おべんとう
金糸雀はいるですかー?」「え?なにかしらー?」「ちょっとやめなってば翠星石!」「蒼星石は黙ってるです!」「?」「えー、こほんっ。実は明日、みんなで一緒に屋上でお弁当を食べるです」「(あぅ・・・また仲良し自慢かしらー・・・)」「それで、明日は金糸雀も一緒にいかがかと思って誘いに来たですぅ」「・・・え?え?カナも一緒に食べていいの?」「当然ですぅ。ねぇ蒼星石」「・・・」「そ、それじゃあ明日のお昼休み、空けとくですよ金糸雀」「うん!」「あ、それとみんな手作りだから、金糸雀も自分で作ってくるですよー」「わかったかしらー!ありがとうかしらー!」
「みっちゃん、明日のお弁当は一緒に作る」「え!?どうしたのよカナ、雪でも降らせる気?やめてよね」「全然違うのかしら!」「冗談よ。で、明日何があるの?」「あのね、明日みんなで自作のお弁当を持ってきて一緒に食べようって、翠星石が誘ってくれたの」「あー、なるほど。翠星石って子は、お友達?」「えっと・・・うん、そうよ!まったくカナってばもてもてで困っちゃうのかしら」「そっかそっか、カナも友達出来たんだね」「な、何言ってるのよみっちゃん!カナほどの実力者なら、友達の100や200、簡単なのかしらー」「うん。カナは友達作るの苦手な性格だから、ちょっと心配してたんだ」「まぁ、オールOKなのかしらー!何にも心配ないのかしらー」「よし、それじゃあ、卵焼きいっぱい作ろうね!」「あ、みんなの分も作るのかしらー!」
「みんなお待たせかしらー!ちょっと先生に呼び出されてて・・・」「あ、金糸雀だー!」「あら、この子も呼んだの?」「そうなんですー。教室で蒼星石とこの話をしてたら、どうしても来たいってしつこかったんですぅ」「・・・」「え?あの・・・」「まぁいいじゃない。多いほうが楽しいわぁ」「・・・もぐもぐ」「あ、薔薇水晶!食べるのはいただきますしてからなのー!」「ふぅ、まぁどうでもいいわ。それじゃ、いただきましょ」「そうですいただきますですぅ!」「いただきますなのー!」「・・・い、いただきますかしらー」「はぁい、ヤクルト配布よぉ」「あら、気が利くじゃない水銀燈」「金糸雀もはぁい、これ」「え、でも、水銀燈の分・・・」「私は教室に行けば予備があるからいいわ」「うん、ありがと・・・カナが、いきなりきちゃったから・・・ごめんなさいかしら・・・」「あー!蒼星石のサラダおいしそうなのー!ヒナの練乳苺と交換しよーなのー!」「うん、みんなも食べて」「真紅・・・から揚げ・・・シウマイ・・・」「交換したいの?まぁいいわ、はい」「チビ苺!タコさんウインナやるから翠星石にも練乳苺をよこすです!」「あ、カナも卵焼きをたくさん作ってきたのよ。自信作かしらー!交換するかしら」「いらないわ。あなたの卵焼きは甘すぎるんですもの」「え、あ、そっか・・・真紅は甘いのあんまり食べないもんね。水銀燈は?」「私も甘いのはちょっとぉ・・・」「ヒナは苺があればいいのー!」「・・・シウマイこそ、人類の偉業・・・」「みんなひどいですぅ、翠星石はいただくですよ」「翠星石・・・」「ぱくっ、もぐもぐ・・・ふむふむ・・・ま!!ぺっぺっ!まっずいですぅ、人類の食べ物じゃないですぅ」「え、そんな・・・」「翠星石、そろそろやめときなってば」「こんなもので人のおかずと交換しようなんて、おこがましいにも程があるですぅ」「そんなはずないわ!みっちゃんとカナで一生懸命作ったのに・・・」「あーあ、金糸雀なんか呼ばなきゃよかったですぅ。口直しにから揚げ頂戴です真紅」「・・・うぐ・・・うぅ」ダッ!「待って!金糸雀!」「な、何も泣くことないですぅ・・・これだからチビチビは・・・」
タッタッタッタ・・・「金糸雀!待って!金糸雀!」「はぁ、はぁ・・・ぐすっ・・・はぁ・・・」タッ・・・「はぁ、はぁ、ごめん、金糸雀・・・」「ふぅ・・・な、なんのことかしらー。カナは何にも気にしてないのかしら」「僕が、もっと早く翠星石を止めてれば・・・ごめん」「きっとホントに卵焼きがまずかったのよ。翠星石は悪くないかしら」「・・・」「あ、しまったかしら!?屋上にお弁当箱置いてきちゃったかしら!」「・・・あとで、夜にでも届けるよ、忘れ物として」「そうしてくれると助かるかしら。お弁当箱が無いと、みっちゃん変に思うから」「うん・・・」「まったくみっちゃんは心配性で、お弁当作るときも付きっきりで」「・・・」「お砂糖の分量とか・・・卵の巻き方とか教えてくれて・・・ぐすっ」「・・・ごめん」「一緒に・・・一生懸命・・・みんなに・・・うぅ、ぐすっ・・・うぅ」「ごめん・・・」
「泣いてたこと、みっちゃんには言わないでほしいかしら。心配、かけたくないから」
ピンポーン「はーい、今出まーす」がちゃ「はい・・・あら、薔薇学の・・・カナのお友達?」「はい。金糸雀がお弁当箱を教室に忘れてるの見つけて、届に来ました」「あらそうなの?わざわざありがとね。あなたが翠星石ちゃん?」「いえ、翠星石は姉のほうで、僕は蒼星石っていいます」「僕?あれ?女の子・・・よね?スカートだし」「ふふ、よく男っぽいって言われます」「美少年て感じよね。でも、よかった」「え?」「カナが、友達いっぱいって言ってたの、嘘じゃなくて」「・・・えぇ」「昨日は大はしゃぎだったのよ。今日の朝、お弁当作るときも」「・・・」「今日は帰ってきてすぐ寝ちゃったけど・・・学校で、何かあったりしないよね」「・・・えぇ、大丈夫です。金糸雀を嫌いな人なんていません。みんな、仲間ですから」
「(蒼星石がお弁当箱届に来てくれたのかしら・・・大丈夫だよね)」「(・・・あ、そういえば・・・あのお弁当箱・・・)」「(洗うときに中を見たら・・・卵焼きがいっぱい残ってるのを見たらみっちゃん・・・)」「みっちゃん・・・」「あらカナ、今蒼星石ちゃんが来てくれてたのに。ほら、お弁当箱届けてくれたのよ」「あの、みっちゃん・・・」「明日ちゃんとお礼言いなよ。じゃ、洗い物するよ。お料理したら洗い物までして一人前だからね」「あ、待ってみっちゃん!」「あら?カナ・・・全部食べるなんて、流石じゃない」「あい?あれ?どうなってるのかしらー?」「さ、明日もお弁当作るんでしょ。ちゃっちゃとやるわよ!」「サーイエッサーかしらー・・・?」
「はぁ、今日も大量に卵焼きを作ってきてしまったかしらー。・・・みっちゃんには心配かけられないものね」「ちょっと蒼星石!押すなです!」「いいから早く!」「う、えー、金糸雀!ちょっと来るです!」「あぅ、翠星石・・・き、昨日のことなら、全然気にしてないのかしら!」「うん、そのことで翠星石が謝りたいって、昨日泣きついてきてね」「泣きついてなどいないですぅ!・・・その、昨日は少々やりすぎたですぅ」「そんな、あれはカナの卵焼きが・・・」「バカ言うんじゃないこんちくしょうです!」「ビクッ!な?え?」「あの卵焼きは昨日帰ってから翠星石が全部いただいたですぅ。なかなかの美味でしたですぅ」「え、じゃあ・・・あれは翠星石が・・・」「それで今日は翠星石も真似して作ろうと思ったのですが・・・こんな黒こげになってしまったですぅ」「こ、これは食べたら、癌で即死かしらぁ・・・」「やっぱり金糸雀レベルの至高の卵焼きを作るには、達人の技が必要ですぅ」「ふふ、で、実は僕ら今日、この消し炭のような卵焼きしか食べるものが無いんだ」「そうなのです。つまるところ、今日も卵焼きをいっぱい作ってあるなら、食べてやらないこともないですぅ」「えっと、今日もカナおとっときの卵焼きは大量発生かしらー」「昨日のことは・・・許してくれるですか?」「・・・許すも何も、仲間のことを怒ってなんかいないのかしらー!」「金糸雀・・・な、仲間とか恥ずかしいこと言うんじゃないです!」「ふふ、じゃあ屋上へ急ごう!みんなが待ってる!」「かしらー!」
「えっと、あの、今日も甘い卵焼きなんだけど」「昨日翠星石が全部卵焼きたべちゃったのー!ヒナも食べたかったのー!」「そうね、体育の後で疲れてるし、甘い卵焼きがちょうどいいのだわ」「はぁいヤクルト、今日はちゃんと全員分あるのよ」「卵焼き・・・シウマイ、あげるから・・・」「みんな・・・こうなったらみんなで交換し放題かしらー!翠星石も蒼星石も早く食べるのかしらー!」「まぁ、元気になってよかったですぅ」「なかなかの褒めっぷりだったよ。やればできるじゃない」「う、うるさいです!あれは、まぁ、仲間だから・・・」「あら、なかなかおいしいじゃない。明日からも作ってきてちょうだい」「もぐもぐ・・・美味・・・もぐもぐ」「あー!薔薇水晶!食べながら喋っちゃダメなのー!」「そんなにおいしいのぉ?私も頂こうかしら、どうしよう・・・」「水銀燈も食べるのー!水銀燈はやせてるから大丈夫なのー!」「ちょっと聞き捨てならないわね雛苺。水銀燈はってどういう意味なの」「ちょっと静かに食べれないですか!今卵焼きの秘術を聞き出すところです!」「あ、僕も聞いておこうかな。いや、むしろ今度一緒に作って教えてよ」「え・・・うん!任せるのかしらー!!」
みっちゃん、カナは幸せよ。なんたって薔薇乙女一の頭脳派だもの。それに、素敵な仲間がいるから。何も心配することなんてないのかしら・・・
おしまい。
このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー と 利用規約 が適用されます。
1文字以上入力してください
本文は少なくとも1文字以上必要です。
1文字以上入力してください。