『金糸雀堂』・その2
『金糸雀堂』大きな草原の真ん中に小高い丘がありました。丘の頂上には大きな大きな木が一本、木の下には小さなお店がありました。お店の名前は『金糸雀堂』。今日はどんなお客さんがくるでしょう? その2 今日は晴れ。草原を渡る風が窓から窓へ抜けていきます。準備をして待っていると、トントン・トントン、お客さんが来たようです。ドアを開けると長い髪で不思議な目の色をした少女が立っていました。「日が強くて陰るまで休ませて欲しいですぅ。」「いらっしゃい、貴女を待っていたかしら。」「私…をですか?」「だから冷たい飲み物を用意しておいたかしら。」テーブルについてもらうとグラスに麦茶を注ぎました。「さてさて、貴女の探し物は何かしら?」「まだなにも言ってないですよ?」「ここは『金糸雀堂』。。特別な物を探してる人しか来る事が出来ないお店かしら。」「…よくわかんないですね。」「さあ、何をお探しでしょう?」「…ええと、私には妹がいるですぅ。その…実は妹が大事にしてるオルゴールを、ちょ~っと落としたら壊れて鳴らなくなっちゃったです…だから同じ曲のオルゴールを探しているです。」それを聞くと立ち上がって壁に掛かっている扉の絵に近づいて。「そこの棚からノブを1つ選んで持ってくるかしら。」「この中からですか?えっと…これで。」「この絵にはめて回しなさい。」少女は恐る恐る絵にノブを差し込み回しました。ガチャリ絵の扉の先は小さな部屋になっていました。月明かりのような光が差す部屋の真ん中には台座があり、小箱が置いてあります。 小箱を開き流れ出した歌声にしばらく聴き入った後、振り向くと。「コレです!この曲ですぅ!」「それじゃ、これでいいかしら?」「ありがとです!これで許してもらえるですぅ!」「それじゃダメ。キチンと謝るかしら。宝物に代わりなんてないんだから。」「う…そうですね…ちゃんと謝って許してもらうです。それで…幾ら位になる…ですか?」「う~ん、貴女編み物出来るかしら?」「へ?ま、まあ人並みには出来るですよ?」「じゃあ、お代の代わりに手袋編んで欲しいかしら。」少女が手袋を編み終わる頃には、日は傾き始めてていました。夕日に染まる草原をスキップしながら帰っていく少女を見送ると、今日は店じまいです。「毛糸にしては随分頑丈な手袋かしら。」つぶやくと手袋をはめてみました。しっかりとしていて、丹誠込めて作ってあるのがよくわかります。「今夜はシチューが食べたくなったわ。」そう言うとパタンと扉が閉まりました。
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