質屋のお客達その5
質屋のお客達その5ついに来たエアコン………遅いよ。確かにまだ暑いけどもうエアコン無しでも耐えられるよ。まあいいか…。涼しいし。「あら本当に暇そうね。水銀燈達の言うとおりね。ジュンこの店はきちんと経営できているのかしら?」そんな容赦無しの感想を言いながら店に入ってきたのは僕の天敵。金髪のツインテールをなびかせた僕と同い年の真紅である。「真紅か…なんだよ。お前が質屋に来るなんて……蒼星石も似合わないけどお前もかなり似合わないぞ。」「そうね。できれば一生来たくないわ。でも今日は貴方に頼みがあるのよ。」真紅が僕に頼みなんて……いやよくするか。紅茶を入れろだの紅茶を入れろだの紅茶を入れろだの紅茶を………紅茶の印象が強すぎて他に何を頼まれたか思い出せない…。「まあいいや。頼みとは?」「それにはまず思い出してもらわないことがあるわ。貴方は私の下僕よ。これは会った時から言っていたわよね?」「そうだな。言われ続けて定着してしまった僕の忘れたい称号だ。」下僕ってパシリよりひどい言いかただよ。なぜ定着させてしまったのか…。「それともう一つ。ついに私の夢の一つである紅茶専門店を作ることにしたわ。」「ふ~んなのにお前のマイカップを持ってきたのか?質屋に?」まあ紅茶専門店と言うのがどんな物か気になる所だけど……。今はそれより真紅の持ってきた物に目がいく。真紅は学生時代目が腐るほど見たマイカップ…のセットを持ってきていた。 「そうね。でもその前に私の言い分を聞きなさい。さっき言った私の店。従業員が一人も居ないの。…というか誰がやるか決まっていないのよ。それで…」「僕にやらせる気か…?」「あらよくわかったわね。そうよ。私の下僕で扱いやすい。それに紅茶を入れる技術もある。これ以上の人材はなかなかいないわ。」つまりこのカップセットのお金で僕を雇うと…。しかし言い分の理不尽さがひどい。「それで幾らくらいになるかしら?」「まあ人一人雇うのくらいは楽勝であるよ。ただ…」「ただ…なによ?」「唐突にも程がある。もう少し考える時間はないのか?」「あるわよ。オープンは1ヶ月後だから……それまでにこの店でやり残したこと、私の店では何をやればいいのか…。考える時間はたっぷりあるわよ。」何がたっぷりあるわよ。だよ。しかも考える時間って…僕が真紅の店に行くのは確定事項なのか?「それじゃあね。詳細は今度会った時か電話でするわね。」「ちょっと待てよ。お前の言い分は…」「ああそれと私の店に来るからには上等なティーカップを持ってきなさい。それじゃあまた今度会いましょう。」僕の話を聞く前に真紅は店から出ていってしまった。……上等なティーカップ?つまりこれを返せと……。理不尽にもほどがあるだろ!?ああ……でもやっぱりやらなきゃならないんだろうな…。はぁエアコン取り付けたの…無駄になったな。でも真紅と一緒に働く…か。まあそれも悪くないかもな。続く
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