一日目-2
私たちを乗せたバスは、最初の目的地『白蛇山地』に到着した。ここで、白蛇山地の紹介をちょっとだけ。(パンフレットから適当に抜粋しただけだから、私の知識ではないのだけれど……許して頂戴)白蛇山地は、昔ながらの豊かな自然が残っている珍しい場所。世界遺産に登録されているのだわ。綺麗な水と滅多に見る事の出来ない石、それに『白蛇伝説』で観光客を集めているのだわ。お土産で有名な『白蛇飴』はその仄かな甘みが大人気だ。
紅「んん~~……」銀「ああ~~~!」私たちは大きく伸びをして、バスから降りた。太陽の柔らかな光が私たちの肌を包む。とっても暖かくて、いい気持ちなのだわ。目の前には、ドラマでしか見たことが無かったような、昔ながらの自然が広がっている。そして、目の前には大きな『白蛇』の看板。蒼「白蛇は幸運の象徴と言われているんだ。抜け殻を見つけた人は、願いがかなうらしいよ」銀「どこで知ったのぉ?」蒼「この前、テレビで見たんだよ」翠「ほぁ~~……。蒼星石は良く覚えてるですぅ」……一つ欲しいわね。これで私の唯一のコンプレックスである『微乳』を『美乳』にしてやるのだわ!ジュン「真紅、今一つ欲しいとか思ってただろ」紅「なっ……何でそれを!?」ジ……ジュン! どうして私の考えが分かったの?まさかエスパー? 私の頭の中に、銀色のスーツを着て、スプーンを曲げているジュンが頭に浮かんだのだわ。私はそのイメージをブンブン首を振ってかき消す。
ジュン「……僕はエスパーじゃないぞ。お前の顔を見てたらベジータでも分かる」紅「……くすん」私……考えてる事が顔に出ているみたいね。直せるように努力してみようかな。金「早く来るかしらー! 真紅にジュン!」苺「みんなを待たせるのは良くないのよ~」ジュン「やばっ! 行こうぜ」紅「ええ、急ぎましょう」金糸雀と雛苺が私たちに向かって手を振っている。向こうを見ると、みんなが集合していた。どうやら、待たせてしまったみたいね。
梅岡「注意することはこれくらいだな。それではしばらくの間、自由行動にするぞ。好きにしろ!」梅岡先生の諸注意も終わり、めいめいが荷物を持って動き出す。ジュンがベジータに引っ張られていったので、私は水銀燈たちと一緒に白蛇山地を回る事にした。銀「どこから見ていくぅ?」水銀燈がマップを広げ、みんなに提案する。こういう時リーダーシップをとってくれるのが、ありがたいわ。雪「ここはどうでしょうか?」雪華綺晶がマップの左端を指差す。なになに……『白蛇の湧き水』。お肌がすべすべになりそうね。……ここから歩いてすぐみたいだ。薔「……私は賛成」蒼「僕もそこが良いなぁ」銀「それじゃ、『白蛇の湧き水』に行きましょう」全員「おー!」
『白蛇の湧き水』には、歩いて五分ほどで到着した。白蛇を象った歴史を感じさせる石像の口から、滾々と水が湧き出ている。石像の周りは木で囲われており、木漏れ日がきらきらと辺りを照らしている。見ていて、どこか落ち着く風景だ。翠「綺麗ですぅ……」苺「きらきらしてるのー!」雪「美しいですわ……」みんなもその風景に見とれていたようだ。しばらく私達がそのままで居ると、金糸雀が口を開いた。金「あそこに看板があるわ、行って見るかしら!」金糸雀が見た方向には、苔むした看板が立っている。何が書いてあるのかしら? 私たちはその看板の所まで行ってみることにした。薔「……湧き水について書いてある」蒼「白蛇伝説のことも載ってるよ」白蛇伝説……。ここで私の口から簡単に説明しておくわね。パンフレットの受け売りだけど、気にしたら負けなのだわ。【昔、この山を治めていたお姫様が居ました。お姫様はとても美しく、まるで白い蛇のようだったので『白蛇姫』と呼ばれていました。あるとき、お殿様が白蛇姫をお嫁さんにしようと、この山までやってきたのよ。だが、白蛇姫はお殿様の求婚を断ったのだわ。それで怒ったお殿様は白蛇姫を切り殺したの。そしてそれだけではなく、その死体を焼いてしまったのだわ。しかし、白蛇姫の死体は真っ白な蛇に変わり、今でもこの山で生きている……】という話。全く、酷い話よ。
雪「この水……とても美味しいですよ」雪華綺晶が湧き水をすくってコクコクと飲んでいる。私も雪華綺晶に習って湧き水を飲んでみた……これは……なんと気品溢れる水なのだわ……。紅「美味しい……」銀「本当? 私も飲んでみるわぁ」水銀燈も水を掌で掬い、水を啜る。銀「とっても美味しいわぁ! こんな水飲んだ事ないわ!」翠「ええ!? 翠星石にも飲ませるです!」金「カナにも飲ませてほしいかしらー!」苺「ヒナもおみず欲しいのよ!」噴水に駆け寄った翠星石たちも、白蛇の湧き水をゴクゴクと飲んでいる。翠「うめぇですぅ!」金「こ……これは爽やかかしら!」苺「うんまぁぁーーーい!」口々においしいと言う翠星石たち。蒼「この水……美肌の効果があるみたいだよ」薔「……お肌がつるつる」看板をずっと見ていた蒼星石と薔薇水晶がそう言った。あら、それは本当?二人が飲み終わったら、もう一回飲んでみようかしら。……ん!?目の前に白い蛇の姿が見えた……気がした。
紅「あれは何?」銀「あれってぇ?」水銀燈が手をヒラヒラ振りながら、気だるそうに答えた。紅「さっき、白い蛇が見えたのだわ」銀「気のせい気のせい。あの伝説は迷信よぉ、真紅」翠「どこにもいねーじゃねぇですか。白い木の棒でも見間違えたんじゃねーですか?」紅「……そうかもしれないわね。ごめんなさい」翠「別に謝るこたぁねーですよ」え? じゃあさっきのは……?やっぱり気のせいだったみたいね。美乳になれると思ったのに……。蒼「みんな、そろそろ白蛇の里の方にも行ってみない?」蒼星石がマップを指差して言った。白蛇の里……土産物も買っておいた方が良いわね。テレビ番組で何度も紹介されている名産品、『白蛇飴』も食べてみたいのだわ。
翠「よっしゃー! 次は白蛇の里ですよー!」苺「レッツゴーなのー!」銀「何で二人共そんなにハイなの? お土産買うだけよぉ」薔「綺麗な水晶……売ってるかな?」蒼「ここで採掘される紫水晶はとっても綺麗って聞いてるよ。しかもご利益つき」金「ほほう……一つ買っておきたいかしら」雪「私は『白蛇飴』を食べてみたいですね」私以外の全員が、白蛇の里に向かって歩き出した。私はもう一度だけ白蛇の石像の方を振り向いた……そこは元のように静けさを取り戻していた。紅「白蛇は……。ふふ、やっぱり気のせいね」銀「真紅。突っ立ってると置いてくわよぉ」紅「……今行くのだわ」水銀燈が私を呼んでいる。私は後ろを振り向かずに、皆の所へと歩き出した。……なんとなくだけど、白蛇は今でもこの山に生きている。そんな気がした。
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