第二十七話 絶対防衛戦
「超機動戦記ローゼンガンダム 第二十七話 絶対防衛戦」
「やれやれ、何とかドイツは事なきを得たね。」ベルリンの基地でアリスの幹部が集まっていた。「でも、どうするんだい?確かにまだここには兵器は山ほどある。それでも完全に囲まれてるじゃないか。」梅岡が言う。しかし、槐は目を瞑り考え事をしているようだ。そして、ゆっくり目を開いた。「問題はない・・・あれだけの規模の戦闘をしたんだ。レジスタンスも補給がなければそうそう攻めてきまい。増してや、ここは我々の本拠地。完全に準備をしてから来ると睨んで間違いない。」槐の話に白崎と梅岡は聞き入っている。「やつらの補給の拠り所は中国基地だろう。そして物資を運ぶには・・・どうすればいいと思う?」「成る程・・・いい手段だね。補給線を切れば相手はむしろ袋のネズミか・・・」白崎が槐の意図を読む。「じゃあ、襲撃にいかないと♪、はっ、補給物資をちらつかせれば桜田は先生に跪かなくてはいけなくなる・・・うっふふふふ・・・これは美味しい作戦だね。僕が行って来るよ。」前回の戦いでさしたる損傷もないプラムで梅岡が出撃しようとする。「いや、僕がメインで行こう。梅岡、君は補給艦が基地に入り込む直前を襲ってくれ。はははっ・・・その時のやつらの絶望に滲んだ顔が見てみたいからね・・・ふふ・・・」「その辺はお前らに任せる。私はスペリオルの調整をしておく。」「なんだい?スペリオルは調子よさそうだったけど?」去っていく槐に白崎が疑問を向ける。「なぁに、補給が成功しようが失敗しまいが、奴らは最終的には攻めて来るだろう?だから、最終調整をな。リフレクターシステムの最終調整だ。」槐はそれだけ言うと、とっとと工場に歩いていった。
「べジータ、次はとうとうドイツなんだろ?どれくらいで攻めるつもりなんだ?」「ああ、今日補給艦が来る事になっている。五日ほどかけて完璧に準備していこうと思ってる。」JUMが紅茶を飲みながら通信でベジータと今後について話していた。「まぁ、無難な日数だよね。決戦は五日後か・・・なんだか緊張するなぁ。」「はははっ、その気持ちは分かるぞJUM。そうだ、そっちには補給物資はどれだけ回せばいい?メイデンは最優先で回すぞ?」JUMはんーと頭の中で現在の状況を確認して、言う。「ウチは持ってる分だけで何とかなってるよ。大破したヒナイチゴはとりあえずの修理だけどまだ新しいパイロットは見つかってないからね。」「そうか・・・やはり雛嬢は厳しそうか?」JUMが顔を落とす。「ああ、一日中ほとんど眠ってるよ。たまに起きても体の自由が利かないみたいだ。本当はどっかいい病院に搬送したいけど、雛苺が嫌がっててね。」「・・・恐らく戦いの結末を見たいのだろう。雛嬢も今まで戦ってきたからな・・・・!?JUM!緊急事態だ!中国からの補給艦の進路にアリス軍の反応アリ!」「何だって・・・・まさか!?」JUMとベジータの背筋に戦慄が走る。「間違いない!奴等、補給艦を撃墜してこっちに物資を流さないつもりだ!!不味いぞ!補給艦が落とされればこちらの戦力が整わなくなる・・・」「くそっ・・・べジータ!僕らがすぐに出る!すぐに応援に来てくれ!!」JUMは即座に通信を切り、ブリッジへ走る。「柏葉、出撃だ!補給艦の進路にアリスの反応があるらしい!総員、第一戦闘配備!!」まさかのアリスの襲来にメイデンは慌てて出撃していくのだった。
「いいか!補給艦の防衛が絶対条件だ!これを落とされれば豊富な物資を誇るアリスにはまず勝てなくなる!必ず補給艦を守りきってくれ!!」「了解なのだわ!真紅、ガンダム5号機、出るのだわ!!」メイデンから5機のガンダムが出撃していく。どうやら、補給艦はアリスの襲撃を聞き、多少速度を落したのか、メイデンが先にアリスとぶつかる。「メイデン、やはり来たか・・・目標はあくまで補給艦だ・・・白崎、ラプラスでますよ!」ディアーズからラプラスが1機、バーズ10機にZローン10機が出撃する。「みんな、ここは踏ん張りどころかしら!追撃のカノン!!!」カナリアが音を奏でる。その音は真紅達の精神を高揚させる。「・・・補給艦、レーダー範囲に入りました。通信、いれます!」「こちらメイデン、サクラダ艦長桜田JUM!貴艦を援護します!全速力で基地へ向かってください!」「こちら補給艦の艦長です。了解しました。頼みましたぞ・・・・!」補給艦が落していた速度を上げる。「舵手!アリスとの射線上にサクラダを割り込ませろ!サクラダを盾にする!ピチカート起動!対空砲火、見逃すなよ!!」サクラダがアリス軍と補給艦の間に割って入っていく。「ちっ・・・さすがはメイデン。かまわない!サクラダごと艦を落せ!あれも落ちれば儲けものだ!!」ラプラスがサクラダに接近していく。しかし、スイセイセキがその進路を阻む。「いかせねーですよ!!おめーはここで翠星石にやられちまえです!」ガーデナーシザーが唸りをあげてラプラスを襲う。ラプラスはサーベルで受けながら、何とかスイセイセキを出し抜きサクラダに接近しようとする。「くそ・・・思ったより上達が早いじゃないですか・・・」しかし、それを徹底的に翠星石が阻んでいた。「だからいかせねーって言ってるですよ!余り余所見をしてると・・・兎の危機回避がきかなくなるですよ?」
「おちなさぁい!ファンネル!!」スイギントウの背部から黒い羽、フェザーファンネルが射出される。その羽はバーズに向かって飛んでいくと機体の各部で爆発していく。「!?ディアーズが一隻追加かしら・・・このままじゃ数におされるかしら・・・・」カナリアのレーダーの範囲は広い。もう一隻のディアーズが進路を塞ぐように躍り出てくる。「くそ、レンピカ、スィドリーム照準!!邪魔するのは全部打ち落とすんだ!!」サクラダの右舷左舷の副砲がディアーズを打ち抜く。しかし、撃墜には及ばずさらのアリス機が出てくる。「ちぃ・・・落ちろ!!!」キラキショウが背部の二丁のV・S・B・Rを放ち、数機を撃墜する。しかし、焼け石に水の状態だ。「くっ・・・それでもやるしかないのだわ・・・一機でも多く!」シンクがツインテールを振るい、眼前のZローンを撃墜する。しかし、一向に数が減る気配がない。「くそ!応援はどうなってるんだ?」「基地から通信!小規模のアリス軍が基地を攻撃!出撃に手間取っている模様・・・きゃあ!!」サクラダにZローンのビームランチャーが被弾する。ビームコートである程度は防げているが、出力の高いビームには少し厳しい。「僕達だけでやるしかないのか・・・!メイメイ照準!目標は敵ならどれでもいい!うてええ!!!」サクラダの6連ミサイルが放たれる。各所で爆発が起こる。当たったかなんか気に出来てられない。「敵機を近づけさせるな!対空砲火、しっかりするんだ!!うわあああ!!」一身に敵の攻撃を引き受けているサクラダの各部から煙が上がる。「くっ・・・損傷率40%をオーバー!右舷格納庫に被弾!障壁が大破してます!スィドリーム沈黙!メイメイ発射管、1番4番沈黙!ベリーベル1から4、6から12、18、20番沈黙!!」巴の悲痛な声が響く。シンク達も実弾兵器は打ち落としてはいるが、数が追いついていなかった。
艦が揺れた。その衝撃で、目が覚めた・・・戦ってる・・・みんな戦ってる・・・行かなきゃ・・・守らなきゃ・・・雛苺がその重い体を引きずってデッキに向かっていく。重い・・・痛い・・・気持ち悪い・・・でも・・・行かなきゃ・・・廊下に手を這わせながら、それでもしっかりと、ゆっくりと一歩ずつ進んでいく。「守る・・・JUMも、みんなも・・・巴も・・・雛が・・・守るんだから・・・」再び艦が揺れる。その衝撃で雛苺は体勢を保てずに倒れこんでしまう。立てない・・・なら、這ってでも・・・体が立てる力を戻すまで・・・ズリズリと廊下を這っていく。倒れこんだ衝撃のさいに傷口が開いたのか・・・雛苺が這った廊下には薄い赤い線が出来ている。「はぁ・・はぁ・・・動いてよ、雛の体・・・雛、今頑張らなかったら・・・いつ頑張るの?」そのか細い腕に力を込めて状態を起こし、足にも力を入れる。大丈夫、立てる・・・歩ける・・・デッキまでいける・・・「こんなの・・・痛くないの・・・全然痛くないの・・へっちゃらなんだからぁ・・・」自分を奮い立たせるように震える声を発しながら雛苺は歩いていく。また艦が揺れる。しかし、今度は踏みとどまる。体に力を入れる。しかし・・・「うゅ・・・・えほっ・・・はぁ・・・はぁ・・・うぃ・・・」口に鉄の味が広がる。それでも・・・デッキはもう目の前だ。「ヒナイチゴ・・・JUM、直してくれたんだ・・・・」やっとこさ機体に乗り、システムを起動させる。所々損傷が残っているが、問題ない。少なくとも、今の雛苺には・・・「待ってて・・・JUM、巴・・・雛が守るから・・・」雛苺が空ろながらもまっすぐに前を見据える。ハッチは被弾した影響で開いていた。
「柏葉!被害状況は!?」「損傷率50%超過!このままでは・・・・」JUMが歯軋りする・・・しかし、基地はもう目前だ。「みんな!踏ん張るんだ!あと一息だ!あと一息で補給艦が基地に入れる!!」そう、あと一息だった。しかし・・・最悪のタイミングで最悪の敵が現れるのだった。「!?識別プラム!!」「なんだと・・・・・!?」槍を持った赤い機体が急速に接近してくる。「いけない!僕らじゃあれを防げない!柏葉!味方機は!?」「・・・・ダメです!?この距離では間に合いません!!!」「くそおおおおお!!!ここまで来て・・・・!?ええい!メイメイ照準!対空砲火も!狙うんだ!」サクラダからミサイルと対空機銃がプラムに向けて放たれる。しかし、結構な発射管が潰れているせいかプラムは簡単に回避する。「やぁ、桜田♪先生、会いたかったぞ♪」「梅岡ぁ・・・!!」JUMが梅岡を睨みつける。「ふふっ、先生そんな顔されたらゾクゾクしちゃうよ。で・も・ね。桜田がそんな顔できるのはもうお終い。何せ、僕があれを撃てば君は絶望に沈んだ顔をするんだから♪」「くそ・・・撃て!少しでも時間を稼ぐんだ!!」サクラダからありったけの銃弾が放たれる。しかし、プラムはそれを回避する。「先生、ずっと待ってたんだ。桜田が絶望に満ちた顔をするの。ふふっ、想像すると先生イッちゃいそうだよ♪じゃ、ヤルネ。もう、我慢できないんだ。」プラムがライフルを補給艦に向ける。その時、プラムを砲撃する4つのビーム砲があった。「だめーーーーーー!!それを攻撃したら・・・めっめっ・・・なのよ・・・」
「ぐうっ!?馬鹿な・・・まだ機体が残ってたのか・・・?」「雛苺!?ダメ、戻って雛苺!!」巴の声がブリッジに響き渡る。「イヤなの!雛が、巴も・・・JUMも・・・みんなも守るの・・・ぜったいぜったい・・・守るんだからぁ!」再び有線ビーム砲がプラムに襲い掛かる。梅岡はそれを回避し、ヒナイチゴに目をむけ・・・そして歯軋りした。「くそぉ!!補給艦撃墜失敗か・・・・また・・・僕はイケないのか・・・」そう、雛苺が梅岡をひきつけていた隙に補給艦は基地へ入りきったのだ。「ざまあみろ・・・なの・・・・」「フフフッ・…はははははっ・・・・あーっはっはっはっは!!」雛苺の言葉に梅岡は突如糸が切れたように笑い出した。「許さない・・・許さないよ・・・僕の欲求をよくも邪魔してくれたね・・・・」プラムがゲイボルグをヒナイチゴに向ける。「クソガキが・・・・殺してやるぁああああああ!!!!」ヒナイチゴもビームサーベルを抜く。「雛だって、負けないのよ・・・絶対負けないの・・・!」
次回予告 雛苺の決死の活躍で補給艦は無事に基地に入り、防衛は成功した。しかし、その雛苺に暴走した梅岡が襲い掛かる。果たして、雛苺の運命は・・・・次回、超機動戦記ローゼンガンダム 雛苺 その揺るがない思いは、みんなの胸に・・・
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