Another RozenMaiden 第2話 進路
Another RozenMaiden 第2話 進路 梅「明日は三者面談があるぞ。まだ進路を決めるには少々早い時期だが、 方向性ぐらいは決めておくように。」教室中からブーイングが巻き起こる。この面談には生徒、教師だけでなく、その保護者が介入するからであろう。成績を隠蔽している者にとっては、それが保護者の目に晒されるという意味なのだ。もっとも、僕には縁の無い悩みだが。続けて梅岡は、面談の内容を簡単に語る。今後どういう方向に進みたいかを簡単に説明してみろ、とのことだった。仕事を終えると梅岡は教室から出て行き、教室内の主導権は再び生徒に移る。銀「私たちじゃ、三者じゃないわねぇ。」席から身を乗り出して、水銀燈が話しかけてくる。水銀燈を始め、薔薇姉妹達は両親が居ない。その上、会ったことすらなく生死さえ不明らしい。JUM「そうだな。」深入りしない方が良いなと思い、受け答えだけにする。銀「JUMの面談に出てみたいわぁ。私って殆どJUMの保護者だしぃ。」水銀燈の目が輝く。JUM「違うだろ。」水銀燈のこの目は明らかに本気だ。何とかしないと、本当に僕の面談へ出かねないな。銀「違わないわぁ。私が居ないと、JUM死んじゃうでしょぉ?」満面の笑みを浮かべる水銀燈。少なくとも僕一人で、まともな生活は不可能だろう。
それが元で、早死にするだろうな。そう考えれば水銀燈の発言はあながち嘘ではない。だが、それとこれとは別だ。さすがに勘弁して欲しい。JUM「それなら、僕も水銀燈の方に出ようか?」守りに入っても、水銀燈に押し切られるだろう。一か八か、僕は攻めに出てみる。銀「えぇ!?」僕の発言に、驚きを隠せない水銀燈。作戦は成功だろうか?とにかく、ここで一気にたたみかけよう。JUM「水銀燈は僕の家に居候をしているんだ。それなら僕も、水銀燈の保護者のはずだ。」銀「保護者でもいいけどぉ、面談出られるのは嫌よぉ。」水銀燈は一瞬嬉しそうな表情になるが、直後急激に声のトーンが落ちる。どうしても面談に出られるのが嫌らしい。JUM「僕に水銀燈の成績を見られるからか?」水銀燈は、お世辞も頭が良いとは言えない。唯一の弱点、そこを狙って出方を伺う。卑怯なやり方ではあるが。銀「・・・・・・そうよぉ。」核心を突かれたのか、成績を話題に出すと、ますます弱腰になる水銀燈。JUM「だったら、この話は無しだな。」ここで妥協案を出し、水銀燈を釣り上げる作戦に移る。銀「うぅ・・・・・。」ひとまず引き下がってくれたようだ。銀「なによ、なによ、なによー!JUMのいじわるぅ!!」ポコポコと僕を叩く水銀燈。これはこれで可愛いのだが、返って意地になるかも知れない。もし僕の面談に出るのなら、水銀燈の方にも参加しよう。僕はそう決心したのであった。
放課後。水銀燈を撒き、一人で学園のパソコン室に向かう。今後の進路に関する資料を集めるためだ。それだけなら自宅でも可能なのだが、水銀燈の横槍で集中できない。という訳で学園のパソコン室を選んだのだ。パソコン室の隅まで行き、最奥に席を確保する。ここなら誰にも見つからないだろう。JUM「人形師・・・・・・と。」キーワードを入力し検索してみる。JUM「やっぱり良いものは無いな。」関連した国内サイトには、今一つ惹かれるものが無かった。JUM「これもダメ。・・・・・・これは・・・・・・SDか。これはこれで萌えるんだが・・・・今は別と。」検索結果を眺める。すると一つだけ目に止まるものがあった。JUM「槐か・・・・・・。」何故か興味を引かれ、マウスのカーソルを近づける。その時、紅「JUM。珍しいわね。」気が付くと、背後に真紅が立っていた。とっさに開きかけていたページを閉じ、真紅に悟られないようにする。JUM「どこから沸いて来るんだよ。」真紅に話し掛け、視線をPCから自分に誘導する。雛「パソコン室の扉からなのー。」真紅の背後に居た雛苺が身を乗り出してくる。JUM「それで、真紅たちは、僕に何の用だ?」紅「パソコン室に珍しく貴方が居たから、声を掛けてみたのよ。」そう言うと、真紅は僕の隣に席を取る。雛苺は真紅の隣に席を取る。JUM「真紅達は、パソコン室によく来ているのか?」こう言うからには、真紅たちはパソコン室の常連なのだろう。一体ここで何をしているのだろうか。紅「私は自宅にPCが無いもの。調べ物がある時は利用しているのだわ。」真紅は、ぎこちない手つきでパソコンを扱う。扱いには慣れていないらしい。気を取り直し、視線をPCに移して作業に戻る。作業をしていると時折、真紅の視線を感じる。時々こちらの様子を窺っているようだ。真紅がこちらを窺う瞬間、僕もそれに合わせて真紅の方を向く。目が合うと真紅が問いかけてくる。
紅「貴方こそ自宅にパソコンがあるでしょう。 どうして、ここに来ているのかしら?」JUM「ちょっと暇を潰しに来ただけだよ。」紅「そうなの。」そう言うと紅茶を啜り、自分のパソコンに目を向け直す真紅。どこから紅茶を出したのだろうか。僕にもやることは色々あったのだが、この状況では今ひとつ集中できない。再び視線をパソコンへと移すと、その瞬間パソコン室の扉が開く。翠「お待たせですぅ。」蒼「遅れちゃったよ。ゴメンね。」中に入ってきたのは翠星石と蒼星石だ。真紅たちと合流する予定だったらしく、4人が僕を囲む形となる。金「遅れてしまったかしらー。」少し遅れて、額に汗を流す金糸雀がパソコン室に入ってくる。翠「神奈川!遅いですぅ。」金「カナの名前は『金糸雀』よ。間違えないでほしいかしら!」これで5人目、もはや作業続行は不可能だろう。JUM「みんな揃ったな。水銀燈も来るのか?」ここまで姉妹が揃うのなら、水銀燈もここに来るのだろうか?紅「来ないわよ。誘ったけど断ったもの。」視線を逸らしてから真紅が答える。JUM「そうか。」こうなると、もはやここに居る理由はない。とはいえ、いきなり帰れば何かと怪しまれるだろう。取り敢えず、適当なゲームを起動して時間を潰すことにする。
紅「JUM。貴方は水銀燈のことばかりなのね。」JUM「?」良く聞こえなかったが、真紅が何か言ったような気がする。JUM「何か言ったか?」気にあった僕は、思い切って真紅に聞いてみる。紅「別に・・・・・。貴方は自分のやることがあるでしょう。そちらに集中なさい。」JUM「ああ・・・・。」真紅はこちらを向かずに答える。後ろ髪を引かれつつも、再びパソコンに視線を落とす。真紅は先程から、ずっとこちらを向いていない。おそらく、空耳だったのだろう。翠「きゃあぁぁ。」突然、翠星石が顔を両手で覆い叫びを上げる。翠「変なページ開いてしまったですぅ。このホームページ怖いですぅ!」そのまま机の下に潜り込んでしまう。蒼「翠星石は、何でもクリックし過ぎだよ。」翠「蒼星石。翠星石の代わりに、ページを閉じてほしいですぅ。」潜り込んだ机の下から、蒼星石のタイツを引っ張り懇願する翠星石。蒼「仕方ないなぁ。・・・・もう大丈夫だよ。」蒼星石が呼びかけると、翠星石は恐る恐る机の下から這い出る。金「これで金の勝ちかしらー。私って天才かしらー。」また一方では、金糸雀が歓喜の声を上げている。
下らない事をしているなら、被害が広がる前に止めなければならない。JUM「お前は何をやっているんだよ。」金糸雀のPCを覗き込む。金「ワンクリックサイトを回っているのよ。 料金請求が来たら逆に訴えて賠償金頂きかしらー。」紅「全く、呆れた子ね。」JUM「大体、ここは学園だから請求されるのは学園側だろ?」案の定、下らない事をしていた金糸雀。頭が痛くなる。金「ああ!そう言えばそうかしらー!」頭を抱えて机に突っ伏してしまう金糸雀。翠「金糸雀はただのアホですぅ。」すっかり調子を取り戻した翠星石が追い討ちを掛ける。金「そこまで言うのは酷いかしらー。」ポコポコと翠星石を叩く金糸雀。雛「うにゅ~!うにゅ~なのー!!」ついには雛苺まで大声を上げ始める。JUM「ダメだこりゃ。」PC室は大騒ぎになり、僕はやる気が失せてしまった。JUM「・・・・・帰るか。」PCの電源を切り、引き上げる準備を始める。紅「私は諦めないわよ。」そんな僕の後ろで真紅が小声で呟く。喧騒の中、その言葉が誰に向けられたものか僕には分からなかった。
教室に戻ると僕の帰りを待つ水銀燈の姿があった。銀「JUMぅ。おかえりぃ。」僕を見かけると駆け寄ってくる水銀燈。JUM「ただいま。」まだ学園内なのに、この挨拶はな・・・・と思いつつも水銀燈に合わせる。胸に顔を埋めてくるので、軽く髪を撫でてやる。この体勢だと水銀燈は上目遣いの格好になる。水銀燈と目が合うとその表情は余りに愛らしく、思わず顔を逸らしてしまう。しかし、目を逸らすと水銀燈がその方向に回り込んでくる。JUM「何か用事か?」また水銀燈から目を逸らす。顔が赤くなっているのを気づかれてしまう。銀「別に用事は無いわよぉ。JUMが戻るのを待っていただけぇ。」僕の腕に自分の腕を絡め、更に顔を近づけてくる。JUM「そうか。それなら一緒に行くぞ。」腕を回している水銀燈をそのままに、家路へと着く。普段と変わらない光景だが、変に水銀燈を意識してしまう。銀「JUMぅ。どうしたのぉ?様子が変よぉ。」僕の様子を、水銀燈は不審に思っているらしい。
JUM「何でもないよ。」相変らず水銀燈の顔が見られない。JUM「それより、ヤクルトでもどうだ?」コンビ二傍の自販機を指差して言う。こういうときは話題を逸らすのが一番だ。銀「JUMがヤクルトに誘ってくれるなんて、珍しいわねぇ。 それなら甘えちゃおうかなぁ。」作戦は成功したらしい。自販機に向かい、財布から80円を取り出す。出てきた2本のヤクルトをさり気なく水銀燈へ渡す。銀「はい。JUMの分よぉ。」しまった。自販機ヤクルトは2本組みなのだ。ヤクルト300にすれば1本で済んだのだが、後の祭りだ。手だけを水銀燈に向けてヤクルトを受け取る。銀「JUMの顔を見ながらヤクルト飲みたいわぁ。」尚も迫る水銀燈。その手で来たか。覚悟を決めると、僕は水銀燈を抱きしめた。顔は見られずに済んだのだが、水銀燈の胸が僕に触れる。こんなに大きいのか?と妙に意識してしまう。体の微妙な変化に、僕は慌てて腰を引く。こんな状態でよいのだろうか。明日は面談だというのに殆ど情報がない、果たしてどうなることやら。Another RozenMaiden 第2話 進路 終Another RozenMaiden 第3話 誤解 に続く。
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