第六話「DESIRE」
激しく 胸が張り裂けそうさ 心奪われすぎてゆく激しく 深く傷つくことも 恐れないどれだけ 心が壊れても たとえキミを壊しても激しく 熱く抱き締めさせて キミのすべてを「母さ~ん。それホント~?」「嘘でしょ~お母さん」子供たちは信じていない。まぁそれも無理もないか。蒼星石は、というと。………読めない。ただ微笑してる。「そうだね、翠星石。僕は信じるよ」お前だけは信じてくれるですか。「えぇ~。蒼姉ちゃん信じるの~?」「絶対嘘だよ~」「ふふ。どうかな?不思議なことなんてこの世にはいっぱいあると思うよ」「ふ~ん。蒼姉ちゃんが言うならそうかな~?」「じゃあ、私も信じる~」蒼星石。この二人の信頼が厚いってのは、結構ですが、何ですか!この違いは!私はそんなに信用ないですか! 「ふふ。日頃の行いの違いじゃないかな?」!?心を読むなです!双子だからって、そうほいほい読んでいいもんじゃないですよ!「そうだね。でもそれより話の続きを聞かせてくれないかな?それから翠星石はどうしたの?」…何も分かっちゃいねぇです。まぁ、いいか。話を戻しましょう。LUNA SEA 第六話 「DESIRE」私にはその後の記憶がない。抱き締められたのだろうか?私は泣いてしまったのだろうか?気が付けば家にいて、天井を見上げていた。いつの間に陽は昇ったのだろう。染みを数え、意外と少ないかったことを知る。かなり古い家なのに…私の心はあの天井よりキレイなままでいられるのだろうか?分からない。涙を越えた。笑えもしない。どうすれば?…こんな時、今日も仕事が休みでよかった。仕事なんて、今は全く手につかないだろうな…、なんて考えている自分が嫌だった。 記憶を辿る。何を言われたのだろうか?「別れようか」なんて、彼は言ってなかったか?その時、私はその言葉を理解することなんてできなかった。いや、今でもだ。普段の私なら短気を起こし、彼に掴みかかっていただろう。…多分泣きながら。もう…いやだ。「…死んじゃいたいです」その言葉が私の心に深く染み込む。そうだ…一緒に死んでしまえば寂しくなんてない。…寂しい?何故そう思うのだろうか。フラれたことよりも…何で?でも考える気力なんてもうない。心にトゲが刺さりすぎて、血を流しすぎたようだ。何も…何も感じない。携帯にメールが入っている。私達が遊園地から出て、別れた後に送られたもののようだ。『ごめん』ただ一言。あぁ、やっと寂しさの理由が分かった…苦しいのは誰?本当に苦しんでいるのは?私なんかより、ずっと、ずっと苦しいはずなんだ。忘れてた。そんな…単純なこと…。急いでベッドから飛び下りる。行かなくちゃ、彼の所へ。何を話すの? 分からない。慰めるつもり? 分からない。できると思うの? 分からない。拒絶されても? まだ本心を確かめてない。…彼が好き? その通り、当たり前だ。頭の中からもう一人の自分が話しかけてくる。私を咎めるように。私を試すように。何ができるかなんて知らない。何をしようかなんて考えてすらない。夢中で彼の家へと走ってゆく。着いた。まずは深呼吸。落ち着くんだ。インターホンを鳴らす。『はい?』出てきたのはのりのようだ。『のりですか?翠星石です』声が裏返ってしまいそうになるのを、必死で抑える。『翠星石ちゃん?ちょっと待っててね。すぐに開けるから』のりが玄関へと出てくる。この一瞬一秒がもどかしく、待ち遠しい。朝早く、こんな時間に来られるのも迷惑だろうと、罪悪感に少し胸が痛む。でも、そんなこと構ってられない。彼女が出てきた。…目が赤い。やっぱり泣いていたようだ。「いらっしゃい、翠星石ちゃん。ジュン君ならお部屋にいるわよぅ」無理して取り繕った声が悲しい。「お邪魔するですぅ」リビングが視界にはいる。ちらかってなどいない。むしろかなりキレイだ。…そう、不自然なまでに。のりの悲しみが少しだけ見えた気がしてまた苦しくなる。そして、彼の部屋の前。「ジュン。入るですよ」返事がない。不安になり、慌てて中へと入る。なんだ…。寝てるだけじゃないか。「まったく。呑気なヤツです。どれだけ人を悲しませたら気が済むんですか。そーいえば、引きこもりになったこともあったですよねぇ?ほーんと、いつまで経ってもチビ人間はダメダメなままなんですから」誰にというわけでもなく、私は愚痴る。「まったく。お前ぇは、一人じゃ危なっかしいんですから、この翠星石様がついててやるですよ。べ、別に翠星石が一緒にいたいってわけじゃないんですからね!そっ、そうお前のためなんですからね!勘違いするなですよ、コンチクショー」…何をやってるんだ、私は。…今ぐらい素直になっても…いいよね?「ジュン。本当は…本当に大好きですよ…」寝てるよね?絶対。今なら…。優しく、気付かれないようにそっと、くちづけを…決めた…。最期まで、私は泣かない。ずっと、笑顔でいてやる。第六話 「DESIRE」 了
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