ピチカートな恋愛物語 始動編
~少し前のとある秋の日 ~()雪「しかし恋ねぇ……もぐもぐ」ピ「あれ、どうしたんですか、焼き芋持ちながら深刻な顔して。悩んだって食べれば焼き芋は無くなりますよ」雪「いや、それもそれなんですけど……実は最近、ウチの妹が女誑し眼鏡野郎に恋をしてるらしくて」ピ「こ、恋ですか……けどおかしいことではありませんよね」雪「そうなんですけど……私には恋なんて分かりませんから、なんて反応すればいいか分からなくて」ピ「とても素敵なものだと思いますよ! 例えば相手の事を想って冷静にいられないとか……下手に妄想しちゃう感じです」雪「……ピチカート、顔がにやけてるよ」ピ「あっ、すいません///」雪「何かいい具体例とかあれば教えて欲しいんだけど…・・・無い? 」ピ「具体例ですか? う~ん、恋を例える具体例……恋は盲目とか言いますけど」雪「盲目といわれても私、片目は見えるからさ、その」ピ「そうですよね……あっ! じゃあ」ヒョイ雪「あっ、私の焼き芋」ピ「すいません、今返します」雪「もう……私の命より大事な焼き芋を」ヒョイ雪「……ピチカート? 私から食べ物を取るとはなんて命知らずな。覚悟はいい、私は出来てr」ピ「す、すみません!? 返します、返しますからその後ろに見えるスタン○だか何だかを消してください!! 」雪「全く……ああ、愛しの焼き芋もぐもぐ」ピ「あ、あの、多分恋って、今キラキショウさんが感じた気持ちみたいなものですよ。何かをしたいのに自分の思い通りにいかない。だけど手に入れた時の幸福感は言葉に表せない、端的に言えばそんな感じです。実際にはもっと大変ですが」雪「ああ、なるほど。要はこういう事ね」ピ「えっ?? 」雪「……愛は憎しみの始めなり」ピ「……もうそれでいいです、はい.」*愛は憎しみの始めなり 人を愛する者は、常に、憎しみと隣り合わせであり、一つ間違えば、愛は恨みにも変わってしまうという戒めの言葉なんて昔の事を思い出しながら……。何がともあれ月曜日。ただ今、時計は朝の十時を指しており見事な秋晴れである。私達から言わしていただければ素晴らしきデート日和だ。「ほら、あそこ見るかしら! あの公園の噴水前」と、金糸雀が草陰から指を指す。私達はピチカートデート相手捜索……みたいな作戦名だったような気がするこの計画を密かに実行していた。そう、あくまで隠密作戦である。スネーク先生、どうか私達に力を貸してください。因みに私もさすがに生の蛇は頂いたことが無いので是非味の感想もご教授頂ければ幸いです、はい。「……ホントだね、金糸雀。ピチカートさんがスカート履いてるの初めて見た」どれどれ、と私も隠れている草むらから金糸雀の双眼鏡を借り、覗き込む。……ふむ、確かにピチカートとしては珍しいスカート。ミニでは無いのか私としては残念だがロングでもピチカートの大人っぽさが良い感じに溢れてきて思わず声を掛けたくなる。「しかしピチカートさん何時の間にあんなスカートを」「あれ、実はみっちゃんのかしらー。だけどみっちゃん買ったはいいけど、みっちゃんには少し大人っぽ過ぎておばさんに見えるからって今まで放置していたのかしらー」まぁ、似合っていたとしてもこのように使うタイミングがあったかは謎なのだが。「しかし本当に相手は誰なんでしょうね」「んー、謎かしらー。もしも怪しい男が出てきたらこのカナが退治してやるのかしらー」「ま、まぁピチカートさんに限ってそんな事は無いと思いますけど……」二人が談笑する中、私はまだ双眼鏡を覗き込んでいた。張り込んで二時間。どうも先ほどからピチカートがそわそわとし始め、腕時計をよく覗き込んでいる。もしかしたら、そろそろ約束の時間なのだろうか。「なら二時間前に来なくても良かったんじゃないの……ですわ」「おねーちゃん、どうかしたの? 」これ、と私は薔薇水晶に双眼鏡を手渡す。「どうも時計を気にし始めているのですわ。これはもしかしたらそろそろ……」「どれどれ……あっ、ホントだ。二時間前に来てたって事かぁ、健気だよね」確かに。健気というかなんというか。恋をしていない私には分からないものなのかもしれない。「あっ、おねーちゃん、金糸雀! ピチカートさんがあっち、公園の入り口の方に向かって手を振ってる!! 」「「な、なんだってー!!」」と、私と金糸雀はピチカートの方を眺めた。薔薇水晶に双眼鏡を手渡したときに身につけた、とある眼帯型の装備品を覗き込むと、ピチカートが誰かに顔を赤くしながら手をぎこちなく振っている。さすがアーバイン先生直伝のレンズ。よく見えすぎて怖いくらいだ。何のことだかさっぱり分からない君はアニメ版はコロコロ版のゾイドをインターネットやらで見てくれ給え。「み、見えないかしらー! 薔薇水晶ッ、その双眼鏡分割して片方渡すかしらー」「……あっ、分割出来るんだ」と、仲良く双眼鏡が行き渡ったところで私達は噴水前のピチカートに集中する。「んー、まだ見えないかしら」「こっちもー。おねーちゃんは? 」「下着の色は黒と踏んだ」「し、勝負下着……って何の話かしらー!!」いやいや、しかしよく見える。とあるレンズ切り替えれば透けて見える雪華綺晶仕様を舐めてもらっては困る。「き、来たかしらー」「あっ、ホント……だ? 」最愛の妹よ、最後がエクスクラメーションマークではなくてクエスチョンマークになってい……!! クエスチョンマーク……だ、と……。と、私もアーバインレンズを覗き込みピントをあわせた。傍から見れば両目眼帯の変人である。「そ、そんな馬鹿な……」映し出す相手に私は思わず呟いた。アーバインレンズが映し出したのはジャニ○ズでも、もこ○ちでもなく……「ち、小さな女……の……子? 」ピチカートが手を振っている相手は間違いなく小さな女の子である。ピンクのリボンとカバンを引っ提げて、とてとてと歩む姿はどことなく雛苺に似ているような気がした。「ま、まさかピチカートがロリコンだったとは思わなかったかしら……」がくり、と肩を落とす金糸雀を尻目に薔薇水晶はその小さな女の子を見つめながら、何かを考えている。薔薇水晶もああいったタイプが好みなのだろうか。私もそれには同感だが、私はロリコンではなくペドなので問題はない。「おねーちゃん、私あの女の子知ってるよ」「ばらしーちゃん……やっぱりあんな子がいいのか」「いや、違うって。たぶん、あの子、雛苺のお隣さんの帰国子女で確か名前は……」金糸雀と私の視線が薔薇水晶のふっくらとして気持ちがいい唇に注がれる。「……ベリーベル」薔薇水晶は私達を見返しながらそう言った。
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