高校受験
「終わったぁー!手応えあり!!」僕、桜田ジュン。第一志望の県立○△高校の入試がたった今終わったんだ!(今日から遊ぶぞ~♪まずは久しぶりの通販やって~)ドンッ ドザー「いってぇ…」誰かがぶつかってきた。その拍子に互いのカバンの中身が地面に散らばる。「うわっ、カバンの中身がっ!おい前むいて歩け…ってあれ!?」「ご、ごめんなさいですぅ…っ」(うわっ、綺麗な瞳…しかも可愛い…)彼女の瞳は左右で色が違い、栗色の長い髪によく映えて見えた。「す、すぐに拾うですから!」「いや…こちらこそ、きみは大丈夫?」「だ、だ大丈夫ですから、あの、その、ぶつかってごめんなさいですぅ!」彼女はそう言うと、立ち上がって走り去ってしまった。(ガーン、びびらせちゃった?名前きけばよかった…たぶん同じ高校受けたんだよな?入学したら会えるかなー…)
「ただいまー」「あら、お帰りジュンくん!入試どうだった?」「まぁまぁかな、落ちることはないと思うよ」「あらぁ、おねぇちゃん嬉しいわ。ジュンくんと同じ高校に通えるんですもの。今晩はお赤飯ね!」「何で赤飯なんだよ、しかも気が早い」一応突っ込んどく
桜田家は海外にいる両親、ねぇちゃん(名前はのり)そして僕の四人家族だ。いつもいない両親に代わり、家事など身の回りのことはねぇちゃんがしてくれる。「いつもの花丸ハンバーグでいいよ」そう伝えて僕は二階の自室にあがる。机の上には封筒が置いてあった。「真剣ゼミ?受験終わったばかりだし関係ないや。」そして夕食後「じゅんくん?」「んっ?なに?」「ジュンくんは将来どうするか決めてるぅ?」「将来かー…まだ決めてないよ。それに受験終わったばっかだし、入学までは楽にしてたいし。もちろん入学したら勉強するつもりだよ」「そっかー。ジュンくん中学では成績よかったしねぇ。でも入学式からでいいやぁておもってたら、あっという間に周りから取り残されるわよ!同じぐらいのレベルの人が集まるんだから。」 「そ、そう言うもんなの?」「そうよー!甘く見てたら痛い目に会うんだから!この春休みが勝負よ、ジュンくん!まずは中学3年間の復習と、高校での勉強法を身につけることから始めなさい」「わかったよ、でもそんなに沢山、二週間そこらで出来るもんなの?」「ふっふっふ、そこで秘密兵器よ。」そう言って姉は何かを取り出す。「ジャーン!真剣ゼミよ!!おねぇちゃんもお世話になったわぁ。」(あっ、さっきの封筒…)「どうかしらジュンくん?これなら五教科の復習が、一日60分×7日で出来てしまうのよぅ!それに続ければ大学に合格する力もつくんだから。やりたいことも自然と見つかるわよぅ」 (そっか、そうだよな、大学入ってからでも遅くないよな…よしっ!)「ねぇちゃん俺やるよ!!」
数日後
今日は発表の日だ。ゼミも昨日とどいた。あとは受かるだけだ!十時の鐘と同時に掲示板が張り出される。希望を胸に掲示板を覗く…(186…187…189…189…191…んっ?186…187…189…189…191…えっ!?まじっ!?俺の番号ねぇー!!!!)
ど、どうしよう。滑り止めなんて受けてないよ…。
①僕は帰りの電車に突っ込んだ…
②僕は引き込もっただけど引きこもりはじめてから3日目の「じゅじゅんくん~!!!」うるさい海苔だ・・・ジ「うるさい!!静かにしてくれ」の「いいいま学校から電話きてジュン君補欠合格したそうよ!」ジ「ちょwまじで?」の「お姉ちゃんうそいわないわよ」ジ「生きてればいいことあるな~」
③電車に突っ込もうとしたら、誰かに背中をつかまれた。あの日ばったり逢った、女の子だった。翠「あぶねぇーです!落ちたらどうするですか!?」ジュン「……良いんだよ、僕はもうダメだ」翠「もしかして、受験に落ちたんですか?」ジュン「ああ、そうだよ…。クソ!」
僕がそう言うと、いきなり殴られた。しかも、すごい強さで。僕は思わず、倒れこんだ。翠「何を落ち込んでるですか!受け入れろです!」ジュン「じゃあ、ニートになれと?」翠「本当に頭の悪い奴ですね。浪人して、もう一度やれば良いんです」ジュン「で、でも高校浪人なんて……」翠「恥ずかしがるなです!私が、教えてやるから立ち直れです!」
そう言うと彼女は、僕の手を取ってくれた。ジュン「ねえ、君の名前は?」翠「私は翠星石です」ジュン「……僕は、ジュン…」こうして、僕は彼女ともう一度逢えた。そして、また歩き出すんだ。あきらめたら、負けだ。もう一度、受験という戦いに挑むんだ。彼女と一緒なら、今度は…勝てる気がするんだ……。
④駅のホームで、涙を流す少女を見つけた。あぁ、あの子も落ちたのかな。ん?あの子って・・・「きみ、あの時の・・・キミも」「泣いてなんかねーですよ!」「いや、まだ何も・・・」「あんな高校、こっちから願い下げです!!ぐすっ・・・」なんか、よくわからんけど、放っておけなかった。「一緒に、海とか見に行かない?」「・・・?な、何を突然・・・というか誰ですかですぅ」しまった、と思った。ちょっと廊下でぶつかっだけ、お互い名前も知らない。慣れなれしくしすぎたな。「いいですよ、もうなんでもやってやるです」意外な返事にびっくりしたが、とりあえず平然を装った。
海に向かう途中はずっとうつむいていたが、到着すると少しだけ元気を取り戻したようだった。夕方、二人で砂浜を・・・なかなか悪くないシチュエーションだと思った。まだ寒いからだろう、砂浜には僕ら以外誰もいなかった。彼女は突然歩く足をぴたりと止め、海に向きなおす。「ばっかやろーですぅ!!!」うるさいと思うよりも先に、よく通る素敵な声だと思った。「ふふ、一度海に向かって叫んでみたかったですぅ」そういって彼女は、今日始めての笑顔を見せてくれた。「海にばかやろーなんて言うやつ、噂には聞いてたけど実物は始めてみたよ」皮肉っぽいことを言いながらも、僕は夕日を浴びる少女に釘付けだった。「・・・あなた、名前は?」「え、あ・・・桜田、ジュン」「ジュンくん、今日はどうもありがとうですぅ。ちょっとだけ、元気がでたです」「ん、いや、僕も来たかったし・・・君の、名前は?」海からこちらへ振り返り、彼女は微笑みながら言った。「翠星石、やがて人類を支配する者ですぅ」あ、電波だこいつ。なんか台無しな気分だった。
⑤重い足を引きずるように帰った僕に、姉ちゃんは何も訊かなかった。そりゃあ、こんなシケた面してれば、落ちたって事ぐらい誰にだって判るよな。はぁ……気が重い。なんにもする気になれず、ベッドに倒れ込んだ。このまま眠りに就いて、目が覚めたら合格発表前に戻れてたらいいのにな。
それから、どれだけ眠ってたか分からない。窓の外は、既に真っ暗だった。
「……気晴らしに、ネット通販でもすっか」
部屋の明かりを点けて、パソコンのスイッチを押したとき、机の上に見慣れないハガキが載せられている事に気付いた。
「これって……受験票じゃないか」
私立薔薇学園高等学校、入学試験票。こんな高校の願書を書いた憶えはない。その筆跡は、よく見れば姉ちゃんのものだった。
「そう言えば…………最近、姉ちゃんバイトしてたっけ。あれって、まさか――」
この受験料を稼ぐために? 無駄になるかも知れないって、思わなかったのかよ!
「姉ちゃん……なんで、そんなにバカなんだよ……僕なんかの為に、こんなっ!」
涙で滲む目を擦って確認した受験日は、明後日。もう少し、頑張ってみよう。僕はパソコンの電源を切って、受験勉強を始めた。
思い起こせば3年前…初めての挫折、彼女との劇的な出会い、そして姉の優しさ…この日新しい桜田ジュンが生まれたのかもしれない。姉の優しさに触れてから試験までの二日、僕は必死に勉強した。もちろん先生は翠星石だ。あの拳はとても響いたもの彼女のおかげだろう。僕は見事に合格した。「おめでとうですぅ、ジュン!」「翠星石のおかげだよ。」「これで同じ学校に通えるですね♪」「へっ?」「だーかーらー、これで同じ学校に通えるですねと言ってるですぅ!」あとで聞いた話によると、彼女は七人兄弟の三女でとても人見知り、だからあの日の試験は慣れるために受けたそうだ。もともと薔薇学の中等部に在席していて、そのまま高等部に進学することにしていたそうだ。彼女と過ごす3年間はあっという間に過ぎてしまった。それでも振り替えればとても有意義な3年だった。
そんな僕も明日からは大学生。薔薇学で知り合った翠星石の姉妹達も一緒だ。きっと今日からの四年間は一生の宝になるだろう、そんな気がする。「なぁ~ににやにやしてるです、いやらしいことでも考えてるですか?♪」「翠星石…」「?」「ありがと」「へっ?」「ありがとな!」「?なっ!い、いきなりどうしたです?変なジュンですぅ」そう言う彼女の顔にはどことなく優しさが広がっていたそう、人は変われる姉と彼女が変えてくれた姉は優しさを、彼女は勇気を…ねぇさん、やりたいことが見つかった気がするよ
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