Another RozenMaiden 第4話 異変
Another RozenMaiden 第4話 異変 JUM「やっと着いた・・・。」走り出すこと約20分。ようやく自宅へとたどり着く。急いで家の扉を開くと、玄関に水銀燈の靴があることに気づく。どうやら、水銀燈は自宅に戻っていたらしい。すぐさま荷物を玄関に放り出すと階段を駆け上がり、水銀燈の部屋に前に立つ。JUM「水銀燈、居るのか?」数回ノックしつつ、扉越しに中の様子を伺う。銀「JUMぅ?」部屋の主、その声が聞こえる。JUM「ああ。水銀燈・・・・部屋に居たんだな。 面談の後、急に居なくなったから心配したよ。」水銀燈を見つけられた安堵から、疲労がどっと押し寄せてくる。銀「心配かけて、ごめんねぇ。」JUM「それにしても、一体どうしたんだ?」銀「ちょっと一人になりたいなって、思っただけなのぉ。」扉越しで水銀燈の様子は分からない。だが、その声は普段より暗く感じられる。JUM「そうだったのか。気が回らなくてすまんな。」銀「我がまま言って、ごめんねぇ。」やはり水銀燈の声は暗い。きっと何かあったのだろう。話したくないというなら、本人が話してくれるのを待つしかない。JUM「何かあったら言うんだぞ。」銀「そうするわぁ。」そういい残すと、僕は水銀燈の部屋を離れた。この日は結局、水銀燈が部屋から出てくることはなかった。
翌日。水銀燈の部屋。銀「まだこんな時間なのぉ。」昨日の事のせいか、いつもより早く目が覚めてしまう。時計が示す時間は、まだ6時。時間を持て余した私は、ついJUMのことばかり考えてしまう。JUMのことを想うと、必ず面談の時に聞いたあの言葉を思い出す。それが辛いので、あれ以来JUMことはなるべく考えない様に努めてきた。銀「私もダメねぇ。」よぎる想いを振り払おうとする。しかし、止めどなく溢れる想いを振り切ることなどできない。銀「朝食の支度でもしようかなぁ。」体を動かせば気が紛れる。そう考え、服を着替えると台所に向かった。いつもより時間を掛けて料理を終える。後は二人分に取り分けるだけだ。銀「このおかず・・・・JUMの好物なよねぇ。」何気ない自分の台詞で、私は現実に引き戻されてしまう。銀「JUM・・・・。」不意に一粒の滴が頬をつたう。食卓に落ちた液体、それは涙だった。銀「JUM・・・・私の大好きなJUM・・・・。」その涙を皮切りに、想いと涙が溢れ出す。全身から力の抜けた私はその場に座り込んでしまう。どの位の間そうしていただろうか。ピンポーン。不意に玄関のチャイムが鳴る。時間を確認すると、既に時計は8時30分を指している。真紅達が迎えに来たのだ。このままでは、みんなに私の無様な姿を見られてしまう。それだけでなく、JUMもこの音に気が付いて起きてくるだろう。そうなれば、涙でグチャグチャになった私の顔をJUMに見られてしまう。私は急いでJUMの朝食を並び終え、玄関にあるブーツ掴むと裏口から家を飛び出した。
ピンポーン。ピンポーン。断続的に鳴る玄関のチャイムで目が覚める。JUM「うるさいなぁ。今何時だと・・・・・って。」時計が示すのは8時30分。ピンポーン。またチャイムが鳴る。JUM「もうこんな時間なのか!?ということは、このチャイム・・・・真紅たちか。」急いで服を着替えると、廊下に飛び出し水銀燈の部屋をノックする。JUM「水銀燈!もう起きないと遅刻するぞ。」返事も待たずに扉を開け、水銀燈の部屋に入り込む。JUM「居ないのか!?」部屋には誰も居なかった。水銀燈は何所に行ったのだろう。ピンポーン。またもチャイムが鳴る。JUM「うるさいな!今行くよ!」慌てて階段を降り、玄関の扉を開けてやる。雛「JUM。おはようなのー。」扉を開けると同時に、雛苺が飛びついてくる。遮る者が居ないので、今日は腕を掴まれてしまう。紅「8時30分を7分も回っているのだわ。成長しない家来ね。」真紅が愛用の懐中時計を取り出して言う。JUM「僕が、いつお前の家来になった・・・・・って口論している暇もないな。」雛「JUMの頭。すごいのー。」僕の頭を指差す雛苺。僕の頭の何が凄いのだろう。玄関にある鏡で自分の姿を映してみる。
翠「ひでー頭ですぅ。寝癖で、どこかの戦闘民族みたいな頭ですぅ。」鏡に映る僕は、まるで某伝説の戦士のような髪型になっている。金「ひょっとして寝癖?そこから推理するに、JUMは今起きたのかしらー?」JUM「そうなんだよ。ごめん。先に行っていてくれ。」寝坊したのは自分の責任だ。他人を巻き込むわけにはいかない。蒼「JUM君一人を置いては行けないよ。」さすが蒼星石。何て頼りになる奴なのだ。地獄に蒼星石とは正にこのことである。翠「ここで見殺しにして、末代まで祟られても困るですぅ。」泣きっ面に翠星石とは正にこのことである。悪いのは、寝坊した俺なのだけど。紅「仕方ないわね。5分待ってあげるわ。」勝手に家へ上がり込む真紅。蒼「JUM君の髪は僕が直すから、翠星石は荷物の方を頼むよ。」蒼星石に腕を掴まれ、家に連れ戻される。翠「ついでに弱みの一つでも、探してくるですぅ。」翠星石が意気揚々と僕の部屋に向かう。止めようにも、蒼星石の手から逃れられそうにない。弱みを握られるのは諦め、思考を他に移す。JUM「それにしても、水銀燈は何所だ?」これだけ騒いでも、水銀燈が出てくる気配は無い。
紅「人のことはいいから、急いで頂戴。」いつの間にか居間を占拠し、紅茶を啜る真紅。蒼「水銀燈の靴は無かったから、もう学園じゃないかな。」JUM「そうなのか。」蒼星石に指摘され落ち着きを取り戻す。蒼「JUM君。動いちゃダメだからね。」洗面台前の椅子に座らされ、蒼星石が馴れた手つきで寝癖を直す。姉妹で最も髪の短い彼女には、寝癖という同じ悩みがあるのだろうか。JUM「寝癖の蒼星石も見てみたいな。」何気なく思ったことを口に出してみる。蒼「な、何を言っているんだい?JUM君。」蒼星石の手が震え、くしが頭皮に当たる。JUM「蒼星石。整髪が上手いから、慣れているのかなと思ってね。」くしが少し痛いが、顔には出さない。蒼「JUM君。普段は自分で直しているのかい?」JUM「たまに水銀燈がやってくれるけどな。」一瞬、蒼星石の手が止まる。蒼「ねえJUM君。水銀燈と僕、どっちが上手かな?」
少し間を挟み、蒼星石が口を開いた。JUM「もちろん、蒼星石だよ。」水銀燈には以前、整髪料のスプレーを顔に吹き付けられたことがある。だが、余計なことは言わない主義なので黙っておく。噂はどこへ流れるか分からないからだ。蒼「えへへ。お世辞でも嬉しいよ。」蒼星石は素直に嬉しそうな表情をする。僕の髪を直す間、蒼星石と他愛のない言葉を交わす。蒼「はい。終わったよ。」程なくして、寝癖直しが終わる。JUM「助かったよ。ありがとう蒼星石。」見事な普通の髪だ。僕の外見が普通なのだから、これが限界だろう。蒼「どういたしまして。」ほぼ同時に、翠星石が二階から僕の荷物を手に戻ってくる。紅「すぐ出発するのだわ。」僕らの様子を見るや、有無を言わさず出発を宣言する真紅。しかし、まだ僕にはやり残したことがあるのだ。JUM「まだ僕の食事が済んでないんだが。」居間には僕の分の朝食が用意されている。まだ食事をしていないので、もちろん手付かずのままだ。真紅の目の前にあるのだから、とっくに気づいているはずなのだが。紅「遅刻したいのなら、一人で好きになさい。」雛「JUM。もう時間が無いのー。」袖を引っ張り、時計を指差す雛苺。8時45分。確かに食べている余裕は無い。もう5分早く起きていれば・・・・。翠「後悔しやがれですぅ。」とどめを刺す翠星石。たった今後悔していたところなのに。JUM「仕方ないか・・・・・。」僕は朝食を諦め、学園に向かった。
JUM「おはよう。」いつもと変わらない教室。蒼「JUM君。水銀燈、居ないね。」JUM「そうみたいだな。」軽く教室を一望する。そこに水銀燈の姿は無い。JUM「水銀燈はまだ来てないのか?」適当なクラスメートを捕まえて水銀燈のことを尋ねてみる。どうやら、まだ見かけていないらしい。蒼「大丈夫かな?」JUM「梅岡が来るまでに、まだ少し時間はある。そのうち来るだろう。」慌てることに意味は無い。僕は携帯でメールを送り、様子を見ることにした。やがて梅岡が教室に入り、出欠を採り始める。しかし、一向に水銀燈が現れる気配はない。依然、送ったメールにも反応は無い。蒼「水銀燈、まだ来ないね。」僕の様子に気づいた蒼星石が、小声で話しかけてくる。JUM「僕らより先に家を出ていたのなら、こんな時間まで学園に現れないのはおかしい。」梅岡の出欠が進む度に、気が焦る。蒼「何か・・・・あったのかも知れないね。」JUM「ああ。梅岡が教室から出たら、一度家に戻ってみるよ。」すぐにでも教室から出たいが、梅岡も簡単には許さないだろう。JUM「学園の方は、任せてもいいか?」蒼「うん。梅岡先生には僕が上手く説明しておくよ。」JUM「すまん。」蒼「困った時は、お互い様だよ。」やがてHRが終了し、梅岡が教室から出てゆく。JUM「それじゃ、僕は家に戻るよ。」それを確認すると素早く荷物を纏める。蒼「JUM君、また明日。」これ以上の言葉を返す時間も惜しい。昨日、水銀燈の部屋の前での会話を最後に、水銀燈とは一度も会っていない。それに加え昨日の面談以降、水銀燈の様子がおかしい。何かあったのかも知れない。言葉の代わりに僕は蒼星石に合図を返す、と教室を後にした。Another RozenMaiden 第4話 異変 終Another RozenMaiden 第5話 愛憎 に続く。
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