『愛って、なんですか?』後編
フルートに吹き込む吐息に、ボクの想いを乗せて、その旋律は奏でられる。金糸雀が徹夜で作ったというこの曲は、単純だけれど玄妙なメロディを醸し出していた。すんなりと耳に入ってきて、勇気を沸き立たせてくれる、穏やかな調べ。天才の存在を、こんなにも身近に感じるとはね。もしかしたら、彼女は女神ミューズの生まれ変わりなのかも知れない。金糸雀には、どんなに感謝しても足りない。だけど……その恩を返す時間は、ボクに残されているだろうか。ボクの頬を涙が流れ落ちて、フルートの調べが揺らいだ。「あ~あ、なに泣いちゃってるんだろうね、この娘は。 フルートの澄んだ音色が、へろへろに歪んじゃってるじゃないの。 ゴチャゴチャして、まるで音の迷路よ。 曲名、変えた方が良いわ。『乙女の涙は音迷路』ってね」「うん……そうだね」それ以上は演奏できなくて、ボクはフルートを降ろした。「どうしたの、蒼星石? 自分の演奏で、感激しちゃった?」「違うんだ。ごめん……なんでもないから」「なんでもなくて、いきなり泣き出すワケないでしょ! ねえ、話してみて。私たちの間で、隠し事なんて止めましょうよ」「…………」「お願いよ、蒼星石」「……そうだね。聞いてくれるかい、めぐ?」しっかりと頷く彼女に促されて、ボクは徐に、口を開いた。
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