三日目-4
ジュン「おっ、意外とイケる」紅「ここのピラフは、とっても美味しいわね」私達は盗賊のアジトを模したレストランで、お昼ごはんを食べていた。こうしていると、今は修学旅行だって事を忘れてしまいそうだ。私がピラフをスプーンで口に運んでいると、ジュンが私に向かって言った。ジュン「……真紅は、どこか行きたいとこでもあるか?」紅「そうね……」私は頭の中で思案をめぐらせる。私はジュンと居られればそれで満足だけど……さすがにそれを面として言うのはかなり恥ずかしいわね。けど、ここでジュンに気を遣わせてしまうのもいけない。どうしようかしら……。そうだ。……普段の私なら絶対に言わない事だけど、これならジュンに気を遣わせなくてもすむわ。紅「別に、目的地を決めなくてもいいじゃない。時間はまだあるのだわ。気の向くまま風のままに楽しみましょ」ジュンはちょっと驚いた表情をしている。確かに、普段の私なら物事の計画をきっちり立ててその通りに進めていく。まさか私がこういうことを言うとは、予想もしていなかったんでしょうね。それでも、ニコリと笑い、そうだな。と言ってくれた。
そして、午後はいろいろな所を見て回ったのだわ。変な宇宙飛行士の宇宙漂流記を私たち視点で楽しんだり、蟹の様な髪型の人が真っ赤なバイクに乗って疾走するのを携帯で撮ったりした。赤帽子の髭の人と記念撮影をした時なんかは、ジュンの顔が何故か引きつってたわ。
途中でベジータやウルージ君、笹塚君と遭遇した。笹塚君以外の二人は、お世辞にも可愛いとは言えないネコ耳の被り物をしていたわ。そこでまたもやベジータが、またもやセクハラ一歩手前の発言をしたので、鉄拳を叩き込んでやる。全く、いい加減学習したらどうなのよ……
三人と別れた私たちが他のアトラクションを楽しんでいると、こんどは薔薇水晶と仗助君に遭遇した。薔薇水晶は仗助君の腕に抱きついている。仗助君もまんざらでも無さそうだ。二人ともおそろいの腕輪をしている。むぅ……ちょっと羨ましいわね……私とジュンもおそろいの勾玉をつけているから、似たようなものだけど。みんなでとりとめのない話をして、ジュンと私はじゃあ、と手を振って別れた。あの調子なら、これからも上手く行きそうだ。
その後は水銀燈たちにも会った。翠星石と雛苺、金糸雀がやたら満足げな表情を浮かべている。が、蒼星石はくったりとしていた。どうしたのと私が聞くと、どうやら無理をしすぎたらしい。翠星石に付き合って、何度も絶叫マシーンに乗ったんだって。水銀燈はワゴンで売っていたアイスバーを舐めていた。やたら扇情的で、近くの男達がちらちらと水銀燈の方を見ている。とても汚い光景だ。雪華綺晶は近くのお店で買ったクッキーやらなんやらをぱくついている。こんなところでも食い気が先行する雪華綺晶は、サバイバルで一番最後まで生き残りそうな気がする。 私たちは、みんなからのからかいと冷やかしや大きなお世話な質問を受け流しながら、水銀燈たちとも別れた。
その後は、お土産を見に行ったのだわ。私とジュンでさっきベジータ達がつけていた被り物を買う。ジュンは『カートゥーントラベラーズ』に居たクマの耳を、私はチューチュー可愛いネズミの耳を着ける。そして二人で、ハイ、チーズ! 私の携帯に写真を収める。ふふ、結構可愛く撮れたわね。
……いつのまにか、あたりは暗くなっていた。
楽しい事って、本当にあっという間だわね。けど、このテーマパークが一番楽しいのは夜だ。これから色取り取りの光で飾られたフロート車が園内を回るパレードがあるようだ。生で見た人の話だと、とっても綺麗らしいわ。
その後はライトアップされた大きなお城の周りを、花火が打ちあがる。ああ、ロマンチックね……きっとうっとりするくらい美しいのだわ。
そして私とジュンは永遠の……ジュン「おい、おーい。」ジュンが私の目の前でブンブンと手のひらをかざしている。私ったら、またまたまたぼーっとしていたみたいだ。ジュン「どうしたんだよ?」紅「別に、なんでもないわ。あまりレディの考え事を詮索するものではないわよ」ジュン「ふ~ん……大方、ロマンチックな妄想にでも浸ってたんだろ。」紅「なっ……!」……どうして分かるのよ。本当にジュンは私の心が読めるのかしら。私は恥ずかしさをかき消すように、ジュンをぽかぽかと叩く。ジュン「はははは、図星かよ。僕って冴えてるなー」紅「……」ジュン「ちょ、痛い痛い。……ねぇごめんごめん! 僕が悪かったよ!」目の前には土下座で詫びているジュン。
確か、前にもこんな光景……あったわよね。デジャブかしら?私たちがこんな馬鹿なことをやっていると、遠くから楽しげな音楽が聞こえてきた。向こうの方から電飾に覆われてピッカピカに光っているフロート車がゆっくりと走ってくる。ジュン「おっ、始まったな」紅「……みたいね。とても綺麗なのだわ」どうやらパレードが始まったようだ。なんだかウキウキしてきたわ……私とジュンは、煌びやかなパレードの方へと足を進めていった。
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