第5話「MOTHER」
Mother of Love奇跡よ今 僕を救え 何処へ行けば 何をすれば夜明けよ今 僕を救え 何処へ行けば 何をすれば夜明けよ今 僕を誘え 愛が欲しい 愛して欲しい「…は?」 今、なんて?「いや、だからさ。僕、ガンらしいんだ」理解できない。「確か膵臓だったかな?最近やった検診で分かってさ」嘘だ。「ステージ4、だって。よくドラマとかであるじゃん。あなたの余命はもってあと何ヵ月ですってやつ」聞きたくない。「くく…言われたよ。あと半年らしいんだ。あ、でもそれたしか4ヶ月前くらいの話でさ」嫌だ…「うん。つまり、僕の命はあと2ヶ月あるかないかってことらしいんだ」「ジュン…嘘ですよね?冗談ですよね?今日何日か知ってるですよね?四月一日じゃないですよ?ね?ジュン?嘘だと言ってくれるですよね?ね?」「…ごめん。嘘じゃないんだ」私の口からは気付けば悲鳴がもれていた。声になったのか、ならなかったのかすら、分からないほどに。LUNA SEA 第5話 「MOTHER」 「あ、そういえばですねぇ、こんな夢を見たことがあるんですよ」話に集中して聞いていた3人の意識を戻す。湿っぽい話はやっぱり苦手だ。娘なんてすでに涙目になっている。「不思議なもんなんですけどねぇ。お父さんが帰ってくる何日か前に、こんな夢見たんですよ。今になってやっと思い出したです」真っ白な壁。真っ白なカーテン。病室のベッド。ピッ、ピッと規則的な音を立てる機器。チューブに繋れた男の体。その側にいる女。泣いているのか?男が何かを口にする。聞き取れない。女も何かを答える。音がしない。だが、少しずつだけ。少しずつだけと音が届いてきた。「い……でも………に…るって………約……じゃ……かぁ!」「………んな」「…付…………………なんか………ですぅ!」私はそこで飛び起きた。夢は、あの夢は…。きっとあの男はジュンで、女は私だったのだろう。時刻は真夜中。…でも、どうしても自分を抑えられなかった。『嫌な夢をみたです…。少し話を聞いてくれないですか?』迷惑な話だ。夢の話に付き合わせるためにわざわざメールを送るなんて。けど…意外なことにメールはすぐに帰ってきた。『どうしたんだよ(笑)こんな時間に。ちょうど眠れなかったから良かったものを(笑)何だ?どんな夢?』良かった。ジュンからメールが帰ってきた…。彼の優しさに泣きそうになる。『ジュン。いつまでもずっと、一緒にいてくれるですよね?』今考えれば、なんて変な文面だ。それほど私は気が動転していたのだろう。『一体どんな夢見たんだよ?(笑)』言いにくいけど…『ジュンが病院にいて、死にそうになってる夢です…』あまりにも鮮明すぎた。『なんだよそれ。まぁ、できる限りは一緒にいるよ。約束する。保証はないけど』少し返信が遅い。まったく、あのチビはキザな台詞でも言おうとしたんですかね?そんなの似合いもしないのに。 でも、落ち着くことのできた自分がいるのも事実。『そうですか。まぁ、チビにはキザな台詞なんて似合わねぇですから、無理にひねりだそうとするなですよ。それとこんな時間にメール送ってすまんです。じゃあ、おやすみです。それと、ありがとです。』この空白は、精一杯の照れ隠し。きっと彼は気付かないだろうけど…。メールでも素直になりきれない私って一体…。メールの着信音がしたが気にしない。今度こそ優しい夢の世界へ…。『チビって言うなって(笑)もう僕の方がでかいだろ。じゃあな。おやすみ。やっと決めたよ。』私も人のことを言えない。彼にも隠したい事があったようだ。この空白はきっと、葛藤の証なのだろう。大切なことは決まって何もかも終わった後に分かってしまう。この文に気付けたなら、その時すぐに問いつめ、彼の所へと飛んでいったというのに。第5話 「MOTHER」 了
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