第三話 「花に言葉を葉で味を」
第三話 「花に言葉を葉で味を」-翌日の放課後真紅は二人を連れてローゼンメイデンへと向かう。ホントは走って早く行きたい所だったのだが昨日に走りすぎて筋肉痛気味なので歩いていってるのだ。「うゆー、足痛いのー。」「二人が昨日あんなに走るからかしらー。」“悪かったわね“そんな会話を広げつつ歩いていく。しかしホントに良かった。正直いくら優しい白崎さんでも声が出ない私を雇わないかもしれないと思っていたから。その分一杯頑張らなくては。手をギュッと握り締める。“見えてきたわ“道の角にローゼンメイデンが見える。余り目立つ位置にあるのではないせいか客が入っていく様子は無い。「うゆー、儲かってるのかしらー?」「昼は大体あんな感じかしらー。夜になると客が一杯来るかしらー。」
確かに喫茶とは言ってるものの外観はBARみたいで酒を取り扱ってるのもBAR並であるし夜になると客が来るというのも理解できる。“何故BARじゃなく喫茶にしたのかしら?“疑問に思った事を金糸雀に聞く。「BARにすると学生層の客が来にくいからと言ってたかしらー。 だから建前上は喫茶にしてると言ったかしらー。」成る程、そういう風にすれば確かに少し多くは客は入るし儲かるだろう。高校生がBARに入るってのは聞いた事が無いし。そんな事を考えている内にローゼンメイデンへと着く。ドアを開くと白崎がカウンターの中から喋ってくる。「やぁ皆さん、お待ちしていましたよ。 制服も用意しておきましたから。」昨日雇うと決めたばかりなのに何故こんなに早く用意出来るのだろう?そんな疑問を抱きつつカウンターの中へと入っていく。「うゆー。制服見たいのー。」「カナも見たいかしらー。」そういや何故金糸雀には制服が無いのだろう?昨日見たときは制服ではなく黄色のど派手な服を自分で持ってきて着替えていた。コスプレのようで制服には見えなかった。
“そういや何故金糸雀には制服が無かったの?“「セーラー服のバイオリニストってのも妙じゃないですか。 だから金糸雀さんに私服を持ってきてもらってそれに着替えてもらってます。」成る程、しかしその私服がコスプレにしか見えないのだが・・・。“金糸雀の昨日着ていた服は何かしら?“「あれはみっちゃんに着るように義務づけられてるかしらー。 家でみっちゃんに毎回持たされるかしらー。」あの人なら確かにやりそうだ、ん?待って、まさか・・・。“金糸雀、私達が働く事みっちゃんに言った?“「言ったかしらー!是非働く姿を見たいって言ってたかしらー!」“白崎さん、制服ってのはどこから仕入れたものなの?“「・・・宅配便で今朝、金糸雀さんのお姉さまからいきなり来ました。」嫌な予感は当たった、あの人が金糸雀の話を聞いて私達に着せようと白崎さんが制服を注文する前に此処に送りつけてたのか。「どうでもいいから早く見たいのー!」「畏まりました、こちらへ来て下さい。」白崎は店の奥へと進んでいく、それに私達も着いて行く。店の奥で目にした物はど派手な赤とピンクの服だった。呆気にとられて声が出ない、いやもとから出ないが。
「かわいいのー!」見るだけならそう思うが着るとなるとかなりきつい。雛苺は喜んでいるようだが。「そちらの更衣室ででも着替えてください。」白崎もそう言うんのでやむを得ず服を取り更衣室へ向かう。金糸雀もバッグの中から服を取り出し、雛苺も服を手に取り着いて来る。“一体どこでこんな服を買うの?あの人は。“「誰かに作ってもらってるて聞いたかしらー。」全く、そんな服を作る者の顔を見てみたい。そんな事を考えながら服を着替える、中々着るのが大変だ。5分ぐらいしてようやく着替え終わる。鏡で見ると頭がくらっとするぐらいの衝撃が来る。「二人とも似合ってるのかしらー!」「うゆー!嬉しいのー!」二人共喜んでいる所を見てもう考えるのはよす事にした。そして更衣室を出てカウンターへと戻っていく。「皆さんお似合いですよ、では雛苺さんはお客さんが来るまで 料理などを運ぶ練習をしてください、金糸雀さんはいつも通りで、 真紅さんは紅茶を煎れる練習を。」
白崎がそう言うと金糸雀は小さな舞台へ雛苺はスキップをしながらトレーや皿が置いてある所にそして私は白崎さんに着いて行く。「このメニューの中で煎れた事の無い紅茶はありますか?」白崎にメニューを見せられる。見てみると半分ぐらいは自分でも煎れた事のある葉だ。“半分ぐらいは煎れた事があるわ“そう書いたメモを渡すと煎れた事の無い葉を書き白崎に渡す。「結構多く煎れた事があるのですね、では煎れた事の無い葉はこのノートを見て 煎れる練習をしてください。料理の方は私がやっておくので。」料理の方はやってくれると聞き安心し私は葉を取り早速煎れる練習をする。しかしこのノート、ほんとに詳しく書かれている。お陰で煎れた事の無い葉でもちゃんと入れられる。しかし・・・どこかで見た字だ。そんな事を思ったが気のせいだと思い夕方までずっと煎れる練習をしていた。雛苺はまだずっと皿を運ぶ練習をしている。平行感覚が意外と鋭い彼女ならウェイターは適任だなと思う。金糸雀に任せたら大惨事を招かねない。そんな事を考えてるうちに最後の紅茶へと差し掛かる。最後のページを開き煎れる練習をする。そしてノートの最後の表紙部分の裏を見て驚愕する。
NAME JUNと書かれていた。どういう事だ?私は白崎さんのいるキッチンへ向かう。「おや、どうかなされましたか?」そう言って来る白崎にメモとノートの最後のページの表紙裏部分を見せ付ける。“このノート、ジュンのってどういう事!?“白崎はノートを見るとほぉと言いながらこっちを向きやがて言い出す。「おやおや、もう最後の葉までいきましたか、左様これはジュンさんの物です。 私がジュンさんから譲り受けました。」“何故あなたが?“「私はカクテルを作ったりするのには自信がありますが紅茶はどうも苦手でして・・。 BARでは無く喫茶をやってるなら紅茶ぐらいちゃんと入れれるようになってくださいと 彼がそんな事を言ってこのノートをくれたのですよ。 自分の大事な人から煎れ方を教わって以来こうやって勉強をしていると言ってました。」確かジュンに紅茶を煎れるのを教えたのは・・・私?「・・このノートはあなたが貰って下さい、その方が彼も喜ぶでしょう。」白崎はそう言いノートを手渡す。私は黙って受け取る。
「これから頑張ってくださいね、真紅さん。」白崎はそう言うとカウンターへと消えていく。私は立ち尽くしていた。大事な人・・・。彼はこんな偉そうな私でもそう思ってくれてたの・・?私は思わず涙をこぼしそうになる。暫くすると白崎さんからあがっていいと言われた。客が来ないと思ってたら今日は特別に定休日にしたらしい。お陰で命一杯練習できた訳だが。私は着替え終わると金糸雀と雛苺に別れを告げ一人走り出す。暫く走ると花屋が見える。筋肉痛がひどいが関係ない、兎に角走った。花屋で私は花を買うと再び走り出す。10分ほど必死に走って着いた先は墓地だった。私は彼の墓を探し出す。暫くすると墓が見つかる。私は買ってきた花を供えるとメモを置く。“あの世から見ていなさい、あなたみたいな紅茶を煎れるのだわ“・・・ジュン、見ているのだわ。私はそう思うと拳をギュッと握り墓を後にした。
供えた花は千日紅。よく墓に供えられる花。花言葉は“変わらぬ愛情“有難う・・・私の大切な下僕、私の大切な友達、あなたへの思いは変わらない。あなたへの思いは感謝と愛で溢れているわ。
-次の日の放課後真紅達は昨日と同じ様に三人でローゼンメイデンへ来た。ただ、真紅だけはやけに大荷物で。「うゆー。真紅、さっきから気になるけどその荷物はなんなのー?」“後で見せてあげるのだわ。“「気になるかしらー!」そんな会話を広げながらまたあの服へと着替える。着替えてカウンターへと出ると金糸雀が声をあげる。「さぁ出すかしらー!何なのその荷物はー!?」金糸雀も叫んでるので荷物を出そう。私はでかいリュックサックを開けて荷物を出す。「うゆー。花なのー。」「綺麗かしらー。一杯かしらー。」“ふふ、この店にあうと思ってね、白崎さんいいでしょう?“「ええ、勿論、薔薇だけしかかざってなかったこの店がもっと華やかになりますよ。“白崎さんもそう言うので私は様々な花を店のあちこちに置いて行った。金糸雀の立つ舞台には彼女のイメージみたいに黄色い“福寿草“と“ストロベリーキャンドル“を置いといた。真紅はせっせと置きながら思う。
私は葉であなたの味を出す・・。だから花で、花で私の思いを私の“言葉“を。真紅は自分からの“言葉“の詰まった花を置いていった。そして置き終わる頃にアルバイトを始めてからの客一号が来る。扉に下げた植木鉢から“フジ“の花がなびいていた。福寿草“永遠の幸せ“ストロベリーキャンドル“幸せを呼ぶ“フジ“ようこそ“花が語っていた。真紅の思いを、“言葉を“
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