は小学校の学区が違うみたいで二人とも合うことは無かったんだけどね」不思議そうな顔をする水銀燈と真紅に巴は言葉を足して説明する。巴「中学校になって一緒の学校で、雛苺は一目でジュン君だって気付いたみたい。もっとも、ジュン君は気付いてなかったけど」紅「全く、ジュンらしいと言うか何と言うか」銀「じゃあ、雛苺のアレは大切な思いでなのねぇ」雛「うゆ?三人でなに話してるのー?早く学食に行くのー!」J「おまえな、そういう事は僕から降りてから言えよ!このままじゃ恥ずかしくて教室を出れないだろ!」蒼「今のままでも十分恥ずかしいと思うけど・・・」翠「いいんじゃないですか?本人が気付いて無いうちが幸せなんですから」蒼「お?言うねー翠星石」翠「あったりめーです!翠星石はお姉ちゃんなんですから!」雛「みんなで学食にれっつごーなのー!」J「いい加減降りろよー!」雛「ヒナねぇ、ジュンの事、だーいすき!」
~お し ま い~
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