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2-1 明けて、翌朝――仰ぎ見る青天に雲はなく、空気も凛然と澄みきっている。少しばかりの肌寒さを覚えるものの、それ以外には、さしたる問題はない。もしかして、運命の女神が前途を祝福してくれているのだろうか?そんな風に思いたくなるほど、旅立ちにはもってこいの、清々しい朝だった。 耳をそばたてれば、小鳥の囀りや、朝ご飯を待ちきれない犬たちの遠吠え……その他にも様々な――日々の営みによる、生活臭ただようリズムが聞こえてくる。町の息吹、とでも言おうか。それらは健やかで、力強い躍動感に溢れていた。 「んー。いい天気で、よかったわー」周囲の活気に触発されたらしく、みつが上機嫌にハミングする。 「本当に、気持ちのいい陽気ですね」 淡々と答えた巴も、満更ではない表情。これからピクニックにでも出かけるかのような、和やかムードの乙女たち。 ――しかし。 「待ってくれぇ……おまえら早いよぉ……」 重く恨めしげな声に縋りつかれて、みつと巴が脚を止め、振り返る。彼女たちの見つめる先には、陰鬱な表情でヨタヨタと歩いてくる人影が、ひとつ。誰あろう、ココロの樹を探して三千里の夢境を行く少年、桜田ジュンだ。 だが、その姿は、およそ主人公らしからぬ無様なものだった。身体を『く』の字に屈めて、巴から借りた竹刀を杖がわりにしている。宿の雑貨コーナーで、防寒と天狗を隠蔽するために買った安物の黒いローブが、微妙に老人くさい。それが彼のツンツン頭と相俟って、どことなく売れ残りの野菜を彷彿させた。 「なんだか、萎びたナスみたいよね」 みつの言葉に、巴は思わず噴きだしかけて、グッと息を呑み込んだ。「悪いこと言っちゃダメですよ。桜田くん、大丈夫?」 気遣わしげな面持ちで訊ねるが、巴の小さな鼻は、笑いを堪えてヒクヒクしていた。みつも、自分の冗談がツボに入ったのか、口元を手で押さえて肩を震わせている。そんな彼女たちの様子に、ジュンは憤懣やるかたなく声を荒げた。 「痛いんです。腫れてるっぽいんです。擦れると激痛が走るんです。 だぁーっ! 変な天狗の面と関わったばかりに、ナニもかもブチ壊しだ!」 ナニがなにを示唆しているのかは、さておき。さすがに、なにもかもは誇張しすぎだなと、ジュンは思い直した。 前屈みにならないと、歩くことすら、ままならないけど――巴の竹刀は割れてしまって、いまやジュンの杖になり果てているけれど――それでも、壊れなかったものは、確かに存在する。ひとつには、かけがえのない仲間同士の絆。そして、忌々しい暴れん坊天狗の面だ。天狗は今日も、ジュンの純潔を守っている。ありがたすぎて血の涙が出そうだった。 「……ごめんね。私の……せいだよね」 巴が、目深にかぶったフードの下で表情を翳らせ、俯く。ジュンの露わな憤りを目にして、罪悪感が胸中で疼いたのだろう。 「浅はかな思い込みを無理押ししたから、こんなことに」「いやいや、巴ちゃん。それなら、あたしにだって責められる事由があるわよ」 答えを急ぎすぎるあまり、度が過ぎてしまった感は否めない。ごめんなさい。みつと巴は揃って、神妙に頭を下げた。 それまでの晴れやかなムードが一転、お通夜のような暗澹たる空気に――こういう重たいのは苦手だ。ジュンは胸にあった苛立ちを押し潰して、2人に告げた。 「……いいんだ。僕こそ、怒鳴って悪かったよ。はずそうと努力してくれたのに」「でも結局、桜田くんを苦しめただけだったし」「あたしたちじゃあ、なにも解決できなかったものね」「だからって、落ち込んでばかりじゃ仕方ないだろ。もう済んだことだ。 気を取り直して、前向きに行こうよ。いつまでも悪いことは続かないって」 ニカッ! と新庄剛志ばりの爽やかスマイルを浮かべて、サムズアップ。ジュンなりの『元気ハツラツ』アピールだった。それを受けて、みつと巴にも、緩い笑みが伝播した。 「言うようになったじゃない。見直したわよ、ジュンジュン」「私……いまモーレツに感動してる。感激しすぎて漏らしちゃいそう」「漏らすのは感嘆の吐息だけにしてくれ」 巴の迷言をバッサリ一刀両断して、ジュンは顔を上げ、道の彼方を睨んだ。「よっし、レツゴー三匹。はりきって行くぞー!」 と、勢い込んで、一歩を踏み出したまでは良かったが――ビキッ! 「ぬぉお……ぅ」 下半身に電撃のような激痛が駆け抜け、ジュンは内股になって硬直した。そんな彼に手を貸すべく、みつと巴が歩み寄る。その表情にはもう、嗤笑はない。 「無理しないほうがいいって、ジュンジュン。 ヘンな意地はらずに、『お自動さん』たちに担いでもらうといいわ」 昨日の『お自動さん』は、日付が変わった時点で召喚解除されていた。そのため、利用するなら新たに契約しなおす必要があるのだが……ジュンは彼女の好意を、やんわりと断った。 「なんのこれしき。まだ、ぜんぜん大丈夫だ。歩けるうちは歩くから」 気遣ってくれるのは嬉しいけれど、ご利用は計画的に。多重債務の挙げ句に、ここぞの場面で利用停止なんて羽目はカンベン願いたい。それに、ジュンの男としてのプライドが、強い抵抗を示していたのもある。運命共同体の旅仲間であっても、助けられっぱなしは我慢ならなかったのだ。 町を後にして、街道を行くこと半日。一行は、田園地帯の一本道を進んでいた。牛のごとき歩みは、相も変わらず。ジュンの調子も、明け方よりは快復したくらいで、本調子には程遠かった。 「それにしても」一抹の不安から、ジュンが吐息する。「こんな状況で戦闘になったら、どうしたらいいんだ?」 大きな街道だとて、旅路の安全など、誰も保障してはくれない。夜盗に襲撃されるかも知れないし、モンスターが出没することも考えられた。そのとき巧く対処できなければ、呆気なく全滅の憂き目を見るだろう。 みつは女性だし、召喚師(サモナー)だからバックアップ要員。占術師(タロットマスター)の巴も、どちらかと言えば、前衛タイプではない。常識的にも、消去法で選んでも、やはり最前線はジュンが受け持つべきだろう。となれば、採れる戦法も、おのずと限られてくる。 「柏葉。これ、返しておくよ」 ジュンが囮となって敵を引きつけ、その隙に、巴とみつの連携で倒す。現状では、これが最も有効な戦い方に違いない。下手をすれば、ジュンが囲まれてタコ殴りにされかねないけれど、女の子たちを危険に曝し、怪我させるよりは、良心の呵責に苛まれなくて済む。加えて、男としてのプライドも、一応は保てると言うものだ。 差し出された竹刀を一瞥した巴は、フードを脱いで、小さく頭を振った。「ううん。それは、桜田くんが持ってていいよ」 前衛ならば、武器のひとつも装備していて当たり前。たとえ壊れた竹刀でも、徒手空拳よりは、ずっと心強い。 「僕としては、ありがたいけどさ……でも、柏葉だって困るんじゃないか?」 その問いに、巴は破顔一笑して、キュッと拳を握って見せた。「平気よ。竹刀がなくたって、戦えるから」 この状況にあって、なんと頼もしい一言だろうか。ジュンは期待と憧れに瞳を輝かせ、みつは妄想に胸をときめかせた。 「もしかして、合気道とかの経験者かよ?」「なになにー? 巴ちゃん、格闘技を習っちゃってたりするの? 一撃必殺のカラテ少女……くぅ~、凛乎としてカッコイイわあー。あたし妊娠しそうー」「いえ、あの。そんな絶賛されるようなレベルじゃなくて――」 はにかみながら、巴は「桜田くん、ちょっと」と、ジュンを立ち止まらせた。そして、馬飛びの要領で、ひょいとジュンの背中に飛び乗るが早いか、しなやかな両脚で、クワガタのように彼の胴を挟み込んで…………ぺし! ジュンの脳天に、やおら手刀を落とした。 一瞬にして凍りつく空気。いまの、なに? ジュンとみつが、眼で会話する。そこに、巴の消え入りそうな声が割り込んだ。 「空中トゥモエチョップ」「……あ? ……元彌? すまん、柏葉。よく聞き取れなかったんだが」「ごめん、巴ちゃん。あたしも聞き取れなかった。わんもあぷりーず」 さすがに、いたたまれなくなったのだろう。ジュンの背中から飛び降りるや、巴は2人に背を向け、しゃがみこんでしまった。「ううん……なんでもない。忘れて」 忘れろと言われても、少々、インパクトが強烈すぎた。生真面目のカタマリ魂みたいな巴が演じた、よもやの痴態――いや、狂言か?どうフォローしたものかと、ジュンたちが考えあぐねていると…… 「おーい。どうしたのかね?」 のんびりした嗄れ声が、車輪の回る音を伴って、彼らの背後から届いた。振り返ると、一頭立ての小さな馬車が近づいてくるではないか。馭者は、ハンチング帽をかぶった老人。オープントップの荷台に、貞淑そうな老女も見える。ジュンは思わず「あっ」と声を上げた。彼の顔なじみだったからだ。 「そっちの少年は、急病かい? なんだったら、町まで乗せてあげるよ」 少年だって? ジュンは咄嗟に、自分のことを言われたのだと思った。しかし、屈んでいるのは巴であって、彼ではない。ショートカットの後ろ姿だけ見て、どうやら彼女を、男の子と勘違いしたらしい。 真相に気づいたジュンとみつが噴きだすのと、巴が肩越しに振り返ったのは、ほぼ同時。その段になって、老人もやっと、自分の誤りを悟った。 「やややっ、娘さんじゃったか。これは失敬した」「いえいえー、お気になさらず。よく間違われてますからー」 などと軽い調子で人なつっこく答えたのは、みつ。あまりに素早い対応だったので、巴やジュンが口を挟む間もなかったほどだ。 「それは、ともかく」みつは、馬車に歩み寄って、ぺこりと会釈した。「ご覧のとおり、連れが急に具合を悪くしたもので、難儀してます」 なんの話だ。訊き返そうとしたジュンに、みつが目配せしてくる。巴は、彼女の意図を察したのだろう。タイミングよく苦しげに呻きだした。ワケも分からず、呆気に取られるジュンは、完全なおいてきぼり状態である。 「恐縮ですけど、ご厚意に甘えさせていただけたらと……」 なるほど、そう言うことか。ここに至って、ようやくジュンも得心した。2人の仲間は、彼のために、如才なく芝居を打ってくれているのだ。ならば、ジュンとしても、協力することに吝かでない。 「お願いします」言って、ジュンも御者台の老人に向かって、深々と頭を下げた。ほんの少しだけ、小賢しい生き方を学んだ気がした。 ~ ~ ~ 老人は、柴崎元治と名乗った。時計職人で、置き時計の出張修理をした帰りだという。荷台に乗っていた老女は、元治の妻。やはり、翠星石の祖父母だった。しかし、ここでは現実世界と異なり、向こうはジュンのことなど知らなかった。 「大変だったのねえ、本当に」巴の背中をさすっていた老女――柴崎マツが、みつのほうに向き直る。「お薬の持ち合わせを、スリに盗られてしまうなんて」 なにかと体調を崩しがちな老人にとって、薬がないのは怖ろしい状況なのだろう。同情に満ちたマツの表情にも、我が身に置き換えたときの不安が垣間見える。こちらの柴崎夫妻も、現実世界と違わず、思いやりに満ちた善良な人たちらしい。 「あたしたちにも油断があったとは言え、アタマきちゃうわよねー。 盛り場に不心得者が寄ってくるのは、世の常なんだろうけど」 みつの返事に、マツも「ええ、ええ」と、頻りに頷く。「私たちもねぇ、賑やかな街に出張するときは怖くて、気が気じゃないのよ」 「だから――」ジュンが、荷台の隅に置かれた無骨なモノを、視線で指す。「そんな物を積んでるのか?」 彼の言う『そんな物』とは、あまりにも有名な『バールのようなもの』だった。子供でも簡単に扱えるし、壊れにくく、そこそこ威力もある優れモノだ。老人の細腕で、盗賊やモンスターを撃退しようと思えば、妥当な選択だろう。どれほどの効力があるかはさておき、備えあれば憂いなし。 マツは悲しげな顔で首肯した。「必要悪よね。使いたくは、ないのだけれど」 それは当然だ。誰だって、理不尽な暴力に命まで奪われたくはない。ベジータに襲われたときのことを、ジュンは思い出していた。ならず者相手には、所持金を渡すだけで済まない場合が多々ある。本意でなくても、兇悪には対等以上の武力をもって抗う。それが最良の防御法なのだ。 「それならさ」と、ジュンは微笑して、みつと巴を順繰りに見た。「せめて僕らが同行してる間は、それを使わずに済ませてあげないか」 せめてもの恩返しに、護衛役を買ってでよう。ジュンの提案を受けて、2人の仲間も笑顔で頷いた。が、その直後! 「ぅわあっ!」 御者台にいた元治が、驚きの声をあげて、馬車を急停車させたではないか。ハッと腰を浮かせたジュンたちが視たもの――それは、驚いて竿立ちになった馬と、彼らの進路を塞ぐ異物の列だった。 「な……なによ、これ? マジックショーとか?」「知らん。いきなり、地面から突き出てきたのじゃ」「この辺りでは、よくある自然現象なのかも……」「どう見ても天変地異の類だと思うぞ、柏葉」 みつと巴の言を、元治とジュンが代わる代わるに否定する。しかし、彼らとて、その正体を説明することはできなかった。 「とにかく、取り除けるか調べてみよう。爺さんたちは、残ってなよ」 率先して、ジュンが竹刀を片手に、荷台から飛び降りた。この緊急事態に、股間が痛いなどとは言ってられない。 「これは……紫水晶っぽいな。なんだってまた、こんな物が突然?」慎重に近づいたジュンは、水晶の柱を竹刀で小突いてみた。硬質な手応えがあった。「やっぱり、本物の紫水晶だよ。幻影とかのフェイクじゃない」 彼を追いかけてきた巴とみつも、一様に首を傾げる。よもや、隕石みたいに空から降ってきたワケでもあるまい。柴崎老人も、地面から突きだしたと証言していた。 「簡単に撤去できるのかな? ちょっと試してみるね。えいっ!」 止める間もなく、巴が飛び蹴りをかましたが、水晶柱は頑として動かず。蹴った巴のほうが、足を押さえて、その場に蹲ってしまった。 「人力じゃ無理そうだな。この分だと、バールで叩いても砕けるかどうか」「しょうがないわねえ。借りすぎだけど、ここはイッシュ・カーンに……」「待て待て、みっちゃん。ご利用は計画的に」 やおら伝家の宝刀『¥ロッド』を掲げた召喚師を、ジュンが押し留める。しかしながら、彼にも、これといった名案はなかった。馬車を迂回させるにしても、路肩は両側とも水田。はまれば行動不能になろう。さりとて、老人たちを見捨てては行けない。引き返すのも、負けたみたいで嫌だ。 では、どうする――アイフル。途方に暮れていると……ククッ。含み笑いが、どこからか流れてきた。 「誰だっ! 出てこい!」 ジュンが叫ぶや否や、ひらり……水晶柱の頂に舞い上がる人影が!つられてハッと顔を仰け反らせたジュンは、そこに長い髪の女の子を見た。花弁を思わす、ひらひらした薄紫色のドレスを着た娘だ。左眼を、眼帯で覆っている。その娘は、ジュンたちを一瞥してニヤリと笑うと、からかうように歌い出した。 「とっおせんぼ、とおせんぼー。どうしましょったら、どうしましょー」「なんなんだ、おまえは?」 ジュンの誰何に、謎の眼帯娘はピンと立てた両手の人差し指を頬に当てて、ぶりっ子ポーズ。「いたずらウサギだぴょん」 はあ? ジュンは眉根を寄せた。彼女は、どうみても普通の女の子。ウサギだなんて、こちらを煙に巻こうとしての戯言ではないのか。けれど、昔話の『鶴女房』みたいに、人間そっくりに化けているのかも知れない。 「ちょっと、こっちに降りてきてくれないか。訊きたいことがあるんだ」「……いいよ。ぴょんぴょん……っと」 ふわりふわり。水晶柱の頂を跳ねてくる。じつに身軽な仕種だ。ジュンの前に降り立った彼女は、挑むように彼を見つめた。「なにが訊きたいの?」 「それは――どぅあ?!」話そうとした折りもおり、ジュンはいきなり、みつのタックルで真横に吹っ飛ばされていた。 「か……かわいいー! お持ち帰りしたいぃーっ!」「わ、私も……だっこしたい」「みっちゃんモチツケ! 柏葉も、なに血迷ってんだ!」 自称いたずらウサギに抱きつく乙女組のアタマを、ジュンのゲンコツが薙ぎ払う。「おまえら、少しアタマ冷やそうか」 頭を抱えて蹲る2人を尻目に、ジュンは竹刀の切っ先を、謎の眼帯娘に突き付けた。「この水晶柱は、おまえの仕業か? なんで、こんな悪さをするんだ!」 「だって――」にこ~、と無邪気な笑みを湛える眼帯娘。「愉しいじゃん。人の不幸は大好きさっ! 人の不幸は大好きさっ!」 しかも、腕と腰を振り振り、ダンス付きで不謹慎な歌まで披露しだす始末だ。これでは、まともな会話など望めない。言って素直に聞き入れる相手でもなかろう。向こうのペースに翻弄されている間は、勝機など見出せない。 ならばと、ジュンは逆転の一計を案じ、「おおっ!」と眼帯娘の背後を指差した。まんまと引っかかった眼帯娘が、不用心に振り返った、その一瞬!ジュンは神業とも言うべき速さで、娘の背後に回り込み、そして―― 「尻尾を現せ! この化けウサギめっ!」 眼帯娘のスカートを捲った。桃のような白いお尻とTバックが、彼の双眸を眩ませる。ジュンはつい、「ムッハァー」と奇声を上げてしまった。それもすぐに、凄まじい金切り声と怒号の速射による三重奏に掻き消される。 「きゃあぁっ?! なにするぴょん、このスケベッ!」「信じられない! 見損なったわよ、ジュンジュン!」「桜田くん最低! 不潔! 女の敵! エロガッパ!」 ひどい言われようだ。だいたい、エロガッパってなんだよ。ジュンが反駁しかけた矢先、「この恥辱、絶対に忘れない……きっと復讐してやるぴょん」瞳を潤ませた眼帯娘は、水晶柱もろとも霞と消えた。撃退したのだ。結果オーライ大成功。 「ふふん……どうよ、まさに会心の一撃。大逆転で、めでたく道路も開通だ」 自分の機転が功を奏したとあって、ジュンは誇らしげに胸を張った。流れる鼻血は勇者の証し。――が、みつと巴は、相も変わらずコワイ顔。どうやら、ただでは許してもらえなさそうだ。結局、いつものパターンかよ。ジュンは肩を竦め、路上で大の字になった。 「どんと来い、教育的指導」
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