第三話 JUMと金糸雀
「一つ屋根の下 第三話 JUMと金糸雀」
ん?また来たのかい。ああ、姉ちゃん達の話全部聞きたいんだっけ?えっと、この前は銀姉ちゃんだったから今回はカナ姉ちゃんか。え?その前に聞きたいこと?この前銀姉ちゃんとあの後一緒に風呂入ったかって?入るわけないだろう?全く・・・
カナ姉ちゃんは正直天才だと思う。いや、本当に。色々な発明してるんだよ。もっとも本棚にCTスキャン取り付けたり、自転車に人工知能とりつけたり思い切り意味不明だけど。でも頭は普通に無茶苦茶にいいんだよね。テストとかはホトンド完璧だし・・・ドジがなければ・・・名前書き忘れたり答えがずれてたりとかは結構普通にやっちゃうんだよなぁ。まぁ、頭はいいけどどっか抜けてると言うか。逆にそんなトコが親しみやすいんだけどね。あ、本人は姉妹で雛姉ちゃんと争うくらい背が低いのを気にしてたな。まぁ、カナ姉ちゃんが銀姉ちゃんみたいにスタイルよくてもそれで怖いような気もするけど。あ、今なんか爆発音がしたなぁ。多分、またカナ姉ちゃんが何か訳分からないの作ったんだろう。全く・・・・
「あいたたた・・・思ったより爆発が強かったかしら・・・」金糸雀が爆発の拍子に本が当たったオデコをさすりながらビーカーを見る。それは無色透明の液体だった。「さて・・・猫で実験してみるかしら。えっと・・・いたいた。猫さん猫さん、来るかしらー。」金糸雀が窓の外でお昼寝していた猫をチッチッと呼ぶ。比較的猫に好かれ易いのか猫は警戒する事なく金糸雀に近づいてきた。金糸雀はビーカーの液体をカップに入れると猫に飲ませようとする。「さ、猫さん。これを飲むかしら。美味しいわよ~。」猫はクンクンと匂いをかいでからその液体を舐める。そして、金糸雀を見つめるように凝視すると・・・欲情しだした。それはもう、腰をカクカクと。「きゃーかしら。ちょっと効き過ぎかしらー!!ええっと、中和剤中和剤。」金糸雀がもう一つのビーカーを猫に垂らすと欲情していた猫は急に大人しくなった。「成功かしら・・・ふっふっふ。この媚薬でJUMはこの金糸雀が楽してズルしていただきかしらーー!」金糸雀がおーっほっほっほっほと高笑いをする。ビーカーを持っているのも忘れて。パリーンとビーカーが割れて中身が床を汚す。「ああっ、中和剤が・・・まぁ、いいかしら。どうせ一日で効果は切れるかしら。一日もあれば既成事実を・・・」金糸雀はニヤリと黒く笑うと媚薬入りのビーカーを持って部屋を出た。
「ねぇん、JUM~。水銀燈お姉ちゃんも抱っこしてぇ~。」んで、舞台は変わってここはリビング。僕の膝の上では雛姉ちゃんが楽しそうにテレビを見ている。銀姉ちゃんはああ言ってるけど、これは小柄な雛姉ちゃんでしかできない事だ。「チビチビ苺。あんまりJUMとべたべたして恥ずかしくねぇですか!?」「ふ~んだ、翠星石は雛とJUMにヤキモチ焼いてるだけなのよ。翠星石じゃ重くてできないの~。」「い、い、言ったですねチビチビーー。JUM!翠星石も抱っこするです!」「ぐえっ・・・銀姉ちゃん首絞まってる・・・翠姉ちゃん、重い・・・ぐいあああああああ・・・・きゅう・・・」僕は意識が闇に落ちそうになる。いや、一瞬落ちたような気もするな・・・僕がゲホゲホ咳き込んでるとカナ姉ちゃんが飲み物を持ってきてくれた。「JUM、大丈夫かしら?よかったらこのコーラスウォーターを飲むかしら。」金糸雀がコップに入った白い液体をJUMに渡す。そう、これこそ乳酸菌飲料コーラスウォーターに混ぜた媚薬だった。ちなみに、コーラスウォーターは主にサークルKで売っている。1㍑100円でお得だ。「ああ、ありがとうカナ姉ちゃん。んじゃいただくよ。」僕がコップに口を付けようとする。後にカナ姉ちゃんが語る。コーラスにしたのは失敗だったと。何故なら・・・「お姉ちゃんがもらいぃ~。んっんっんっ・・・ふぅ~、乳酸菌は体にいいわぁ~・・・・あら・・・・?」我が家には乳酸菌信者、銀姉ちゃんがいたからだ。
コーラスを飲んだ銀姉ちゃんは目の焦点が合ってないのかフラフラしている。「あ、あ、あ、ああああああ!!水銀燈が飲んじゃったかしらーーー!?」ばっと銀姉ちゃんの前に躍り出るカナ姉ちゃん。コレがきっと不味かった。「あ・・・・ぽっ・・・金糸雀・・・私の可愛い可愛い妹のカナ・・・・」銀姉ちゃんがほのかに赤い顔をしてカナ姉ちゃんの首に腕を回す。「す、す、水銀燈!?な、何をする・・・んぷっ・・・んーんーんー・・・・ふにゃ・・・・」何と銀姉ちゃんはカナ姉ちゃんにキスをした。それも熱烈に。満足したのかどっかオカシナ銀姉ちゃんはカナ姉ちゃんの体をまさぐり始めた。「の、ノーカウントかしら!今のは姉妹だからノーカウント・・・きゃぁ!?」「カナ・・・可愛いわ。お肌なんてスベスベで、案外体も柔らかくて・・・ああ、カナ・・・」「ひゃあ、や、やめるかしら・・あう・・・だ、誰かとめ・・・はう・・かしらー・・・」何だかリビングが騒然としている。雛姉ちゃんは何だか分からないらしく、ただボケーッと惨事を見てるし翠姉ちゃんは顔を赤らめて傍観してるし、さっきまで大人しかった蒼姉ちゃんは顔を赤くして口をパクパクさせている。あ、真紅姉ちゃんが向かってきた。「金糸雀?あなた、また何かしでかしたわね?」「う・・・な、何もしてないかしら!カナは何も・・・ひゃう・・はん・・・」思いっきりキョドッてるカナ姉ちゃん。しかし、暴走してる銀姉ちゃんはとまらない。「きゃあああ!て、貞操の危機かしら!言うかしら!カナがJUMに飲ませようとした媚薬を水銀燈がーー!!」
「すげぇ効き目ですぅ・・・金糸雀、後で翠星石にもわけて・・・」「下らない事言ってる場合じゃないのだわ。蒼星石。」「うん、分かってるよ。みんな、水銀燈抑えてて。」真紅姉ちゃんと翠姉ちゃんが銀姉ちゃんの体を抑える。そして、ふぅと一息はいた蒼姉ちゃんは「ちぇすとおおおおおおおおおお!!!!」と思いっきり銀姉ちゃんの鳩尾に正拳をかましていた。銀姉ちゃんが女の子らしからぬゴフっと声を出し、そのまま恐らくトイレへ連行される。残ったのはマイペースな雛姉ちゃんと、息を荒げるカナ姉ちゃんだった。
「いたぁ・・・そうせいせきぃ・・・貴方本気で殴ったでしょう?」「仕方ないでしょ?薬が出ないと大変なんだから。」銀姉ちゃんはお腹をさすって恨めしそうに蒼姉ちゃんを見ている。蒼姉ちゃんは我関せずだ。意外に図太いよな。「それで・・・金糸雀。何で媚薬なんてもの作ったの?」真紅姉ちゃんにより尋問が始まる。すでに半ベソのカナ姉ちゃんは声も途切れながら答える。「ぐすっ・・・だって、JUMはいつも誰かに占領されてるから・・・ぐす・・・カナが楽してズルして・・・既成事実を・・・」おい・・・前半は何か納得したけど目的はソレかい。「もういいよ、カナ姉ちゃん。そんな事しなくてもいつでもカナ姉ちゃんを構うからさ。姉弟だろ?」「JUM・・・やっぱりJUMはカナがいただくかしらー!」カナ姉ちゃんが僕に抱きついてくる。他の姉ちゃんはそれを引き剥がそうとする。今日も我が家は平和だった。「・・・私ぃ・・・殴られ損な気がするわぁ・・・ヤクルト飲んでこよ・・・」 END
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