SEAVEN 第八話 「Like A Angel」
お元気ですか?とは言っても、空の上の君には届かないでしょうね。大変で、忙しい時期ですが、僕はなんとかやっています。君も知って、見ているだろうけど、空は結局開かれた。あの頃の僕らが目指した希望は、他の人が成し遂げたんだ。今はただ、それを祝福すべきなんだろう。恨むこともないし、後悔することもない。今は、警官ではなく、空への――地上の調査をする仕事をしています。給料や地位は上がったけど、僻地に飛ばされた感じはするね。でも、まだやりがいはある。それに、少なくとも潰した組織に命を狙われにくくなったしね。殺される心配は少なくともない。地上の状態が分かってないから、命の安全は保証されてないんだけど。いわゆる、金糸雀と言うわけだ。そうそう、空が開かれたことは、すでに全ての人が知っている。一部で、その事実を隠滅しようという動きもあったみたいだけど、とある方の力で、公のものとなったんだ。最初は暴動も起きたし、これは僕の管轄外なんだけど、終末思想も広まった。今はある程度沈静化しているけどね。でも確実に、世論は地上への移住に賛成という意見に傾き始めている。多分、止められないだろうね。誰にも。これは。彼らの残した希望は、世界中で萌芽したみたいだ。そして、彼ら――桜田ジュンと結菱蒼星石の二人の行方はいまだに分かっていない。壊れたピエロと、少量の血痕を残して、消えてしまった。人々にとってはある種の英雄かもしれないけど、警察の立場としては捉えざるを得ないだろうから、僕としては複雑な心境だ。帰ってきて欲しいし、このまま見つからない方がいいのかもしれない。でも、彼らはどこかできっと生きている。そんな気がするんだ。もしも、この調査の結果、空の汚染が人にとって十分許容量だったのなら、少しずつだけど、世界はシフトしていく。でも、この調査は少なくなくとも2年。そして、移行には10年以上の年月がかかるだろうから、まだまだ先の話なのかも知れない。人々が、解放されるのはいつのことになるかは、神のみぞ、いや君みたく言うと、天使のみぞ知る、だろう。少年だった僕は、いつの間にか大人になり、君を置いていった。夢を見ていた後遺症に長い間、犯されてました。ただ我武者羅に生き方を探していたころには、夢を不必要だったのかと思った夜もある。そのたび、僕の中の罪を犯した捕食者が首を上げました。傷つけてきた人々の亡骸を強く抱きしめてみても答えなど見つからなかった。いっそのこと、手に持ったピストルで、頭を撃ち抜いてしまいたかった。でも、できなかった。君が残した、僕の中の忘却の空。それがここに繋ぎ止めていた。輪廻。待っててよ。あとで行くよ。君の残したものを、次に繋げてから。それまでは、空を漂う飛行船から、見下ろして下さい。――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――その真っ白な封筒の中には、柔らかな文体で書かれた手紙が入っていた。その封筒を、彼は一つの墓の前に置く。彼は、煙草を咥えたまま、黙祷を捧げた。その時、一陣の強い風が吹いた。手紙をさらって行く。まるで、彼の大切だった人へと運ぶように。気高い丘。その先端に墓はあり、そこから望む風景は遠くの海まで見渡せた。そこに大きな樹はない。ただ、腰元まで伸びる草が生い茂っているだけだった。その草は、風にそよぎ揺れ、すぐそばの空を撫ぜる。今は太陽が高く昇り、全ては蒼く輝いていた。「また来るよ」彼は、一言残し、背を向け去った。どこからか風に乗り、一枚の葉が届く。それは、彼のすぐ横を通り抜け、またどこかへと流れていった。第八話 「Like A Angel」了SEAVEN 完
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