超機動戦記 ローゼンガンダム 第一話 戦いの狼煙
超機動戦記 ローゼンガンダム 第一話 戦いの狼煙空気が焼き焦げるような感覚に陥る。周りは真っ赤真っ赤真っ赤。呼吸がしにくい。「お母様・・・お父様・・・」その地獄で金色の髪の少女が声を漏らす。しかし、それは無常にも爆音の中にかき消された。「紅・・・真紅!」その少女の元に一人の少年が駆けつける。「JUM・・・お母様が・・・お父様が・・・」「大丈夫だから・・・行こう!真紅は・・・僕が守るから・・・」それは、遠い記憶と約束・・・「んっ・・・」暗闇に染まった部屋で金色の長い髪の女性が目を覚ました。「あの時の・・・夢なのだわ・・・」女性が額にかいた汗を手でぬぐう。まだ深夜だと言うのに不思議と寝付けそうになかった。女性・・・真紅は頻繁にこの夢を見ている。その度に起きてしまうのだった。しかし、不思議な事に真紅にはその夢は悪夢とは思えなかった。真紅が部屋を出て食堂へ向かう。食堂にはこんな時間だというのに明かりが照らされていた。「あらぁ?真紅じゃないのぉ。どうしたのぉ~?」食堂にいたのは長い銀髪を翻し、飲み物を飲んでいた。きっとヤクルトだろう。彼女はジャンキーのレベルだ。「別に・・・喉が渇いたから紅茶を飲みにきたのだわ。水銀燈、紅茶を淹れて・・・いえ、自分で淹れるわ。」真紅がその女性、水銀燈に答えながら紅茶を淹れていく。「そぉ~。てっきり怖い夢でもみて起きたのかと思っちゃったわぁ~。」ニヤニヤしながら水銀燈が言う。しかし、真紅は気にする事もなく淹れた紅茶を飲む。「そうね・・・もしかしたら悪夢なのかもだわ。そういうあなたはどうなの?」「そうねぇ。あの日の夢を悪夢じゃないなんて思えるほど・・・私は人間できていないわぁ。」顔は笑っているままだが、水銀燈が飲み干したヤクルトはグシャッと握りつぶされている。「失言だわ。忘れて頂戴。」そんな水銀燈を見て真紅が言う。「ふふ、別に構わないわぁ~。それじゃ、早めに寝ないとお肌に荒れるわよぉ?貧乳に加えてお肌ガサガサなんてこんな場所に身を置いてるとしても女として恥ずかしいわぁ。」とりあえず真紅をからかって食堂を後にする水銀燈。背後から「余計なお世話なのだわ!」と抗議も聞こえているだろうがそのまま部屋へ向かっていった。真紅は紅茶を飲みながら外を見る。ポツポツと家の明かりが見える。ここはまだ、戦地に巻き込まれてない証拠だ。だが・・・それもいつまで続くかは分からない。そう、10年前のように・・・一瞬で壊れてしまう可能性だってあるのだ・・・「そんな事させないのだわ・・・絶対に・・・」真紅は一人つぶやくと紅茶を片付け部屋に戻り眠りについた。「おっはようですぅ~。今日も朝から翠星石に会えて幸せですよ、おめえら。」翌朝、真紅が食堂で紅茶を飲んでいると、茶色の長い髪をした少女が入ってきた。「おはようなのだわ、翠星石。蒼星石は一緒じゃないのかしら?」真紅がその少女、翠星石に声をかける。翠星石は朝食を持つと真紅の隣の席につく。「蒼星石はまだ寝てるですぅ。昨日の緊急要因だったから寝るのが少し遅かったですぅ。」朝ご飯のパンをかじりながら言う。蒼星石というのは彼女の双子の妹で同じようにMSのパイロットをしている。真紅はそう、と答えると再び紅茶を飲み始める。きっと彼女の体は紅茶でできているだろう。「ここはいい街ですね~。活気があるです。」翠星石が街を眺めながら言う。それは真紅が思った事と同じだった。「ええ、だからこそ私たちが守らないといけないのだわ。」真紅も窓から街を見る。街では子供たちが遊んでいるのが見える。商売に精を出しているのが見える。みんな平和に暮らしているのだ。「・・・アレは・・・アリスは何を基準に攻撃を加えてるですかね?」翠星石がボソッと言う。アリス・・・その名こそ今、この世界を恐怖に貶めている畏怖すべき名だった。今から20年程前・・・天才科学者ローゼンの開発した全てを超越せし人工知能。元々は人類を助ける為に開発されたものだった。しかし、度重なる人類への失望を繰り返した感情を持つ人工知能は10年前、ついに人類に反旗を翻す。俗に言う「アリスの乱」である。人間の開発した人工知能が反旗を翻す。その事実が容認し切れなかった時の権力者は全ての対応が後手後手に回ってしまった。そのせいかアリスは一気に勢力を強め今や地球全域を支配に収め逆らう勢力は滅亡させていった。「分からないのだわ。あの子がいた村なんて・・・本当に何もない村だったのだわ。」真紅が食堂で御飯を食べている15歳くらいの少年を見る。先日、アリスに反逆罪とやら襲撃された村の少年で、家族を殺された恨みから真紅達レジスタンス組織「メイデン」に加入した少年だ。実際、「メイデン」に所属している者はみんなアリスの被害者なのであった。真紅も翠星石も。そして昨夜の水銀燈もアリスに両親などを殺されている。「許せねぇですよ・・・何の罪もない人の日常を・・・幸せを奪うだなんて・・・」翠星石が唇を噛み締めながら言う。彼女が「メイデン」に参加した理由は日常を奪われたから、なのだ。この怒りは最もなのかもしれない。そんな時だった。ビービービービービービー ビービービービービー敵襲を知らせるサイレンが艦内に鳴り響く。「敵襲!敵襲!アリス所属のMSが接近中。これよりサクラダは迎撃にうつる!各員!第一戦闘配備!MSパイロットは随時出撃せよ!繰り返す!」「メイデン」の旗艦「サクラダ」に緊張が走る。放送をしているのは館長のJUMだ。「真紅!?」翠星石が険しい顔を真紅に向ける。「分かっているのだわ。この街を破壊なんてさせないのだわ。」真紅と翠星石がMSデッキに向かって走り出す。彼女たちが着いた時にはすでに数機出撃した後だったようだ。「真紅!翠星石!敵襲なの!?」デッキではショートヘアの女性が二人を待っていた。「蒼星石、出撃ですよ!」翠星石は双子の妹にそう言うとさっさと期待に乗り込んでいく。「蒼星石、昨日は深夜待機していたんでしょう?無理はしないほうがいいのだわ。」「大丈夫だよ真紅。それより君だって寝れなかったんでしょう?」蒼星石もそう言って機体に乗り込んでいく。真紅はそんな蒼星石に苦笑すると自身も機体に乗り込んだ。赤を貴重とされたカラーリング。システムを起動させるとモニターの光が真紅の顔を照らす。「真紅機、発進OKです。」スピーカーから発進許可の声が聞こえてくる。「了解なのだわ・・・必ず守ってみせるのだわ・・・真紅!ローゼンガンダム、出るのだわ!」艦内で加速し飛び立つ。その姿はまるで赤い天使のようだった。次回予告 守るべきモノ、守りたいモノ。それぞれの思いを抱き少女達は戦場へ降り立つ。戦いの末にあるのは絶望か、希望か。次回、超機動戦記ローゼンガンダム 「激突する力」人々の幸せ 守りきれ真紅!
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