座敷わらしと貧乏神
「ここ置いときますんで!じゃぁ」え?ちょまてよっ!中まで運べよっ僕の声も虚しく、排気ガスを吐きながら業者の車は去っていった。仕方なく自分で荷物を運ぶわけだが重いなコレ。しかも、僕の部屋は二階ときたもんだ。何度か往復して荷物を運び終える「ふぅ、やっと終わったよ」と、独り言を呟く僕。さて、今日から僕の新生活が始まるわけだ。一時は自宅警備員まっしぐらだった僕も中学、高校と無事に卒業し、この春から大学生と言うわけだ。一時の遅れを取り戻すべく一生懸命勉強した甲斐もあって、それなりに良い大学に入ることができたわけだが、一人暮らししなきゃ通えない距離にあったから姉ちゃんと大分もめたなぁ。「おいっ!」なんとか説得してようやく今に至ったわけだが、「おいっ!聞こえてるですかっ!?」「!?」急に声がした。びっくりして振り返ると、そこには女の子が立っていた。「今日からおめぇが住むですか?」え?なんで僕の部屋に女の子が?あぁ、そうか。僕の幻覚だな。「幻覚じゃねぇですよ」幻覚じゃないとすると………あぁ!分かった。間違って違う部屋に荷物を運んだってわけだ「ここは正真正銘おめぇの部屋です」とりあえず、一旦外にでて部屋番号を確認した。「206」確かに僕が借りた部屋だ。となると、アレだ。勝手に入ってきた近所の悪餓鬼か。「ちげぇです!」じゃぁ、なんで僕の部屋にいるんだ?幻覚でも間違いでも悪餓鬼でもないってんなら、このアパートは一部屋に1人女の子がオプションでついてくるってか?「そんなわけねぇです!翠星石は…あっ!名前は翠星石と言うです。」これは僕も名乗ったほうが……いや、不審者に個人情報を漏らすのはやめておこう。「翠星石は不審者じゃねぇです!」じゃぁ、ここにいる正当な理由を言ってもらいんたいんだけどな。「座敷わらしです」は?「ざ し き わ ら し!です!!」春先、暖かくなるとバカがでると言うけどこれはまた……「なっ!翠星石はバカじゃねぇです!正真正『嘘だっ!』今度は別の女の子が現れた。もちろん、某鉈女ではない。「その娘は嘘を言ってる」それは、当然嘘だろう。座敷わらしなんてものは存在しない。ただの空想上の妖怪だか神様かで実在するわけがない。中学生になるまでサンタクロースを信じて疑わなかった僕でもそんなことはわかる。「その娘は座敷わらしなんかじゃない!」いやいや、そんな熱弁しなくても分かってますよ「僕が座敷わらしだ!その娘は貧乏神で嘘を言ってるんだ」なっ!なんだってーーーーーーー!!!!!!!と、なるわけもない。まったくバカが1人増えただけか…「なっ!なっ!なっ!!何言ってやがるですか!?蒼星石 自分が貧乏神のクセして、また騙す気ですか!?」「何言ってるんだい?翠星石 僕が貧乏神?また君はそうやって嘘を…」……なんだ?この娘達は本気で言ってるのか?あっ!そうか、そうだ!このアパートに住んでる娘なんだ。それで引っ越してきた僕にどっきりを仕掛けた…というわけだな。「ちげぇです!いい加減信じろです!この…チビ人間!!」「そうだよ。信じて?僕は本当に座敷わらしなんだ」「また、おめぇはいけしゃあしゃあと!いい加減にしろです!!」「貧乏神はさっさとこの部屋から出ていってよ!」……お前等…ギャァギャァと「うるさーーーいっ!」「ひっ!?」思わず叫んでしまった。沈黙が流れる。「とりあえず、きちんと説明してくれない?」「だ~か~ら「じゃぁ、僕が説明するね」………彼女の話を要約すると、自分たちは昔からこの部屋に住み着いている座敷わらしと貧乏神で、新しい住人が来たから挨拶をしに出てきたと言うわけだ。仮に、この話が本当だとすると問題なのはどっちも自称座敷わらしと言うわけだ。「だから、翠星石がっ」「僕だよ」また、口論が始まろうとした時だった。インターホンがなった。「桜田く~ん。手伝いに来たよぉ」ドアの前に立っていたのは、幼馴染みの柏葉だった。彼女もまたここらにある大学に通うため数週間前にこのアパートの近くに越してきていた。「じゃぁ、入るよぉ」と、僕を押し退け中に入っていった。「あれぇ?まだ全然進んでないねぇ。まったくぅ、ダメだなぁ桜田くんは~」ニコニコしながら言う柏葉てか、キャラちがくない?「……久しぶりに…桜田くんに会えたから嬉しくて……それに、男は元気で明るく語尾を伸ばす女の子に弱いって『わしの恋愛テクは108式まであるぞぉ』って本に書いてあったからぁ」後半は聞かなかったことにしよう。うんっと、そんなことよりそこの娘たち……って、あれ?「女の子?いないけど」あれ?確かに…「どうしたの?」とりあえず、ことのあらましを話してみた。「桜田君……」口調をもとに戻した柏葉が神妙な顔をして「レオパ○スに藤○紀香はついてこないんだよ」は?「だから、レ○パレスに藤原○香はついてこないの。ましてや、こんなボロアパート…あっ、ごめんなさい。には、オプションで可愛い女の子がついてくることはないの…」そのネタはもうやったぞ。それに、その伏せ字、前のと合わせたら意味ないぞ……じゃなくて、信じてないわけか。柏葉の異常者を見るような目が痛い。………ここはっ!「な~んてなっ!ジョークだよ、ジョーク。まんまと信じたな?」柏葉は一瞬ぽかんとしていたが、すぐに笑って「なぁんだ、一瞬信じちゃった。もともと精神病の桜田君が基地外になったのかと思っちゃった」…………あまりにショックを受けたような顔をしていたのだろう。柏葉はすぐに「ジョークよ、ジョーク。さぁ、とっととやっちゃいましょう?」そうだった。柏葉は引っ越しの片付けの手伝いにきてくれたんだった。やはりと言うべきか流石と言うべきか、柏葉は見事なまでの手つきで片付けを終わらしていった。「えっと、それで終わりみたいね」「ありがとな。助かったよ」本当に助かった。多分、僕だけだった3日はかかった片付けをたったの1日で終わらしてくれたのだから「ううん、いいの。私が勝手に来たわけだし……えと、もうこんな時間だし帰るね」時計を見てみるともうすぐ七時になろうとしていた、勿論午後の。お世話になったわけだし、お礼にうちで食事にと誘ってみたが「ん~、そうしたいのはやまやまだけど、まだ『わしの恋愛テクは(ry』第82式夜のテクニック編は読んでないから、遠慮しとくね」……「だって、ご飯食べた後は………///」柏葉、お前が何を想像してるか分からないけどそんな顔を赤らめるイベントは起きないぞ「だから、読んだらまた誘ってね?」そんなもん読んだ後の柏葉を家に呼ぶのは、スタンドもなしにディオに立ち向かうくらい危険なのでやめておく「ふふっ、私は帰るから。また今度ね」そう言って、柏葉が部屋を出ていった瞬間「やっと帰ったですかぁ。」振り返ると、さっきの女の子がいた。「そりゃ、この部屋に住み着いてるですからいるに決まってるじゃねぇですか」じゃぁ、さっきまで何処にいたんだよ?と聞くと「僕と翠星石は座敷わらしと貧乏神だからね。」答えになってないぞ。「だ~か~らっ!座敷わらしにとって、姿を消すくらいどうってことねぇってことです!!」そう言って、姿を消しまた現れた。その能力のせいで僕が基地外扱いされそうになったわけだ。「アハハ、ごめんよ。僕たちはあまり人に見られたくないんだ。」「それより、人間!なかなかすみにおけねぇじゃねぇですか。あんな可愛い彼女がいるなんて」僕と柏葉はただの幼馴染みだ。「でも、確実に柏葉さんは……えと、桜田君って呼ばれてたけど名前は?」こんな怪しい存在に名乗っていいものなのか?「いいから、早く言えです!」ポカリと殴られたので渋々名乗ることにした。桜田ジュンだ「ジュン君か。僕は蒼星石。で、柏葉さんは確実にジュン君に惚れてるよね」なっ!なわけあるかっ!柏葉はただ僕をからかってるだけ……だ。「ふふっ、赤くなっちゃって」ぐっ!………っと!こんなほのぼのしてる場合じゃない!お前等、この部屋でてく気ないのか?「ねぇです」「ここは僕たちにとって、居心地がいい場所なんだ。だから、ないよ」居心地がいい?何か神秘的な力でも働いてるのか?この柏葉曰くボロアパートに「だーーーっ!そんな小難しい話はどうでもいいです!翠星石は腹が減ったです。何か作れです」おいおい、神様(?)のクセに腹減るのかよ「そうなんだよ。僕達はお腹も空けば、眠くもなるし」「トイレにも行けば、お風呂にも入るです」食費分に水道費、光熱費までかかるのかよ。尚更、でてって貰いたいわけだが「そんなもん座敷わらしの幸福パワーで、もとはとらしてやるですよ」でも、貧乏神もいるんだから……「ごちゃごちゃうるせぇです!さっさと作れです」「わかったから、叩くな!」こうして、僕と自称座敷わらし二人、計三人の奇妙な共同生活が始まったのであった。終わり
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