ずっと傍らに…激闘編 第十六章~ジュンside~
B「…よう」C「こんな所で何してんだ?」翠「…」こんな場所に来てまで遭遇するとは…。ツイてないよな。いや、ツイてないどころの話ではない…。震えが止まらない僕。そして3人に冷たい視線を浴びせる翠星石。バイブが鳴りっぱなしの僕の携帯──A「決まってんだろ?──“おままごとですぅ~♪”」C「プッw」B「ギャハハハハハwww」翠「…」歯を食いしばる翠星石。こいつも苛められてんのか?…でも翠星石は3人を睨みつけたまま動かない。何でだよ。さっさと叩き潰すか逃げるかしようよ…──あ、バイブおさまった…。A「ま、2人で仲良くやってる所を悪いけどな、 俺の可愛いダチがお前と縁の深い剣道部の奴らにボッコボコにされてんだよ。 お前の妹を筆頭とする剣道部よ。な?」翠「…」A「実際、お前自身も1,2回は参加したんだろ?表でなくても裏でもよぉ」翠「さぁ~知らんです~?」他人事のように上手くかわそうとするところ、流石だ…。でも早く何とかしてくれ…携帯開くチャンスが欲しいんだよ。それよりも先に…僕はさっさと逃げたいんだよ…A「ハァ?…何その態度!腹立つわこいつ… じゃあこうしよ。折角だから…決着つけよか」翠「…」A「仇討ちじゃ。やられたら何百倍、何千倍にして返したらぁ!」翠「挑戦状は私じゃなくて蒼星石に対して申し込むのが筋ってもんなんじゃないですか?」A「知らねーよ。関係者なら誰でもいいんだよ。 それに、ある奴から聞き出した話なんだが、 お前の姉貴、何か強いらしいな? …名前は…“水銀燈”って聞いたな。 じゃあお前自身も強くて当然やわな?…手加減せんぞ!」翠「…ふっ」向こうが啖呵切ってるのに、嘲笑…?って、喧嘩買ってどうすんだよwいや、突っ込みたいのかな。まぁ分かるんだけどさ。僕も思ったけどさ…でも……僕もう死にそうだよ…。──我慢できない。逃げよう。バッ!!C「こらっ!待て!」翠「ジュン!」──翠星石が呼んでる…。翠「振り向くなです!さっさと逃げ切って──」C「お前邪魔じゃボケ!」ドテッ!!C「…うおあぁぁぁぁ!!…」──なっ…何が起こってるんだ…?でもそんなこと気にしてたら捕まるのは目に見えている。僕はとにかく逃げた。逃げた。…逃げた──~~~~~はぁ…はぁ。何とか…市役所の前まで来たぞ…。しっかし…体力ないな…そこまで走ってないのに…立てない…後ろを向いても、翠星石はもう追って────え?誰か来てるよ…。背の高さと走り方からして…あれは…Bか?…わわ…Bの奴が追ってきてるよ…!ちょw…もう走って逃げる体力ないよ…。くそ~。そこの市役所の中に逃げ込んで助けを求めよう…ドン!ジ「あ、すみません…」うわぁ…女の人の胸にモロにぶつかった…こんな時に…ややこしいことになるなよな…ほんと…僕の未来はBとの2人による挟み撃ちしか見えてこない…──鬱だ…。銀「──ちょっと、ちゃんと前向いて歩きなさいよ」…うお?こっ…この声wジ「何で水銀燈がここにいるんだよw」僕の後方を気にするように、ちらっと目をそっちに向け、また僕に目を合わせた。そんな、制服姿の水銀燈。でも、部活の用意が…見当たらない。銀「うふ…聞きたいぃ?」そう言うなり、いきなりニコニコしだす水銀燈。…何で何で…?作り笑いに見えて仕方ないんだけど…。後ろからBが来てるのに──早く助けて…。ジ「…」銀「それはねぇ──」ジ「…」さっきまでにこやかだった表情が一変、水銀燈は目を剥いて、僕の胸倉をワシッと掴んだ。銀「──あんたが突然いなくなるからよ!!」そして怒鳴りつけてくる。…ますます状況が飲み込めない。ドキドキしながら黙りこくるしかない。銀「ほんと、2時間近くも捜してようやく見つけたわ…」そして胸倉を掴まれたまま、ギュッと上に引っ張り上げられ、まだ続く──銀「あんた、ただでさえ他人が怖いとかどうたらで迷惑掛けてんのに、 この事で余計に家族に迷惑かけてんのよぉ?分かってんのぉ?」ジ「…」水銀燈はチラッとまた僕の後ろの方に視線を向け、また僕を睨みつけた。これって…Bから僕を守るための…演技?いや、でも言ってる事が至極真っ当で、本気で怒ってるようにしか思えないんだけど……。銀「何よ、その白けた顔…」うっ…思考をめぐらせてたらそんな顔してたのか…。銀「真紅から聞いて吃驚したわぁ…その真紅も怒ってたし… あんた、どうせアレであろうが家を飛び出して街へ出ても、 それは僕の勝手だ!──って思ってんでしょ?」ジ「…」こういう場所での配慮は感謝につきる…。銀「他人が怖いんだから、誰の助けも必要ない! 1人でも十分生きていける!とか、 そんな風に思い上がってたんでしょ?…えぇ?」ジ「…」銀「何でアレになってるかも考えてみなかったわけぇ?」堰を切ったように次々と発せられる怒りに等しき言葉の数々。とどまるところを知らない──銀「それに、何のために携帯持ってんのぉ!?…ねぇ? ここに来る前にちょっとメールさえくれたら、 もうちょっと早く、しかものりと一緒に、学校から直接行って、 こんな事になる前にあんた達を守ることが出来たかもしれないのに!」ジ「…」水銀燈はまた僕の後ろの方をチラッと見た。 銀「まぁ、追われてたみたいだから、最後の方は仕方ないと思うけどぉ…」コソコソっと呟く水銀燈。これって譲歩?てことは、やっぱり演技だ…ジ「…うん」ドン!水銀燈は足を踏み鳴らした。 ジ「ひっ…!」銀「ニタニタしてんじゃないわよ!」また胸倉を掴む力が強くなった…。演技じゃなかったの…? orz銀「…何で電話に出ないのっ? …今は3時20分…まさか、ずっと追われてたわけじゃないでしょうから、 1時とか2時とか、そのあたりは2人で楽しくやってたんでしょ?──」ジ「…はい」銀「じゃあ電話に出れたはずじゃない!今すぐ携帯確認しなさいよ! 着信履歴に20件くらい私の携帯からの記録が残ってるはずだから!」僕は携帯を開いて確認した。…確かに、開いた瞬間、画面の下の方に凄まじい数字が表示されていた。ジ「“着信あり 26件”…全部水銀燈から…だ──」いや、わざとじゃないんだって…。銀「…」水銀燈の唇と、胸倉を掴む腕が震え始めた。そして、覚悟を決めろと言わんばかりの、この妙な静けさ。…鳥肌がたってきた──銀「私だって…特に、あなたの御両親が海外へ赴任されてから、 あなたを本当の家族として見て来た人間だから言わせてもらうわ。 私が今日ここに来てず~~~っとあなたを捜してて思ったこと──」ジ「…」銀「──退院してから、家族なんかどうでもいいとか思ってんじゃなぁい?」ジ「…」ヒヤリと冷たい声──こっちも震え上がる…。思わず唾をゴクリと飲み込んだ。銀「そして連絡もなしに勝手に行動してたらこの有り様…」ジ「…」銀「あんまりナメたような真似ばかりしてると、何が起こるかしらねぇ~ ふふ…ふふふ…ふふふふふふ──」水銀燈…目が笑ってないよ…!左手…胸倉を掴む力がもっと増してるよ…苦しい!!右手…右手が大上段に上がってるよ…何する気!!??銀「──ジャンクにするわよ!!」Bの奴は一瞬水銀燈の横でよろめいて、何事も無かったかのように、そそくさと通り過ぎていき、向こうの角をクッと曲がって消えた──グッ!!そして車に乗ってて急ブレーキを掛けられる感覚が僕を襲う──いや、急加速タイプのジェットコースターに乗ってる感覚の方が正しいか。スッ!!さらに水銀燈の右手は僕の目の前スレスレを通過した。僕は気絶するところだった…。当たれば左のほっぺたは真っ赤に腫れ上がるところだったかもしれない…。それから、水銀燈はヒョイと後ろへ振り向き、おそらくBが消えたことを確認したのか、やっと僕を解放してくれた。銀「もう行ったかしら?…ジュンくんを追ってた奴は…?」ジ「あ、うん…」どうなんだろ?最初からBが僕に近づけないように考えてくれてたのかなぁ…?銀「私もチラッと見たけど、上手い具合にビビッてたわぁw──」満足げな水銀燈。お願いだから僕も巻き添えにしないで欲しかった…。ジ「と…とりあえずありがとう…怖かった──」しかし、水銀燈は急に真剣な眼差しになった。銀「…でもね、さっきのは本気だから──」うっ…。やっぱりそうだったのか…。銀「いや、最初は演技のつもりでやろうとしたわよぉ? だってジュンくんの後ろに不審な子がいたから、 ビビらせて追い返そうと思ったのよぉ…」ジ「…」銀「そしたらだんだん捜してる時の事が頭の中によみがえって来て、 本当に腹が立ってきて…勝手に悲しくなってきて──」ジ「…」銀「引き篭もり…いや、外が苦手なあなたが突然街へ行くだなんて、 誰も心配しないわけがないでしょ!このおばかさん!」こつん!ジ「うん…ごめん」軽くゲンコツ…。Bがいなかったらハナからこんな程度で済んでたんだろう。鬱だ…。銀「私はいいから…家に帰ったら、みんなに謝っときなさぁい。 のりは何でか連絡つかなかくて、今ここにいないんだけど、 携帯の留守電に入れたから、家に帰る頃には多分知ってるはずだし…」ジ「…うん」ねーちゃんに怒られるのって…久方ぶりだよなぁ。銀「あ、お父様とお母様には知られないようにしてあげたかったけど、 とっくに戻ってる頃だと思うから…」ジ「…うん。覚悟は出来てるよ…」僕の親が日本から飛びたってから、ずっと親代わりになってくださったんだもんなぁ。水銀燈以上に恐そう…。銀「ったく、部活から帰って真紅から聞いたときにはホント焦ったわ…」ジ「ご迷惑をおかけしました…」深々と頭を下げた。水銀燈にはこの他に何と言ったらいいのか分からない。銀「もういいの。ジュンくんが何とか無事でここにいるんだし…」水銀燈は僕をギュッと抱き寄せ────ようとしたところをサッとかわした。銀「…つまんなぁい」ジ「だってここ市役所の目の前だよ?それに僕もう中2だし…」銀「じゃあ家に帰ってから──」ジ「いやいや、それだと絶対プロレスごっこになるから──」銀「チッ、バレたか…」う~ん。これは本気で身体を鍛えないと…今後も何時やられるか分からないからな──銀「…で、翠星石は?」ふと問うてきた水銀燈。…すっかり忘れてた…。マズイ…マズイよホント…。ジ「そ…そこの公園…で今頃睨み合ってるはず」あのときは…まだ喧嘩には至ってなかったはずだけど──銀「…はぁ?…何それ?」水銀燈も焦りだした。ジ「うん。僕さ…学校でも絡まれてんだけど、そいつらと…」銀「え?…まさか、ジュンくんをイジメてるクソ餓鬼共が揃ってるわけぇ?」ジ「…」直球で聞かれたので、頷くことしか出来なかった。銀「で、どういう状況だったの?…少し詳しくお願い」ジ「…向こうから喧嘩売ってきて、翠星石が煽り返してた…」銀「──は~っ…ばかっ…」手で額を多い、天を仰ぐ水銀燈。まぁ、“あちゃー…”って思うのは当然かもしれない。銀「そんな事言わないでよ…心配になるでしょ?」ジ「でも聞いてきたのは──」銀「わかってるわよそんな事!」イライラとした口調で言う。銀「はぁ…何で自ら絡みに行こうとするのかしら…」──そうだよなぁ。ちょっと前までは、あいつが喧嘩するなんて、身内か親しい人としかしなかったはずなんだけど。…そして水銀燈は大きく一息ついた。それが何を意味するのかは分かってる。僕も水銀燈がいてくれるなら逃げずにいられるはず。銀「ま、とにかく急ぐわよ。翠星石のところに──」
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