蒼J物
推奨BGM:多夢「やさしい雨」・「花時」
僕は今、錆付いたような公園で、遊んでいる。単なるかくれんぼだが、彼女は気が付くかな?
蒼:ジュン君・・・一体何してるんだい?J:ばれたか・・・ダンボール箱を被っているんだが蒼:ダンボール箱?なぜそんな…J:わからない。だがこの箱を見ていたら無性に被りたくなった。J:いや、被らなければならないという使命を感じた。蒼:・・・大丈夫?J:ああ。そしてこうして被ってみると、これが妙に落ち着くんだな。J:うまく言い表せないが、いるべきところにいる安心感を感じるんだ。蒼:流石元引きこもりだね?・・・疲れちゃった。
蒼星石がダンボールの上に乗り、ダンボールがミシミシと音を立てる。蒼星石は、クスクス笑っている様だ。
J:・・・上に乗るの止めて?蒼:親に懺悔はすませたか?神様に感謝は?蒼:僕の家の中でガタガタふるえて、僕の父親に自分を紹介する、心の準備はOK?J:それは、誘ってるのか?蒼:フフッ・・・さぁね?
蒼星石が降りた。その瞬間いきなり、ジュンがダンボールを破って、蒼星石に抱きつく。いきなりの行動に、蒼星石が驚いて、小さな悲鳴を上げた。
蒼:ひゃっJ:その回答は、YESだ。蒼:そろそろ、帰ろうか?J:ああ、眠くなってきた。蒼:明日は、GWだから、何処行こうか?J:貴女が居るなら、何処でもお供します。蒼:クスクス・・・有難う、それじゃあ帰ろうか。J:ああ。蒼:・・・手、繋いでいい?J:当たり前だろ?コイビト何だから。蒼:有難う・・・暖かいね、ジュン君の手は・・・J:・・・お前の手も柔らかくて・・・暖かくて・・・蒼星石が隣に居るんだなぁって、感じるよ。蒼:ジュン君・・・有難う、君に始めて会った時を思い出すよ・・・
徐々に顔が赤くなっていく・・・
J:ああ、あの時は・・・取り合えず、酷かった。蒼(徐々に目が潤んきている・・・):ジュン君、ちょっと良い?J:・・・ああ。
蒼星石が、胸元で泣きじゃくってるのが、声や、息遣い、暖かさから分かる。
BGM:多夢「過ぎ去りし日々」「Dilemma」
・・・余りに悲惨な、昔の話だ・・・その頃、蒼星石はこのコンプレックスに悩んでいて、虐められるたびに、リストカットを繰り返していた。酷い話だ、苦痛に会っているのに、みんなの前では気丈に振舞って・・・僕はある日、蒼星石が休んで、言付けを持って行った所から、彼女との関係が始まった。・・・始め見た時と言ったら、彼女は一人でリストカットをする瞬間だった・・・よく見たら、手首はリストカットの跡が無い所が、無いほどボロボロで。制服の上からじゃ分からないが、寝巻きだと全身がやせ細り。身体が食べ物を受け付けないほど、心身共に満身創痍だった。彼女は血糊のべったり、付いたカッターで「来るな、くるなぁぁ!?」と喚いていた。ソレを見た瞬間、僕は今まで如何してコレに、気付けなかったんだと嘆いた。僕は、思わずナイフを手で掴んだ、多少の血が流れたが、気にも留めなかった。彼女は、恐慌状態だったらしく、カッターを離して、ただひたすら呻き続けていた。彼女を抱きしめ、ひたすら謝り続ける彼女に、もう謝んなくていい、悪いのはお前じゃないんだよと言い落ち着かせ、救急病院を呼んだ。彼女は、過度の栄養不良と貧血で、生きていたのが奇跡に等しい位だったらしい。その日から、僕は学校に行くのを止め、蒼星石の姉の翠星石と一緒に看病を続けた。彼女への償いのつもりだった、学校の奴らはその後、虐めた奴が御礼をさせようとしたが、先生が今は思い出させるとヤバイ、と全部を返していた。翠星石は、気が付かなかったと言っていた、思わず殴りそうな衝動に駆られたが、殴っても何も変わらない、と言い聞かせた。彼女と接していくうちに、彼女も僕に慣れ、少しづつしかし、確実に治っていった。蒼星石は最初は、蒼星石の家族や僕に、何で殺してくれなかった!と言っていたが、全部を受け止めていた。それから、約3年後・・・長かったが短かった、彼女は未だに僕と肉親以外の人には、少々の恐怖心が残り、後はなんでもない生活を送っていた。彼女は、僕が付きっ切りで世話をする事になり、彼女もそれが良いと言っている。
BGM:多夢「面影」「引越ししてから」
蒼:・・・有難う、久しぶりにスッキリしたよ・・・J:ほら、此処に涙が・・・
そう言うと、ジュンは蒼星石の頬の涙を舐め取った。
蒼:!?J:・・・帰ろうか・・・今日は冷えるから。蒼:・・・有難う、これからもお願いできる?J:ああ、何なりとお申し付けください。
そう言って、2人の影が夕日に飲まれ、消え失せて行った。
後日談
僕等は、その後誰も居ない、静かな高原に行ってきた。とてものどかな所で、居る人も物静かな、喧騒をしら無そうな、そんな人たちばかりだった。特にする事も無いような、たまに息抜きには良さそうな所。蒼星石は言った、此処の人は、とても穏やかで、とても楽しそうだと。彼女は、もう直ぐ立ち直るだろう。森羅万象、時間には勝てないか、大した言葉だ。彼女のトラウマが癒えるのも、時間の問題だと思う。此処にきて、本当に良かったと思う、今心からそう思える。
蒼:ジュン君、何を書いているんだい?J:日記さ、見る?蒼:けど、今は、この景色を絵描きたい所なんだ、後で見せて見せてもらえるかい?J:ああ、いいよ。蒼:ジュン君・・・今まで本当に有難う、もし良かったら・・・その・・・付き合ってもらえる?J:ああいいよ・・・僕は君を、二度とあんな目には合わせない・・・蒼:ジュン君・・・有難う、それじゃこの絵を描いちゃうね?J:ああ、待ってるよ。
蒼星石・・・僕は君をこの命に代えても、守ってみせる・・・
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