第二話 JUMと水銀燈
「一つ屋根の下 第二話 JUMと水銀燈」
あれ?何だ、またうちの姉ちゃん達の話聞きに来たの?あんたも飽きないねぇ。んじゃあ誰の話がいいのさ。え?面倒だから長女から?じゃあ銀姉ちゃんだな。
朝、目覚ましの音で僕は目を覚ました。にしても暑い。まだ季節は春だぞ?随分体が熱い。何て言うか布団に何かが入ってるような。まぁいいや。目覚まし止めないと。ええっと、どこかな。眠くて目が開かないけど確かこの辺だったような。ん?何だこれ?ふにっとしてて柔らかい・・・「はぁ・・あぁん・・・」・・・何これ?目覚ましにこんな機能あったっけ?確かにボタンみたいなの押したんだけどな・・・「んんっ・・・もう、JUMったらぁ~。朝から大胆なんだからぁ。」・・・こんな機能あったっけ?銀姉ちゃんの声がするんだけど・・・「ふふっ、JUMをいただきまぁ~す。」僕の体を柔らかい物体が包み込む。ここでようやく意識が目覚めた。「って・・・うわああああああああ!!!!!銀姉ちゃん!!???」布団をバサッと捲る。そこには僕の体に自分の体を絡める銀姉ちゃんがいた。薄着なのが艶かしい・・・じゃなくて!何で居るんだ!?「JUM!?どうしたのだ・・・わ・・・?」ドアを問答無用でぶち開けて入ってきたのは真紅姉ちゃんだった、勢いよく入ってきたもののベッドの上で布団をはだけさせて銀姉ちゃんと抱き合ってる僕をみてぽかーんとしている。「す・・す・・・水銀燈ーー!!貴方何をしているの!!」と、その瞬間真紅姉ちゃんの怒号が響く。あ、これでまだ寝てる姉ちゃん達は絶対起きたな。しかし、真紅姉ちゃんは怒ると声が裏返るよなぁ。銀姉ちゃんは真紅姉ちゃんの声に動揺する事もなく気だるそうにそっちを向くとニヤリと笑っていった。「ふふふっ・・・もらっちゃったもらっちゃったぁ~。JUMの童貞もらっちゃったぁ~。」「んなぁー!?銀姉ちゃん何を!?」とんでもない事を言い出す銀姉ちゃん。いつものからかい文句なんだけど、今日は間と相手が悪すぎる。真紅姉ちゃんがプルプル震えている。ああ、僕一回死んだかもなぁ。「J、J、JUM---!!!不潔なのだわぁあああああああ!!!絆ックル!!」そして渾身の右ストレートが僕の頬を直撃した。ああ、意識が・・・・かゆ・・・うま・・・
「それはJUMがわりぃです。JUMが水銀燈にデレデレしすぎですぅ。」リビングで顔を腫らした僕は痛みと戦いながら朝食をとっていた。「水銀燈も大人気ないよ。間に受ける真紅も真紅だけど。」我が家の良心蒼姉ちゃんが注意する。「わ、私は悪くないのだわ。そ、そう見えたから仕方ないのだわ。」真紅姉ちゃんはツーンと紅茶を飲んでいる。「いいじゃなぁい。スキンシップよぉ。それにしても、JUMったらいい指使いだったわよぉ。」僕はブフッと味噌汁を噴出す。他の姉ちゃん達の視線が突き刺さってくる。「ち、違うって!僕は目覚まし時計だと思って!そりゃ、何か柔らかいとは思ったけど・・・」「うっふふ、それで私の胸のボタンを連打したのねぇ~。感じちゃったわぁ。」銀姉ちゃんの声に益々僕に視線が突き刺さる。いや、本当勘弁してください。「JUMは今日弁当抜きですね。きらきー、食べていいですよ?」「ありがたいですわ。それじゃあ、JUMの分は私が貰いますわ。」翠姉ちゃんが僕に罰を告げる。ああ、今日も厄日なのは間違いないみたいだ。
「お早うございます水銀燈様!」「水銀嬢!今日も美しい!」「銀様!今度私と出かけませんか!?」学校へつくと一斉に男子生徒が銀姉ちゃんに群がる。姉ちゃんの非公式のファンクラブ「水銀党」ってやつだ。「あらぁ、お早う。でも御免なさいねぇ。今度の休みは先約があるのぉ。」銀姉ちゃんが水銀党員をかわして教室に向かう。しかしまぁ、凄い人気だ。いつも思うんだけど、銀姉ちゃんならいくらでもイイ男捕まえられると思うのに何でしょっちゅう僕に構ってくるんだろうか。「JUM、今日は一緒にお昼食べましょう~?お昼に屋上、いいわねぇ?」「え?僕今日弁当ないんだけど。」「いいからぁ。来ないと明日の朝もっと悪戯するわよぉ。」どうやら悪戯の自覚はあるようだ。だが、これ以上弁当抜きになっても困るので従う。「決まりねぇ。それじゃあねぇ~、あ、めぐぅ。おはよう~。」銀姉ちゃんが友達を見つけて向かっていく。僕はそのまま教室に向かった。「よぉ、JUM。今日は銀嬢と登校だったのか。」教室に帰るなり僕の友達のべジータが話しかけてくる。「ああ、まぁな。お前は今日も蒼姉ちゃんを追っかけてたな。」とりあえずベジータを適当にあしらうと僕は席についた。
3時間目、校庭をみる。そこには体操服の銀姉ちゃんがいた。ちなみに、ブルマなんてお約束の服装ではない。体育の時間みたいだ。陸上をやってみたいだな。銀姉ちゃんは性格はともかく、他は結構完璧にこなしちゃう人だ。顔は美人だと思うし、スタイルだっていい。成績もいいし、運動神経もかなりいい方だろう。こう考えるとますます、何で弟の僕にばっか構ってるのかさっぱり分からない。お、銀姉ちゃんの番だ。100M走か。パーンと音と共に走り出す。体育だからなのかポニーテールにした銀姉ちゃんの銀髪が風に流れていく。僕は思わずそれに見とれてしまった。綺麗だった。文句なしで。まぁ、もっとも大半の男は・・・「うっひょ~!銀嬢の胸がこうバルンバルンとたまんねー!!ぐあ!」まぁ、ベジータを代表するようにそこに目がいっちゃうんだよね。仕方にとは思うけどさ。とりあえずベジータは担任に思い切り殴られていた。
「あー、腹減ったなぁ・・・」僕は屋上への階段を上っていく。屋上のドアをあけるとすでに銀姉ちゃんがいた。屋上は風もほどよく吹いていて銀姉ちゃんの髪とブレザーの制服を揺らしていた。「遅いわよぉ、JUM。さ、食べましょう~?すわってぇ。」僕は銀姉ちゃんの隣に腰を下ろす。銀姉ちゃんは翠姉ちゃんが作った弁当の包みを開ける。中は色々入った翠姉ちゃんの力作だった。ああ、朝既に僕のはキラ姉ちゃんに食われたな・・・「はぁい、JUM。あ~んしなさぁい。」銀姉ちゃんがから揚げを爪楊枝でさして僕の口に運んでくる。「んなっ・・・そんな恥ずかしい事・・・」「いいじゃなぁい。誰も居ないしぃ。お腹すいてるでしょう?」から揚げのいい匂いがさらに僕の食欲を促進させる。「それに・・・今日のはお姉ちゃんが少し悪いしねぇ。だから、ほら、あ~ん。」どう考えても全面的に悪いんですけど。しかし、食欲に負けた僕はから揚げに食べた。「ふふっ、ほら今日はお姉ちゃんが食べさせてあげるわぁ。あ~ん。」今度は箸に御飯を乗せて僕の口に運んでくる。僕は結局そのまま銀姉ちゃんの言われるままに一緒に一つのお弁当を食べた。
「ご馳走様なのー!」夜、晩御飯を食べ終える。食後の食器の片付けは各自でと我が家は決まっている。「水銀燈、今日はよく食べたですねぇ。いつもはスタイル維持とかであまり食べないですのに。」「貴方の御飯が美味しかっただけよぉ。」銀姉ちゃんの言葉に素直に翠姉ちゃんは照れている。それより、やっぱり夜多めに食べたのは・・・「銀姉ちゃん、夜多く食べたのってやっぱり昼僕が食べちゃったから・・・」僕がそう言うと銀姉ちゃんは笑って僕のオデコを小突いた。「JUMは気にしないでいいのよぉ。JUMは私の大事な大事な弟だものぉ。」ああ、そういう事なんだ。女姉妹ばかりの我が家にとって養子とは言っても弟である僕は銀姉ちゃんにとって特別なものだったんだ。「ありがと、銀姉ちゃん。」僕が思いのまま感謝を銀姉ちゃんに伝える。やっぱり銀姉ちゃんは長女だなぁと思う。おちゃらけてて悪戯好きだけど、やっぱり僕達の事を思いやってるんだ。もっとも・・・「さ、JUM。今日は一緒にお風呂入りましょう~?体洗ってあ・げ・る。」こういうのはやっぱり大人気ないと思いますよ、銀姉ちゃん。
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