第五話 「幸せなただひと時」 外伝
外伝
同日、夜の刻
私はいつもの様に喫茶のバイトを終えると帰り路につく。あまりいい道とは言えないが近道の墓地を通っていく。怖くはない、むしろいい。だってここには最愛の人の生きた印があるのだから。私は今日は素通りではなく墓地にある墓の一つに近づいていく。
「あなたは私の中で生きている、だから此処に来ても意味は無いのだろうけど つい来ちゃったわぁ」
私は墓に向かって喋りかける。
「真紅もあなたの事を思ってくれてるわぁ。それも“変わらぬ思い“ですってぇ。 ほんと幸せな人ねぇ。あなたは。」
私はそう言うと一旦家へと帰る。そして花と一輪、そして墓を綺麗にする掃除道具を持って再び来た。私は墓に水をかけるとまた喋りだす。
「私もあなたの事はずっと思ってるわぁ。 “麗“わしく思ってるわぁ、あなたとの思い出。」
ブラシでごしごしと墓を磨く。
「けどあなたへの思いはずっといい“思い出“として残ってるわぁ。 そしてあなたへの思いは朽ちてないわぁ。」
「あなたへの思いは変わっていってるわぁ。 死んだ後でも益々あなたの事が好きになるのよぉ。 だから千日紅は供えないわぁ、ちょっとミスマッチだけど許してねぇ。」
線香に火をつけその後、花を一輪墓に置く。
「一瞬一瞬はあっと言う間に過ぎるわぁ、私はその一瞬一瞬ただひと時を 幸せに“麗“わしく生きていくわぁ。」
そう言って立ち上がりほこりを払うと墓に背を向ける。そして背を向けたまま喋る。
「だからもう少し待っててねぇ、地獄でもう暫くしたら会いましょう。」
そして私は帰り路についた。
供えた花は薔薇の花。あの日誓った永遠の印。ミスマッチだけど思いは伝わる。あなたへの思いはどんどん燃えさかる。勢いは止まらない。あなたが好きで、その思いは止まらない。
薔薇の花言葉、“熱烈な愛“
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