『冥福』
爺さんSS投下「冥福」蒼「お爺さん、大丈夫?」元「ふぅ、歳は嫌なもんじゃなぁ。」其処の爺さんは、イナバウアーを真似しようとして、足を180°捻った元治と言う爺さんである。蒼「お爺さん、歳何だから無理しないで、ね?」元「わしがもっと若ければなぁ・・・そうだ!、今度男友達を連れてきなさい。」蒼「?一体何を?」元「今の若者に、本当の恐怖と奴を、教えてやるのじゃい。」蒼(・・・大丈夫かなぁ。)そう言った次の日。蒼星石はジュンを連れて来た。J「なんだい?爺さん。」元「まぁまぁ、若いの其処に座りなさい。」蒼「僕は?」元「ふむ・・・まぁ聞いてても差し支えないじゃろ、座りなさい。」そう言うと2人を居間に座らせた。元「では話そうかの、少々言葉使いが変でも、気にせんでくれ。」そう言うと元治爺さんは話を始めた、話を始めたときの形相は、まるで鬼神のような、皺が額によったような顔になっていた。元「今から少し前の、戦争のときの話じゃ・・・」その顔を見た時から、2人は爺さんの世界に引き込まれていた。元「昔は劣戦続きでな、まともな武器も無かった。」元「そんな時、上司が酷い奴でな、ジャングルに何か居るかも知れないから、探って来いって言った。」元「その時、わしは15~6で、サブマシンガン一丁しか持って無くてな、死ぬかと思った。」元「しかし、行かなければどうせ死んでしまうので、行くことにしたよ。」元「まさか、あの時感じていた恐怖が、あんなのだとも知らずにな。」其処には、何時もの様な朗らかでひょうきんな、何時もの爺さんの面影は無く。まるで、地獄以上の物を見たような顔だった。2人は、一つ一つの言葉を、聞き逃さないように、じっくり聞いていた。」元「何時も、戦場が近くなると恐怖が、其処も知れずに湧いてくるんじゃよ。」元「しかしな、可笑しな事に、死に対する恐怖は全くないのよ。」元「そして、一人でジャングルに入ったとき、ふと銃声が聞こえて、見回すと敵兵がいるわけだ。」元「敵は完全に怯えきっていて、銃をこっちに向けていた。」元「こっちも、唯でやられる分けには、いかんからな銃で応戦するんだが。」元「暫く打ち合いをしていると、たまに当たりそうな所に、相手が出て来るんだが、其処には一発も撃てんのよ。」元「そして、暫くして落ち着きを取り戻すと、指が相手に当たりそうな時だけ、止まっちまうんだよな。」元「それも敵は同じだった。」其処まで聞いていて、爺さんは一息つくとこう言った。元「分かったのよ、その恐怖の正体が。」元「それは、殺されるのじゃなくて、殺す恐怖だった。」元「その後、上司が来て、敵は撃ち殺されたが、あの感覚は消えることが無かった。」元「その2日後だよ、其処から北海道近くに逃げたのは。」元「逃げる時、私は、てっきり撃ち殺されたのかと思われていた。」元「逃げる時は楽だった、追走者も敵もいなかったんだから。」元「そして、その数年後、戦争は原爆によって終結した。」元「しかし、わしは嬉しかった、あんな人を殺す恐怖に駆られて生きるより、数倍楽だったしのぉ。」其処まで言うと、ジュンは爺さんに質問をした。J「爺さんは、結局人を殺したのかい?」元「いいや、結局殺さずじまいじゃ、しかしあの青年は、結局わしが殺したようなもんじゃ。」J「そうか・・・他にも逃げた奴っていたの?」元「山程居たよ、皆最初の数週間粘るんだがな、どうしてもよく分からない恐怖から、逃げちまう。」元「情けないもんだよ、鬼畜米英か・・・、わしは入団した当時は、アメリカを憎んでいたが、あの恐怖の前ではどんな硬い意思も、流されちまう。」蒼「お爺さんはその後、如何したの?」元「数年後に、一所懸命勉強をして、良い大学に入ったよ。」元「今考えれば、あの戦争ほど馬鹿な物は無かったな、なんせ仲間は人を直接殺そうなんて、一人も考えてなかったんだから。」そう言うと爺さんは、深々とため息をついてこう言った。元「しかし、忘れないで欲しい、こんな馬鹿なことを考えないようにな。」元「この話は、戦争を非難するのではなく、戦う闘争本能について、言いたかったんじゃ。」元「人間は残虐だというが、動物と余り変わらん。」元「人は、人をある程度、傷付けようとしたりする奴もいるが。」元「本能的に人を殺そうとするのは、人ではなく人の型をした、化け物だってことを。」そして爺さんは、2人に幸せになれよと言うと、部屋を出て行った。J「・・・爺さん。」蒼「・・・ジュン君、話を聞いてくれて有難う。」J「・・・ああ。」蒼「お爺さん、実は彼氏に相応しい人にだけ、この話しをするって言ってたんだ。」J「そう・・・だったのか。」蒼「うん、きっと人を殺めずに、幸せにして欲しいって、意味で言ってるのかも。」J「蒼星石・・・愛してる。」蒼「ジュン君・・・有難う。」それを隣の部屋から、聞くものが一人。元「・・・どうやら若いのは、本当の意味を分かってくれたらしい・・・」元「・・・蒼星石を頼んだぞ、桜田ジュンよ・・・」そう言うと、元治は自分の部屋に上がって行った。J「今度は、何処に行く?」蒼「そうだね・・・映画がいいな。」J「それじゃあ、映画にでも行くか。」蒼「うん!」そして、2人は外に散歩をしにいった。その1週間後、爺さんは亡くなった。衰弱死らしい。爺さんは、相当身体を酷使していたようで、あんな状態で話せるのは、余程強靭な精神力の持ち主のみ、だそうだ。爺さんは死期を悟っており、遺書にはこう記されていた。財産の3分の2を双子に、3分の1を桜田ジュンに寄贈すると・・・その後、ジュンは遺書に記されていた、ジュンよ蒼星石をよろしく頼む。と言う言葉を受け墓の前で無言の敬礼をし、鎮魂歌を捧げ。まるで、自分の親友のように、こう言い放った。J「・・・爺さん、あんたは死じんじまったが、幸せに死ねたか?」J「・・・あんた、幸せもんだな、いい家族に囲まれて。」J「爺さん、短かったがあんたの話、為になったよ有難う。」そう言って長い長い合唱をし、帰路に着いた。ジュンはその後、電車の中で一人こう呟いて、帰っていった。J「爺さん、僕は蒼星石に、一生を捧げよう・・・」と。
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