それは抱き枕との日常のカケラ。Ⅰ
それは抱き枕との日常のカケラ。Ⅰ彼、桜田ジュンの朝は早い。休日である土曜日でもだ。「……ふぁーあ…。ん、いい匂い」それは、深夜三十三時のアニメを見るためでもなければ、ジョギングで健康的な汗を流すためでもない。───目覚ましが仕掛けられているから。…何故仕掛けたのって?──朝の爽やかな一時を同居人と有意義に過ごすため。…誰が仕掛けたのって?──彼の愛するストーカー…もとい、抱き枕が。「おはよ。ばらしー」「あ、おはよう…ジュン」寝ぼけ眼のまま、朝っぱらから裸エプロンを着て朝食を用意している少女の頬を、指でつつく。スライムを扱うように。大福を扱うように。ゴムボールを扱うように。ふにふにふにふにふにと。「薔薇水晶。僕の抱き枕。ほっぺをふにふにすると赤くなります」「あぅ…ジュン……説明口調が素敵……」「そりゃどうも」ふにふにふにふにふにふに。「いやしかし、ホントにばらしーは料理上手いな」「……デ、デレ期って解釈で良いのかな…」「うむ。デレシャスゥ…むぐむぐ…」凍りついた空気をものともせず味噌汁を啜る。ぷはー。「ねえ…ジュン……。ビンタしても良い?」「ずず… 抱き枕にそんな凶悪な機能求めてません」「え、えっちな機能とかは……?」「あ、ご飯おかわりー」《次のカケラへ繋がる》
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