【恋愛百景】Passione 第一話
【恋愛百景】Passione第一話
別に情熱的じゃあない、擦れ違ったままのお話
「蒼星石先生ーーーーッ! 何をしてるんですかーーーーッ! 脱走はともかく、理由を言って下さーーーーいッ!」失礼、僕は桃種出版の社員ですえー、さっきの発言の通り…作家の蒼星石先生が『また』仕事場から脱走しようとしたのを見つけた訳で…最早日程になっていると思いつつつかまえに行く訳です「担当君、たまには見逃してよ~」「駄目です」「なんで?」「先生は毎度『波紋の修行』と称して遊んでいるのを僕が知らない訳ないでしょうが」「つまらないの…」「…はいはいわかりましたよ…じゃ、今日の原稿を仕上げたら遊びに出掛けても良いですよ…」…我ながら甘いな…こりゃ…これじゃあ担当失格だね。うん「了解了解」「早くして下さいよ。編集長がカンカンですから」「うげっ…分かったよ…」そう言うとすぐに机に向かうま、この調子ならすぐに終わるやあの人、その気になると仕事が異様に早いからな
「終わった~」「はい」全く…その気になれば二時間弱で終わるってのに…「ねぇ…担当君」「はい?」「どうして僕が作家になったか…知ってる?」作家になった理由?いや全く知らないな「それはね…」そう言いながら先生は自分の過去を語り始めた姉との決別、祖父の死など…「…つまり、人間ってとてもあっけない部分があるんだ。だから僕はそれを皆に伝えたい。だから作家になったんだよ」「そうなんですか。何だか意外ですね」「何処が?」「いえ、先生って意外とまともな理由で作家になったんだな…と」「そう?」「ええ、先生は僕からみれば単なる怠け者にしか見えませんからね」「う…」「でも、芯が強くて…たまにひん曲がってる所もあるけど、自分自身に正直な人だと思いますよ」これは事実だけどね「確かにね。僕はいつも君に迷惑かけてるもん…でも、そう思っていてくれると嬉しいな」「ふふ…ありがとうございます」「でも…君と僕って色んな意味でそっくりかな?」「何でですか?」「だって、女の子みたいなんだもん」「いや、確かに女顔って言われますけど…」「よく間違われるでしょ」…図星…確かに僕は女顔さ「僕もよく男の人に間違えられてたし」「…笑えない…」「本当だね」クスクスって先生が笑ううん、確かにそう言う意味では似てるかも「あ、もうこんな時間だ。夕飯、食べるよね」「ご馳走になります」「待っててね」…ちょっぴり怠け癖がある男の子っぽい作家と、色んな意味で真面目な女の子みたいな担当とのお話って題材、どっかの作家が喜んで買うだろうな
第一話・完
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