腹ペコの少女
懐かしき思い出薔薇水晶に会ってから数日経ったある日。僕は人間に限界は無いと知った…これはその時の話。「腹ペコの少女」あ~結局黒猫は捕まらなかったし。今日もなんか来そうなんだよな~。こういう時は一日中寝てやるかな…。「…そうもいかないんだよな。」だって食べ物が何一つ無いんだから…買いに行くしかない…。何も起こらないことを祈って…。「ふぅ。そんなに気を入れることもなかったな。1ヶ月分も買っちゃったよ。」後は帰って窓から何からすべて閉めて寝てしまえば今日は安泰だ。早く帰らないと……しかし遠足は帰るまでが遠足……最後に気を抜いた僕が馬鹿だったのかも知れない。家の前本当に後少しというところでそれは起こった。突然に視界に入ったのは黒と白(正確には少しピンク)一つはいつもの黒猫。一つは右目に眼帯をした少女。「猫って食べられるんですよね…。まだ私食べたことないから少し興味が…」なんとかすれば食べられるかもしれないけど絶対止めたほうがいい。というか昼間からそんなグロいこと言わないでくれよ。「それに私今お腹ペコペコで…」お腹ペコペコだからって猫食べようとは思はないよな。 それよりこれをどう見よう…。早く離れたいもんだが玄関前を占拠されてるし…。「なぁ猫は食べないほうがいいと思うぞ。」「私の好奇心は止められませんわ。と言うよりあなたは誰ですか?」「僕は桜田ジュンだ。食い物なら食わせてやるから…その黒猫は止めとけ。絶対無理だから…」「ジュンですね。私は雪華綺晶ですわ。……そういうことなら仕方ありませんわね。」早めに止めたほうがいい。あの黒猫は捕まらないだろうからな。「雪華綺晶か…。質問だが雪華綺晶。あの猫…本当に捕まえられると思うか?」「……正直無理ですわね。腹ペコの私では……いいえお腹いっぱいでも無理かも知れません。」お腹の減り具合で力がかわるんだ…。僕達がこんな話をしている間に黒猫は心底つまらないという顔をしてどこかに行ってしまった。「猫もどこかに行っちゃったし。家に入るか雪華綺晶?」「わかりましたわ。何を食べさせてもらえるか。楽しみですわ。」かなりお腹が減っていたの本当に嬉しそうな顔でついてくる雪華綺晶。んっ?そう言えば眼帯が左右で違うけど薔薇水晶に似てるな。と言うかそっくり? 「雪華綺晶?薔薇水晶っていう女の子知ってるか?」「ばらしぃちゃんは私の妹ですわ。…もしかしてばらしぃちゃんがシュウマイを食べさせてもらった人って貴方ですの?」やっぱりか。そういえば猫と対峙してる時デジャブっぽく見えたからな。「そうだけど…はぁ偶然もここまで重なれば奇跡だよな。」…または必然か。あの黒猫は頭が良すぎる。でもだからってなんで僕に小学生の女の子ばっかり導くんだ?僕はロリコンじゃないぞ。「偶然と必然は紙一重ですわ。偶然は必然、必然は偶然ともいいます。」「誰の言葉?」「う~ん。忘れましたわ。」そうですか。まあたしかに聞いたことある気もする。さて何を作ろうかな…。「雪華綺晶。なにか食べたいものがあるか?」「何でもいいですわ。ただ…」「ただなんだよ?」「量は三十人前くらいほしいですわ。」……………はいぃぃぃ!?三十人前?もうさ。甘い卵焼きとかアッガイ風デラックスシュウマイとかびっくりすることがこれまでにもあったけど……三十人前…これまでに無いインパクトだ。「まじですか?」「まじですわ。私は食べ物の事で冗談など言いませんわ。」 冗談抜きですか…。もうこっちとしては冗談であってほしいよ。「容赦なし?」「食べさせてくれるといったのは貴方ですよ?」それを言われると…。よし。やってやろうじゃないか。本当に食べられるか試してやる。「とりあえず早めにできるものから作るか…。」「早くしてほしいですわ。さっきからお腹が鳴りっぱなしです。」………まあ出せるもの出せるものどんどん出して小一時間……。無くなる無くなる。もうブラックホールに吸い込まれるごとく食べ物が全て無くなっていく。「まだ食べるのか?」「はい。まだまだいけますわ。」無くなるよ僕の1ヶ月分の食料が…。しかし優雅に食べるな。もう自棄だ。全ての食べ物を部出してやる。「これで終わりだ……。」「あらもう少しほしかったのですけど食べ物が無いなら仕方ないですわね。」「どんな体してんだよ。」「体だなんて…」妹と同じでそういうことに敏感のようだ。はぁ、何普通に分析してるんだ僕…。本当に僕の1ヶ月分の食料がこの腹の中に…。信じられない。「少しモノ足りませんが美味しかったですわ。ありがとうございました。」 お礼のタイミングも妹と一緒でバッチリ狙ってますな。………そして黒猫も狙ったようにあらわれた。「ふふ。お腹を満たされた私に挑むとはいい度胸ですわね。ちょうどあなた分くらいのスペースはありますわ。」「いやさっき無理だって言ってたじゃん。」「何事もやることが大切ですわ。勝てない敵でも気合いで勝利をもぎ取りますわ。」精神論言っちゃったよ。しかも本当に食べる気かよ。それは止めとけって……。さてどうなるんだろうか。僕の家は……やばい止めなくては…「薔薇水晶も無理だって言ってたぞ。」「それは…ますますやる気になりますわ。」あ~ダメだ。火に油注いじゃった。何も壊れないことを祈っていよう。両者一歩も動かず睨み合い。仕方ないので鍋とオタマでゴングを鳴らす。「覚悟…」カーンといい音がした後両者は高速で動きだし、なぜかは知らないが攻防を繰り広げる。「あ~床が…壁が…階段がぁぁぁあ」容赦なしでなぜか壊れていく僕の家…。修理費が…と言うかなぜ猫と小学生が壁とか床とか壊してるんですか?普通はじゃれあうくらいの関係だよね? 神様…あなたはなんという猫を僕に送ったのですか……。って現実逃避してる場合じゃない!?「ストップストップ。止めろ。止めてくれ。」「仕方ありませんわね。でも一戦交えてわかりましたわ。あなたは…強い。」激戦が終了すると両者は近付き握手(?)を交わす。黒猫は満足そうにニャ~と一声鳴き窓から出ていった。「ばらしぃちゃんがてこずるのもわかりますわ。彼女はとても強い。」「あ~そうなんだ…。んっ?彼女?あれ雌だったの?」「あら知らなかったのですか?あの子はれっきとした女の子ですよ。」なんで雌って言わないんだ?まあいいか新事実だな。しかしあの猫が雌だったとは…。「食後の腹ごなしにはぴったりの運動でしたわ。でも…」「そうなんだよな。この家の状態。たしかにボロだったけどこんなになるなんて…」嵐がさったような僕の家。ボロかったとはいえよくここまで壊したものだよまったく。「ジュンすいません。修理費はきちんと払わせてもらいますわ。」「そうか…ついでにさっきの料理の食費もほしいな。」半ば冗談で言ったんだけどどうやら雪華綺晶は本気にしたらしく…… 「ならこれくらいでいいですわね。」「えっ?なにこれ?」雪華綺晶は世間一般で小切手と呼ばれるものを僕に渡してきた。いやそこまではいいんだけど書いてる額が…「0何個あるのこれ?大丈夫なのかこんなに出して?」「はい。私のお小遣いの三分の一程度ですわ。」「これが三分の一!?」信じられない。こんなに貰っていいのだろうか…。「遠慮することはありませんわ。ほんの気持ちですから。それでは私はそろそろ帰りますので…さようならジュン。」「あっああじゃあな。」最後まで優雅に雪華綺晶は帰っていった。行動も持ってる資金もマジでお嬢様だな。……修理はベジータに頼もう…。…………………さて現在あれから六年経ったわけだが…「ジュン。料理はまだですの?」「さらに食べる量が増えたよな雪華綺晶。本当にその体どうなってるんだよ。」「体だなんてそんな…。」六年経っても同じリアクションされたよ。しかし食べる食べる。百人前は食べてるんじゃないか?「やっぱり優雅に食べるな。」「あんまり食べてるところを見つめないでくださいよ。恥ずかしい…」なんかグレードアップしてる気もするけど…気にしないでおこう。しかし僕は後どれだけ料理を作ったりいいのやら……。
このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー と 利用規約 が適用されます。
1文字以上入力してください
本文は少なくとも1文字以上必要です。
1文字以上入力してください。