Another RozenMaiden 第3話 誤解
Another RozenMaiden 第3話 誤解 翌日。面談の時間。囚人達が群れを成し、刑の執行をただただ待つ。そんな表現が似合う教室内。既に罰を受けた者は呻き、執行を待つ者はいずれ来るべき運命を嘆いている。金「何で私が怒られるのかしらー。」また一人、罰を受けた物が机に突っ伏し、呻きを上げる。紅「敗者とは哀れなものね。」優雅に紅茶を啜る真紅。だが、その手は震えている。真紅のそれは、迫り来る恐怖からなのだろうか。金「次は雛苺の番かしらー。」目を回しながら、金糸雀が次の犠牲者の名を告げる。雛「うにゅ~。行ってくるのー。」フラフラと歩く雛苺。これはもうダメだろう。紅「雛苺。貴女の骨は拾ってあげるわ。」真紅の見解でも雛苺は死亡確定らしい。JUM「ところで、金糸雀はどう答えたんだよ。」参考までに一応聞いてみる。まともな回答が来るかすら、怪しいが。
金「薔薇大学に進学して事務のパソコンをハッキング。 楽してズルして大卒資格ゲット!かしらー!!」椅子から降り、決めポーズをつけて語る金糸雀。反省の色、無しである。蒼「それを口に出しちゃったんだね。」呆れ顔の蒼星石。翠「おめーは、ただのアホですぅ。」ダメ人間を前に得意げになる翠星石。金「言い返せないかしらー。」金糸雀はすっかり打ちのめされ、床に伸びてしまう。JUM「さて、何と答えたものかな。」自分も余り考えていない身分だったりする。紅「JUMは、まだ悩んでいるの?」JUM「ああ。実はな・・・・・。」このままでは、金糸雀の二の舞になるかも知れない。紅「全く・・・・ダメな家来ね。」お決まりの文句を言われてしまう。JUM「真紅はどうなんだ?」こう言うからには、真紅は面談で発言するネタがあるのだろう。紅「わ、私のことは関係ないのだわ。」途端に声が震え始める真紅。どうやら僕と同じで、何も考えていないらしい。紅「だ、大体からして貴方は・・・・・・・。」僕に説教を始める真紅。このままでは色々と文句を言われそうだ。JUM「水銀燈は、どう答えるんだ?」とっさに会話の相手を変えることにする。
銀「私ぃ?専業主婦っていうのも悪くないわぁ。」水銀燈の回答も、やっぱり参考にならない。翠「相手が居なければ、ただの無職ですぅ。」銀「うるさいわねぇ。私にはJUMが居るのよぉ。」公衆の面前で、平然と抱きついてくる水銀燈。これから水銀燈も裁きを受けるというのに、のん気なものだ。銀「料理関係の専門学校もいいわねぇ。 JUMが薔薇大学に進学するなら、私も進学してみてもいいわぁ。」悪い気はしないが、結局のところ僕頼りらしい。雛「うにゅ~。怒られたの~。」目を回した雛苺が教室に戻ってくる。JUM「雛苺は、どう答えたんだ?」雛苺を見れば敗者なのは一目瞭然だが、一応聞いてみる。雛「うにゅ~って答えたの~。」言い終わると床に伸びてしまう雛苺。紅「雛苺。余りバカなことを言って、主人である私に恥をかかせないで頂戴。」翠「チビチビが苺大福になったら、真っ先に翠星石が食べてやるですぅ。」真紅と翠星石による波状攻撃を受ける雛苺。雛「うにゅ~。」すっかり打ちのめされた雛苺は、辛うじて席に着く。雛「次はJUMなのー。」雛苺が次の犠牲者を告げる。それは僕だった。紅「JUM。私に恥を欠かせないように気をつけなさい。」自分の名でなかったからか、ほっとしている真紅。蒼「JUM君。気をつけてね。」死地に行く者を見送るような目をする蒼星石。JUM「行ってくる。」今更焦っても仕方がない。僕は覚悟を決め教室をでる。銀「気になるから、覗きに行ってくるわぁ。」僕は緊張していた為か、こっそりと水銀燈が付いてきていることに気が付かなかった。
JUM「よろしくお願いします。」ゆっくりと面談屋の扉を開ける。梅「次は桜田か。」普段は威厳の無い教師というイメージがある梅岡。だが、こうして二人だけになると、それが一転してしまう。JUM「はい。」正直言って欝だが仕方がない。昨日は真面目に調べてしまったが、大した情報がない。適当に薔薇大学に進学するとでも答えれば良いだろう。梅「それで、桜田は今後の進路。将来について、どのような道を進もうと思っている?」将来か。ここで薔薇大学の進学、そう答えたとしてもそれは過程だというオチか?思考を重ねた結果、当たり障りの無い程度に小出しで情報を伝えることにした。これなら十分、間も持つだろう。JUM「人形師やそれに関連した方向を目指そうと思っています。」梅「そうか、夢を持つことは良いことだな。」軽く笑顔で返してくれる梅岡。否定はされなかった。思ったより、良い奴なのかも知れない。梅「具体的に今後はどうなるんだ?」少し厳しい顔で梅岡が続ける。ここまで突っ込んで聞かれるとはな。ここから先の情報がないというのに。これなら金糸雀や雛苺では、ボロが出ても不思議ではない。JUM「外国に渡って、住み込みで修行とか・・・・・そうなると思います。」僅かな情報から、今後の見通しを予想して伝える。それが僕のできる限界だった。
JUM「やっと終わったか・・・・・疲れたな。」面談は無事終了し、疲労感が僕を襲う。予想以上に梅岡が突っ込んだことを聞くものだから、僕はすっかり気圧されてしまった。落ち着くと、面談室の傍に水銀燈がいることに気がつく。JUM「水銀燈・・・・・。覗いていたのか?」僕の問いに水銀燈は答えない。心なしか水銀燈の顔が青ざめて見える。面談を覗いていたことで、僕に怒られるとでも思っているのだろうか。JUM「どうした?覗いていたとしても、僕は別に怒ったりしないぞ。」またも僕の言葉に反応しない水銀燈。目が泳いでいるようだ。JUM「おい!水銀燈!!」水銀燈の両肩に手を置く。僅かに手が揺れる。水銀燈が震えているのか?JUM「!」水銀燈が、突如僕の手を払いのける。そのままの体勢で2、3歩後退すると、水銀燈は近くの階段を駆け下りる。JUM「水銀燈!?」慌てて追いかけるが、水銀燈の姿は既に見えない。どうやら見失ってしまったようだ。JUM「一体何なんだ?」不可解だが、後で水銀燈宛にメールでもしておけば良いだろう。そう思い、僕は次の順番を伝える為に教室へと戻った。
全生徒の面談が終了し、HRが始まろうとしている。JUM「水銀燈は何所に行ったんだ?」だが、水銀燈の席に主の姿は無い。梅「HRを始めるぞ。みんな席に着け!」梅岡が教室に入り、HRが始まる。梅「水銀燈はどうした?面談の時も居なかったが。」教室内の空白に気づき、梅岡が誰ともなく尋ねる。やがて梅岡の目が僕に留まる。梅「JUM。何か知らないか?」水銀燈のことなら、僕に聞くのがてっとり早いのだろう。JUM「僕は・・・・何も・・・・。」本当に僕は知らない。面談後以来、水銀燈の姿を見ていない。メールを送り、水銀燈からの返信を待っている状態なのだ。蒼「水銀燈は、具合が悪くなったので早退しました。」言葉の詰まる僕に代わり、蒼星石が答えてくれる。梅「そうだったのか。分かった。」優等生である蒼星石は、教員からの信頼も厚い。梅岡も蒼星石の言葉を信じたようだ。それにしても、水銀燈はいつの間に早退したのだろう。JUM「蒼星石。今、言ったことは本当なのか?」梅岡に注意しつつ、蒼星石に話しかけてみる。蒼「違うけど、この場を何とかしないとね。」どうやら蒼星石は、気を回してくれたらしい。JUM「気を遣わせてしまったのか。ありがとう。」蒼「どういたしまして。」蒼星石の機転でこの場はしのげた。だが、水銀燈が行方不明なのに変わりはない。JUM「それにしても水銀燈。・・・・・本当にどうしたんだ?」苛立ちが不安へと変わる。蒼「JUM君。本当に何も知らないの?」JUM「ああ・・・・・。僕の面談を、外で聞いていたらしいんだが。」僕は最後に水銀燈と会った時のことを蒼星石に伝えた。JUM「その後、水銀燈を見失って・・・・・。それ切りだよ。」蒼「そうなんだ・・・・。」JUM「携帯にも反応が無いしな。心配だ。」携帯はいまだに沈黙を保っている。
翠「水銀燈水銀燈って、いけ好かねーヤローですぅ。」蒼星石とのやり取りを、横から聞いていた翠星石が口を挟む。翠「きっと逃げたのですぅ。」ビシッと人差し指を僕に向ける翠星石。JUM「逃げたって、何からだよ?」水銀燈は、僕から逃げた様に見えなくもなかった。でも、まさかな・・・・・。翠「チビ人間が面談で無様な姿を晒すところ見て、怖気づいたのですぅ。」先の面談が好調だった翠星石は得意げだ。まあ、蒼星石と二人一緒に面談をしたのだから当然だろう。JUM「そんな理由だと良いんだけどな。」水銀燈の性格なら、面談程度で逃げたりしないだろう。翠「水銀燈も、真紅の様に潔く散れば良かったのですぅ。」蒼「真紅は、こういう事が得意そうに見えるんだけどね・・・・・。」紅「私がジャンク・・・・?そんな筈はないわ・・・・ジャンクは水銀燈よ。」一体、梅岡に何と言われたのだろう。小声でジャンクと呟き続ける真紅は、まるで廃人そのものだ。蒼「とにかく、HRが終わり次第探した方がいいね。僕も手伝うよ。」JUM「助かる。」気が着くと周囲の人影は疎らになっていた。蒼星石と話す間にHRが終わったらしい。蒼「それじゃ、僕と翠星石は学園内を探してみるよ。」蒼星石が翠星石の手を取る。翠「しゃーねーなーですぅ。翠星石も手伝ってやるから感謝するですよ。」JUM「頼む。僕は一度家を見てくる。」性悪の言葉に構っている暇はない。僕は鞄を手に、家へと駆け出した。Another RozenMaiden 第3話 誤解 終Another RozenMaiden 第4話 異変 に続く。
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