第九話 トラウマ
「超機動戦記 ローゼンガンダム 第九話 トラウマ」
アリスの攻撃があるとの情報を受けサクラダがセンダイシティへ向かっている途中だった。JUMはふと、自分の学生時代を思い出していた。それは少ない時間ながらもJUMにとって数少ない楽しい思い出の記憶。のりがいて、真紅がいて。そういえばベジータともこの時に出会ったんだったな。アリスの乱で親を失ったけど、学校のみんなもそうだった。だから、仲良く慣れたのかもしれない。その後僕はメイデンに加入してみんなとは会わなくなっていたけど・・・みんなは元気でやっているだろうか・・・「桜田君、もうじきセンダイに到着します。情報によるとセンダイシティの守備についているレジスタンスはすでにアリス軍と交戦中。何でも新型機があるとのことで苦戦中の模様です。」巴がJUMに向けて言う。それで正気に戻ったJUMは艦内放送を入れる。「もうじき戦闘領域に入る。ブリッジ遮蔽!各員、第一戦闘配備!MSは各自でレジスタンス『ピット』と連携してアリス機を討ってくれ。」JUMの命令と共にブリッジが下がり戦闘用になる。それと同時にMSの出撃が始まる。「新型がいるらしいわよぉ。狙うならそれよねぇ。水銀燈、RG001スイギントウ出るわぁ。」漆黒の翼を携えた機体が出撃する。それを見送った真紅は機体を起動させる。「何だか嫌な予感がするのだわ・・・JUMに関わるような嫌な予感が・・・真紅、出るのだわ!」真っ赤な機体が出撃する。真紅は根拠のない不安を持ちながら戦闘に入るのだった。
「さぁ、みんな。いくかしら!攻撃のワルツ!」カナリアが気分を高揚させる音を響かせる。「♪いい音・・・当たれ・・!!」バラスイショウが両腕のビームマシンガンを敵機に向けて撃つ。広範囲にばら撒かれる弾丸は確実に敵機を損傷させる。「はぁぁぁああああ!!!」ソウセイセキが振り下ろされたサーベルをガーデナーシザー、ソードモードの一刀で切り結び、残りの一刀で敵機を切断する。さらに襲い掛かるバーズの斬撃を回避すると十字に切り刻む。「雛だって頑張るの~!いっけ~~!!」ヒナイチゴの特殊兵装、有線式ビーム砲が4つ全て放たれる。自由自在に動き回るビーム砲はバーズを的確に捉えていく。しかし、前面にしか意識が向いていない雛苺に後方からのロックを感知する。背後から放たれる光の銃弾。しかし、それはヒナイチゴを貫く事なく黒い翼にかき消されていた。「おばかさぁん。攻撃に気をとられて後ろから撃たれたら意味ないわよぉ。」「うゅ・・・ありがとうなのー、水銀燈。」ヒナイチゴを守ったのはスイギントウ。スイギントウは悪魔を連想させる漆黒の翼を展開したままバーズに突っ込み翼をぶつける。防御だけでなく攻撃能力も有する漆黒の翼はバーズを真っ二つに切断した。「何か楽勝の雰囲気ですぅ~。このまま終わらせてゆっくりするです。」巨大な砲身、GSの出力を抑えビームライフルを乱射するスイセイセキ。確かに彼女の言うとおり攻めて来た割に今一迫力がない。「確かに・・・このまま終わればいいのだけれど・・・っと。」真紅が思案に暮れていると二つの光が同時に向かってくる。「!?ダブルビームライフル?そんなものバーズには武装されてないはずなのだわ。」真紅が砲撃先を見る。そこには見たことのない赤い機体があった。
「みんな!気をつけるのだわ!新型機よ!」その赤い機体は近接武器であろう、槍のような武器をもってシンクに向かってくる。シンクもサーベルを抜き応戦する。幾条もの光が交錯しあう。赤い機体は互角にシンクと打ち合っているのだ。「くっ・・・さすがにサーベルではあの槍よりリーチに劣るのだわ・・・なら!」シンクが後退し間合いを取ると腰部に搭載されている二つの鞭、ツインテールを振るう。しかし、ツインテールさえも赤い機体の槍にことごとく打ち払われる。「な、何なのだわ!こいつは!?」「相変わらず動きが荒いね、真紅。」その声に真紅は体を振るわせた。聞き覚えのある声だった。「そ・・・んな・・・貴方は・・・」動揺して機体が止めてしまう真紅。赤い機体はそんな真紅を相手にする事もなくサクラダに向かってバーニアをふかす。「はっ・・・いけないのだわ!誰かそれを止めて!!」「いかせねーですぅ!」サクラダ付近で固定砲台となっていたスイセイセキが赤い機体に立ちはだかる。ライフルを連射するも回避されてしまい、白兵戦の距離だ。「その機体では接近戦は不得手だろうね。」「舐めんじゃねーですよ!」突き出された槍に向けてスイセイセキがGSの砲身を振り回す。巨大でしかも丈夫なGSの砲身はパワーに勝ったようで赤い機体の槍を弾く。しかし、赤い機体は弾かれるまま回転するとスイセイセキの右腕を突き切り切り落とした。「!?し・・・まったです。」「それだけ重いと振った後は無防備だね。」しかし、赤い機体は止めを刺すことなく完全にサクラダに接近した。そして、通信が開かれる。
「やぁ、桜田。担任の梅岡だよ。」通信から見えた顔、声、それはJUMの学生時代の担任の梅岡だった。「なっ・・・・・」JUMの目が大きく見開かれる。「久しぶりだね。少し大きくなったんじゃないか?先生、とっても嬉しいぞ♪」梅岡が気持ち悪い笑顔を見せる。「何で・・・何であんたがそっち側にいる・・・?あんたは・・・・・」「桜田、アリスはな。とても素晴らしいぞ。ほら、見てみるんだこの機体。これはな、『プラム』と言って先生の専用機だ。プラムは和訳すると梅だな。どうだ?いいだろう?」何だよそれ・・・誰も聞いてないよ・・・「クラスのみんなもな、みんなアリスを信奉しているんだ。だからさ、桜田。お前もこっちに来るんだ。」「てめぇ・・・今何て言った・・・クラスのみんなが・・・何だと?」JUMが怒りを込めて梅岡に言葉を吐く。「聞こえなかったか?先生悲しいぞ。クラスのみんなはアリスの元でアリスの素晴らしさを知ったんだ。残念だったよ桜田。お前がもう少しメイデンに入るのが遅ければ・・・こっちに引き込めたのに。」「お前・・・・・」「そう。先生は初めからアリスの幹部だったんだよ。教師として戦乱の被害にあった子供達と接しアリスの乱でできた憎しみを消し、アリスの駒として洗脳する。それが先生の役目だったんだ。」
「うっ・・・ぐぅ・・・」JUMに強烈な吐き気が起こる。自分の数少ない思い出の一つが、今完全に潰されたのだ。「そうだ、先生いい物を持ってきたんだ。みんなからのメッセージだぞ。みんな桜田の事忘れてないからな♪」うるさい・・・うるさい・・・・うるさい・・・・・!!!サクラダのブリッジのスクリーンにプラムから配信された動画が再生される。それは、怪しげな機械の元で見たマンマ洗脳されている昔の級友だった。「やめろ・・・・やめろおおおおお!!!!やめてくれえええ!!!!」その光景は異様としか言いようがなかった。例えるならば北○鮮だろうか。「さくらだくん・・・・こっちにきてぇ・・・」動画の少女がJUMに呼びかける。その声は最早ホラーの域だ。「くっ!?通信を遮断!砲撃手!打ち落とせ!!」錯乱状態のJUMを見かねて巴が大慌てで命令を出す。パパパパパパパパと対空機銃ベリーベルがプラムに向けて放たれる。「また失敗しちゃったか。僕は本当に桜田にこっちに来て欲しいだけなのに。」梅岡が後退していく。この男、本気でアリスを崇拝し、本気でJUMを取り込もうとしてるだけにタチが悪そうだ。「逃がさないわよぉ。」後退していくプラムにスイギントウが突っかかっていく。「仕方ないなぁ。後の相手は君に任せるよ・・・白崎。」そのスイギントウに向けてあのウサギが襲い掛かってくる。「ちっ・・・貴方なんか苦手なのよぉ・・・」スイギントウが実体剣で、ラプラスもサーベルで切り結ぶ。しかし、決着はつくはずもなかった。
「JUM!?しっかりするのだわ!金糸雀!」真紅が大声でJUMに呼びかけるがJUMの精神は改善が見られない。「わ、分かったかしら!精神安定効果・・・いくかしら!野薔薇のプレリュード!!」サクラダの内部に心地よい旋律が響き渡る。戦意を高揚させる攻撃のワルツとは違い精神を落ち着けさせる野薔薇のプレリュード。その穏やかなメロディはJUMを徐々に落ち着けさせる。「巴!JUMが完全に回復するまでは貴方が指揮を執るのだわ。」「分かったわ。今から指揮は私が執ります。メイメイ照準!後続の部隊を撃ちます!」サクラダから6連ミサイルランチャーが放たれる。目標は白崎率いる第二陣だ。「水銀燈!相手を変わるんだ!こいつは私がやる。」ラプラスと打ち合っていた水銀燈に雪華綺晶が割ってはいる。「おや、今度の相手は7番目のお嬢さんですか?丁度いい。お話がありましたからね。」キラキショウとラプラスが激突する。戦いはまだ続く。
次回予告 梅岡の攻撃(?)でJUMが戦闘不能になったが巴の指揮で力を取り戻したサクラダ。一方増援で現れた白崎を敵視する雪華綺晶。果たして二人の因縁とは。次回、超機動戦記ローゼンガンダム 槐 確固たる意思 貫けJUM!
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