真紅爆発!!ベジータがやらねば誰がやる。
主演 翠星石
蒼星石「今日も良く頑張ったね。」ここは園芸部の活動場所、日は落ちかけ辺りは薄暗い。二人は家路に着く為、後片付けを始めている。翠星石「翠星石はもう疲れたです。でも園芸部の活動は最高です。」翠星石「後片付けは面倒くせーですが。」翠星石が手近な石を軽く蹴る。蒼星石「それも活動の内だから。」蒼星石がたしなめると、翠星石はしぶしぶ後片付けを手伝う。蒼星石「そういえば、翠星石はもう聞いた?」蒼星石が手を止め、こちらを振り向いた。翠星石「何をですか?」蒼星石「最近、学園に泥棒が出るらしいって噂を聞いたんだけど。」翠星石「初耳です。それにしても悪いヤローもいたもんです。」蒼星石「園芸部の活動前に言っておこうと思ったんだけど、僕としたことが。」蒼星石が少し俯く。翠星石「蒼星石が気を病むことはないです!悪いのは泥棒です!」翠星石が蒼星石を慌てて宥める。蒼星石「活動前に伝えておけば、翠星石の荷物も目の届く所に持って来れたのになと、思ったんだよ。」蒼星石「僕の必要な物は持って来てあるんだ。」そう言って、蒼星石は隅に置いてあった荷物を指差す。
翠星石「大丈夫です。翠星石はいつも貴重品を持って歩いているです。」蒼星石に張り合わんばかりに財布、携帯等を見せびらかす翠星石。蒼星石「それがさ、貴重品より別の物が盗まれたりするんだよ。」蒼星石「どんな物だったかな・・・・・・。」蒼星石が首を傾げ、必死に思い出そうとする。暫くして、蒼星石「思い出せないや。余り真面目に聞いてなかったしね。」ペロっと舌を出し、誤魔化す蒼星石。蒼星石「ここは僕が後片付けをしておくから、翠星石は先に荷物を取りに行ったらどうかな?」翠星石「そんな当てにならない情報、翠星石が信じるわけが・・・・・・・。」何か名案が浮かびそうになった翠星石は、蒼星石に顔を背けた。翠星石「でも良く考えてみれば、蒼星石に片づけを押し付けるチャンスです。」蒼星石「何をぶつぶつ言っているんだい?翠星石。」翠星石「な、何でもないです。」翠星石は慌てて否定する。コホン、と翠星石は軽く咳払いをして翠星石「蒼星石が、そこまで言うなら仕方ねーです。」翠星石「後片付け、しっかりやるですよ。」翠星石はこちらを振り向かずに言った。振り向けば、歪んだ笑みが蒼星石に見られてしまうからだ。蒼星石「はいはい。終わったら校門で待ってるよ。」蒼星石は、それを知ってか知らずか軽く受け答えをして流した。日が落ち、空が闇に彩られる。この黒い闇こそが次の幕、そのものの色なのであった。
その頃、校舎。翠星石のクラスの教室。誰も居ないはずの空間に、妖しく動く一つの影が潜んでいた。?「wwwwwwwwwwwwww。」妖しい影が謎の奇声を上げる。それとほぼ同時に、誰かが階段を上がる足音が鳴り響く。翠星石だ。その音に気が付かないのか、妖しい影は尚も妖しい動きを繰り返す。ゆっくりと階段を上る翠星石。その姿にいつもの勢いは無い。翠星石「やっぱり、蒼星石も連れて来れば良かったです。」翠星石「後片付けを任せるなんて、欲を張らなければ良かったです。」所々で壁に身を隠しつつ進む翠星石。やがて、目的である自分の教室の前に着いた。翠星石は教室の扉を僅かに開け、扉の隙間から手を入れる。電灯のスイッチを探しているようだ。程なくして指先に硬いものが触れる。翠星石はほっと息を吐いた。翠星石はそれを押すと、電灯が付くのも待たず逃げるようにして教室に踏み込んだ。少し遅れて電灯が付く。その瞬間、謎の影と翠星石が顔を合わせた。?「ぎゃああああああっっっっっ!!!」翠星石「きゃあああっ!!」お互いを認識していなかった二人は、突然の出来事に悲鳴を上げた。翠星石「何です!何者です!翠星石を食べられるものなら食べて見やがれ!です!!」翠星石「そんなに食べたければ、これでも喰らえ!です!!」完全に混乱した翠星石は手当たり次第に物を投げ、手近な机を蹴り飛ばす。?「落ち着け!落ち着けぇぇぇ!!」どこかで聞いたような相手の声。翠星石は冷静さを取り戻し、攻撃の手を休める。投げつけられた物と蹴り倒された机の瓦礫から、声の主が姿を現す。
翠星石「その声は・・・・・・ベジータですか?」何と、声の主はベジータであった。ベジータ「よお翠嬢、今日も綺麗だな。」翠星石「その台詞は登校中に聞いたです!」翠星石「こんな時間に、教室で何やっているです!」それを聞いた途端、ベジータは慌てて手に持っていた物を後ろに隠した。翠星石「今、何を隠したです?」ベジータ「俺は何も隠してないぜ。」否定はしたものの、ベジータは明らかに動揺している。翠星石「金糸雀は騙せても、この翠星石は騙されねーです!」隠された物の正体を暴こうと、翠星石がベジータに詰め寄る。翠星石「ちゃんと見せるです!」ベジータ「分かったよ。」ベジータは観念すると後ろに隠していた物を見せた。
翠星石「謎は全て解けた!くんくん探偵の数学ⅡB?」ベジータ「そうだ、普通の参考書だぜ。」ベジータが持っていたのは参考書2冊だけであった。しかし、これは普通の参考書などではない。くんくんが、該当する科目絡みの事件を解決して行くという設定の参考書なのだ。これが大好評で、くんくんシリーズは既刊5科目。シリーズ累計100万部超えのベストセラー参考書なのだ!この手のマニアなら、あらゆる科目はこの本を使って勉強しているはずである。ベジータ「これで俺が怪しくないって分かっただろう!」健全な勉強家という雰囲気を前面に押し出し、ベジータは潔白を主張する。翠星石「まだ怪しいです。もっと良く本を見せるです。」翠星石はベジータから参考書を奪い取ると、怪しい所がないか調べ始めた。翠星石「二冊とも同じ数学ⅡBです。」翠星石「何で二冊も持っているですか?」ベジータ「それはだな・・・・・。」ベジータは少し考え込んだような素振りを見せ始めた。翠星石「早く答えるです。」ベジータ「保存用と勉強用だ!」翠星石の催促にベジータは慌てて答えた。翠星石「保存用と勉強用ですか?この教室にも、もう一人そんな奴がいたです。」もちろん真紅のことだ。ベジータ「いいから、早く返してくれよ!」ベジータはそわそわと落ち着かない。翠星石「暇潰しに、もうちょっと見せるです。」翠星石は怪しい所がないか再度調べ始めた。
翠星石「片方は結構使い込んであるです。もう片方は新品同様です。」翠星石「保存用と勉強用というのは嘘じゃないようです。内容はと・・・・・・。」翠星石が呆れた顔をしてベジータの方を振り返る。翠星石「ベジータ、こんな簡単な問題もできねーですか?ただの馬鹿です!」ベジータ「いいから早く返してくれよ!」ベジータの顔から汗が流れ落ちる。翠星石「分かったです。もう飽きたです。」ベジータは特に疑わしいこともないようだ。遊ぶのに飽きた翠星石はベジータに本を返す。翠星石から参考書を受け取るや否やベジータはベジータ「それじゃ俺は、用事があるから帰るな!」脱兎の如く駆け出した。翠星石「変な奴です。」翠星石は気を取り直すと帰り支度を始めた。荷物を纏め上げ、教室から出ようとしたその時、
真紅「くんくん!!」悲痛な叫びを上げる真紅が教室に入ってきた。翠星石「真紅?」翠星石の言葉にも真紅は反応しない。翠星石に全く気づいていないようだ。真紅「何?この教室の荒れ方は?」真紅「でも今はそんなこと、どうでも良いのだわ。」真紅は翠星石に目もくれず、一目散に自分の机へと向かう。自分の机の中を確認している。何度かその行為を繰り返すと真紅「・・・・・・無いわ。」呻く様に呟いた。真紅は辺りを見回し、ようやく翠星石に気が付いたらしい。真紅は静かに翠星石に近づく、真紅「翠星石、貴女なの?」翠星石「何を言っているです?」真紅「無いのよ!私のくんくんが!」翠星石に手が届く所にまで真紅は近づいた。翠星石「真紅のくんくん人形なんか、翠星石が知るわけねーです。」真紅は翠星石の胸倉を掴んだ。目が本気である。真紅「人形じゃないわ。参考書よ。」翠星石「参考書?もしかして、くんくん探偵の数学ⅡBですか?」真紅「そうよ。良く知っているわね。やっぱり貴女が・・・・・・。」その時、翠星石の脳裏にベジータとのやり取りが蘇る。
ベジータは明らかに挙動不審であった。それに保存用を学校に持ってくる人間がいるだろうか?翠星石「真紅!急ぐです!」全てを確信した翠星石は、真紅の手を引いて駆け出した。校庭に出ると、校門で待っていた蒼星石がこちらに手を振った。翠星石「蒼星石!」二人は蒼星石のところに駆け寄った。蒼星石「どうしたんだい?そんなに慌てて。」翠星石「蒼星石!ベジータを見なかったですか?」蒼星石「彼なら・・・・・・・・。」
その頃のベジータ。古本屋前。ベジータ「参考書1冊で400円儲けたぜwwww」ベジータ「真紅嬢の参考書も手に入ったしなwwww」今日の稼ぎである400円を握りしめ、勝利のポーズを決めるベジータ。不意に突風が吹く。それが辺りの空気を一変させた。只ならぬ雰囲気にベジータが身構える。ベジータ「誰だ!出てこい!」?「お望みとあらば、姿を見せてやるです!」通りの曲がり角から翠星石が姿を現す。翠星石「ベジータ、どうやって400円儲けたです?」ベジータ「いや、それはその・・・・・。」古本屋の影から蒼星石が姿を現す。蒼星石「古本屋の店員から、話は聞かせて貰ったよ。」ベジータ「・・・・・・。」最後にベジータの背後から真紅が姿を現す。真紅「お仕置きの時間なのだわ。」ベジータは自分の末路を悟った。ベジータ「ここからが本当の地獄だ・・・・・・。」
エピローグベジータを倒し、無事参考書を取り戻すことに成功した三人。家路の途中、翠星石に疑問が浮かんだ。翠星石「結局、真紅の参考書はその使い込んでいるやつだったですか。」真紅「そうよ。保存用を持っていく人間なんて居ないのだわ。」蒼星石「結局ベジータは、誰の参考書を古本屋に売ったのかな。」真紅「気にすることもないのだわ。」蒼星石「そうだね。」夜道に三人の笑い声が響いた。
その頃のベジータ。依然古本屋前。
ベジータ「畜生、真紅嬢の参考書でやりまくる予定だったのに 俺のは古本屋に売っちまったから、参考書が無くなっちまったぜ。」ベジータ「まあ、あっても勉強はしないけどなwww」 夜空にベジータの高笑いが響くのであった。
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