「新説JUN王伝説~序章~」第13話
「新説JUN王伝説~序章~」第13話あらすじ…偶然真紅が嵌めたジュンのソロモン王の指輪、それにより真紅は黒王からジュンに隠された秘密を聞く。しかし真紅は黒王の考えに納得はできず、両者の意見は真っ向から対立してしまう。そして今、ジュンへの思いと自らのプライドを賭けた一人と一頭の闘いが幕を開けようとしていた…今は穏やかな休日の昼下がり、だがこの空間はまさに戦場とも等しい闘気が渦巻いていた一人と一頭…真紅と黒王は互いに睨み合いその間に見えない火花を散らせていた…黒『どうした?来ないのならこちらから行くぞ…』紅「あら、レディファーストもわからないとは随分と無粋ね…まあいいわ、所詮貴方のような獣にそんな態度は望めないのだし…」真紅が黒王を挑発する黒『ふん、その減らず口…叩けなくしてくれよう!!』ダッ黒王が疾走し、凄まじい勢いで真紅との間合いを詰める紅(速い!!)真紅がそう思った時、黒い巨大はすでに目の前まで迫っていた紅「くっ!!」真紅は慌ててサイドステップで距離を開けたが…黒『遅い!!』『ドガアアァ!!』紅「きゃあああぁ!!」
横薙ぎに降られた黒王の顔面にはね飛ばされ真紅は宙を舞い地面を転がった紅「くっ…この私を地に伏せさせるなんて…許せないのだわ!!」立ち上がった真紅は服についた泥を払い怒りの声を上げたその時、間髪を置かぬ黒王の突進が再び真紅に迫った黒『これで終わりだ!小娘!!』だが…紅「ふっ…」真紅は一歩も動かずステッキを握りしめる黒『ふん!いくらその棒きれが硬かろうが貴様の細腕で我が衝撃を受けきれるものか!!』紅「それはどうかしら?」『ジャキィン!!』紅「はあああぁあああぁああぁあああ!!」黒『なっ!?…くぅっ!!』真紅はステッキを横一閃に振るう、だが黒王はそれを間一髪で踏み留まることで直撃を免れた黒王が踏み留まった理由…それは真紅が持つステッキから白銀に輝く刃が飛び出していたからであった紅「あら…流石は畜生ね…本能というやつかしら?」黒『くっ…姑息な真似を!!』紅「あら?姑息とは随分ね…ステッキはよくても刃物は駄目とは聞いてはいなくてよ?」
黒『何を…はっ!?』黒王の体から一筋の血が伝い落ちる流石の黒王も不意を付いた今の一撃を完全に避けきれていなかったのだ黒『くっ…小娘ぇ!貴様よくも私の体にキズを!!』紅「ふんっ…すぐに貴方のその薄汚い体を美しい赤で染めてあげるのだわ。」真紅が得意げに鼻を鳴らす黒『殺す…骨の一欠片もこの世に残さん…』それに対し黒王もまたより一層の怒りを露わにした『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…』そして周囲にはそれまでの数倍激しい闘気が渦巻き両者を包んだ…
紅「では、今度は私から行かせてもらうのだわ。」真紅がステッキの剣を構える紅「てええぇい!!」疾走…間合いに飛び込んだ真紅が剣を振るう黒『ふんっ…スピードだけはなかなかのようだな。』真紅の剣をかわしながら黒王が呟く黒『だが…これではどうだ!?』『グワァ!!』紅「!!」黒王はその巨大な蹄を高く上げ真紅に振り下ろした紅「くっ!!」『ガキイィイン!!』紅「きゃあ!!」真紅はその一撃をとっさに剣で受けたが強烈な衝撃で後ろに吹き飛ばされた紅「ちぃっ…」真紅は後ろ足で地面を踏みしめ再び構えを取るが今の一撃で両腕が痺れていた黒『ふっ…見るがいい、我が蹄の一撃を受け貴様の剣はすでに刃こぼれしている…それでは私の体にキズをつけることは叶わぬぞ?』紅「あら、それはどうかしら?」黒『虚勢を張るな…我が一撃を受け平気であるはずがあるまい…その腕では最早武器を生かしきれぬことは明白だ。』紅「くっ…」黒王にはわかっていた、その痺れた腕ではもう壁を砕くような強力な一撃を放つことは出来ないということを…
だが…紅「ふふっ…」黒『何が可笑しい?』絶対的に不利なはずの真紅が上げた笑いに黒王が問う紅「確かに貴方は私の剣を刃こぼれさせたわ…でも私の心はまだ刃こぼれなどしてはいないのだわ。勝手に思い上がらないでもらえるかしら?」黒『ぬかせ!!ならばその心の刃、我が一撃で砕いてくれるわ!!』真紅の言葉に激昂した黒王が再び真紅に迫る黒『はああああああぁああぁあああ!!』再びその巨大な蹄が真紅に振り上げられた紅「私は…逃げない!!」ダッだが真紅はそれを避けることなく逆に両脚を上げがら空きになった黒王の懐に飛び込んだ黒『甘い!このまま押しつぶしてくれる!!』黒王の巨体が懐に飛び込んだ真紅に倒れ込む紅「お願い…耐えて頂戴!!」真紅はステッキを真っ直ぐ地面に突き刺した『ドガアアアァァ!!』黒『ぐ…ぅ!!』真っ直ぐに突き立てられた真紅のステッキは倒れてきた黒王の巨体に折れることなく耐えていたそしてその全体重を一点に受けた衝撃はステッキを通じてそのまま黒王の胸部に返ってきた
紅「チャンス!!はあぁああぁあああぁあぁあああ!!」真紅は全身の闘気を右拳に込める紅「必殺…『絆ックル』!!」『ボグァアアア!!』黒『ぐはあああぁぁ!!』真紅の全力を込めた一撃が黒王にめり込む…その一撃を受けた黒王の巨体は赤い飛沫を上げそのまま横に倒れ込んだ紅「はぁ…はぁ…やったのだわ。ふぅ…」勝利を確信した真紅は膝を突き大きく息を吐いただが…黒『ぐぅ…ぐおおおおおおお!!』黒王はその巨体を震わせながらゆっくりと立ち上がった紅「なっ!?私の絆ックルを受けて尚立ち上がるというの!?」黒『ふんっ…貴様と同じように私にも譲れぬものがあるのだ!!我が主が拳王として立ち上がられることこそ私の生きる意味…それを貴様如き小娘に砕かれてなるものかあぁあぁッ!!』 『ドン!!』紅「くぅっ!!」黒王から放たれた凄まじい覇気が衝撃となり駆け巡る黒『来い…私はまだ負けてはおらぬぞ…』以前にも増した闘気を纏った黒王が真紅を睨みつけた
紅「いいわ…貴方がそうするように…私も私の誇りを賭けて貴方を討つわ…」スッ真紅は再びステッキを構えるそして…紅「はああああああぁああぁあああ!!」黒『うおおおぉおおぉおおぉおおお!!』両者が疾走しステッキと巨体がぶつかり合う紅「やぁ!はぁっ!てええぇい!!」真紅がステッキで連撃を放つが黒王はそれを捌きながら真紅に迫る蹄を使うと同時に大きな隙ができるため黒王は突進系の技で迫る真紅もまたバックステップで間合いを保ちながらのため強烈な一撃が放てないでいた黒『うおおおぉ!!』ダッ紅「なっ!?きゃあぁ!!」一瞬の隙を付いて黒王が猛進する真紅は不意を突かれ後ろに転んだ黒『砕けろおおおぉ!!』グワァ黒王がその巨大な蹄を振り下ろす紅「くうっ!!」真紅は横に転がり間一髪それをかわすそして蹄が振り下ろされた地面は轟音を上げ砕け散った黒『逃すか!!』黒王はなおも転がり逃げる真紅に蹄を振り下ろしてゆく『ドガァ!ガゴォ!グワァ!!』真紅の背後で地面の砕ける音が響くその一撃でもまともに受けたなら間違いなく骨くらい容易く粉々にされるであろうそれがもし頭ならば確実に致命傷だ…
『ガツッ…』紅「しまっ…!」黒王の蹄を転がってかわしていた真紅だがついに壁に追い詰められてしまった黒『もう逃げられんぞ小娘…これで終わりだ!!』黒王が嘶きを上げ蹄を振り下ろした紅「まだよ…!やあああああああ!!」真紅は振り下ろされる脚に向かいステッキを振るう次の瞬間…『バチイイイィィ!!』黒『ぐわああああああああああああああ!!』周囲に凄まじい音が響く…黒『ぐぅ…くっ…これは…』黒王がよろめき片膝を突いた紅「ふふっ…このステッキにはいくつもの暗器が仕込まれているのよ。」真紅がゆっくりと立ち上がる紅「その一つはこのスタンガン…先端付近から数万ボルトの電流が流れるのだわ。更に…」『ドン!』黒『ぐうぅっ!!』黒王の脚に鋭い痛みが走る…見るとそこには小さな針が刺さっていた真「その針には即効性の痺れ薬が塗ってあるのだわ…」先端から煙を上げるステッキを構えた真紅が呟く黒『ぐぅっ…おの…れ…くうぅ…!!』黒王の視界が歪む…体から徐々に力が抜けてゆく中、真紅は言葉を続けた
紅「無駄よ…その薬は象でも動けなくするわ。さぁ、今ならまだ降参すれば許してあげてもよくってよ?」黒『だ…誰が…貴様なぞに…ぐっ…』黒王の体から感覚がなくなってゆく、だが彼は必死に自らと戦っていたここで倒れるということは目の前の少女に負けること…そして何より屈辱的なのはその少女が言う甘い理想論に自らの信じてきた全てが否定されるということだもしそうであるならば黒王は自らの舌を噛み切って果てる方がマシであった…黒『ふざ…けるな…我が心の刃も…まだ折れては…おらぬ!!』その瞬間、黒王の双眼が見開かれた黒『ぐぅ…うおおおぉおおぉおおおお…ぬぅおおおぉおおおぉおおおぉぉお!!!!』黒王が激しい嘶きを上げる紅「そんな…馬鹿な…」真紅は目の前の光景を疑ったそれは強力な痺れ薬でまともに動けない筈の黒王の体が雄々しく立ち上がっていく光景…そこにあるものはただ一つ、自らが掲げる揺るぎない信念であったそして…黒『渇ッ!!』『ブシャアアァ…』黒王の一喝と共に針を受けた傷口から多量の鮮血が噴き出した黒『ふぅ…これで少しはマシになるか…』
黒王は筋肉を活かし傷口から血と共に痺れ薬を体外に排出したのだ黒『小娘…いや、真紅といったな…私をここまで苦しめたことは褒めてやろう…だが!私にも決して譲れぬものがあるのだ。』紅「それは私も同じよ、いくら貴方が詭弁と言おうともジュンをみすみす危険に晒す訳にはいかないのだわ…」黒『最早問答は無用…どちらが正しいかを今ここで証明しようではないか。』紅「望むところなのだわ…これで最後にしましょう。」両者が再び構える黒『はああああああぁああぁあああ!!』先に動いたのは黒王であった黒い巨体は嘶きを上げ真紅との距離を詰める紅「くっ!!」『ガァン!ガァン!!』真紅はステッキから再び毒針を黒王に向けて撃ち出した黒『甘いわぁ!!』だが黒王は左右にステップし巧みに全ての針をかわしていたいくそして気付けば真紅の眼前に黒王の姿が迫っていた紅「くっ!!」真紅はステッキの柄のスイッチを押し先端に電流を走らせた紅「はあああああああああ!!」真紅が目前の巨体に電流の流れたステッキを振るうだがその刹那、黒王の姿は消え、対象を失ったステッキは虚しく空を切った
紅「なっ…何処へ!?」黒『ここだ!!』紅「!?」真紅が慌てて声がした方向…上空を見上げたそこには黒い巨体が天馬の如く跳躍していた紅「くっ!!」真紅が慌てて毒針の照準を合わせるその時だった『ピカァァ!!』紅「きゃっ!まぶしっ…」黒王の巨体に隠れていた太陽が現れその光がマトモに真紅の目を襲った紅「ま…まずい!」黒『終わりだ…『奥義・天馬黒蹄砕』!!』黒王の全力を込めた双蹄が上空から降り下ろされる…紅「くっ…」バッ真紅は慌てて後ろに跳んだが…『ドガアアアアアァァアアアッ!!!!』紅「きゃああああああああああああああああぁ!!」大地が音を立てて砕け散る、直撃こそ免れたもものその凄まじい衝撃を間近に受けた真紅は大きく吹き飛ばされたゆっくりと砂塵が晴れる…そこには衝撃で巨大なクレーターができていた紅「く…うぅ…」大地に伏した真紅が残された力を振り絞り立ち上がろうとする目の前には一緒に吹き飛ばされたステッキ…真紅は必死にそれを拾い上げようとするが…『グシャア!!』紅「!?」そのステッキを巨大な蹄が踏み潰した
黒『お前はよくやった…だが、これで終わりだ…』黒王が真紅を見下ろして呟くその言葉を聞いた真紅はたちまち全身から力が失せていった…黒『とどめだ…せめて一撃で楽にしてやる。』黒王が蹄を上げる黒『さらばだ…はああああああぁああぁあああ!!』紅「-ッ!!」真紅が目を閉じ覚悟を決めたその時であった『ガキイイィン!!』黒王の蹄が何かに遮られた黒『なっ!?』紅「-?」真紅がゆっくりと目を開けたそこには…紅「ジュ…ン?」黒王の双蹄を素手で受け止めるジュンの姿があった黒『わ…我が主!?』ジュンはそのまま蹄を掴み闘気を両腕に集め…ジ「てええぇええええええええぇえええぇい!!」グワァ!!黒『なっ!?』そのまま黒王の巨体を持ち上げたジ「覇ああああああぁああぁあああ!!」ブォン!黒『ぬわああああああああああああ!!』『ドオオオォオオン…!!』そしてそのまま黒王を投げ飛ばしたジ「ふぅ…真紅!!大丈夫か!?」ジュンは慌てて真紅に駆け寄る紅「え…えぇ…」真紅は目の前の信じられない光景に言葉を無くしていたジ「良かった…ほら、立てるか?」
ジュンは小さく笑って真紅に手を差し出すそれは真紅がよく知る優しい桜田ジュンの姿であった紅「え…えぇ。」真紅はジュンの手を取るジ「ん?あぁ~!!僕の指輪!やっぱりお前がとってたのかよ!?」ジュンが真紅に怒鳴る紅「ご…ごめんなさい、でもこれのせいでとんだ目に遭ったのだわ…」ジ「兎に角…これは返してもらうぞ…」ジュンは真紅の指から指輪を抜くと自らの指に嵌めたジ「さてと…黒王!!これはどういう事だ?説明してもらおうか…」ジュンが黒王に問いかけた黒『いえ…これは…その娘の貴方に対する考えが我慢できず…』ジ「黒王…一度だけ言っておく、何があろうと今後一切真紅を傷付けるような真似は僕が許さないぞ?」黒『で…ですがその娘は…』ジ「黒王よ!!主である我の命が聞けぬかあぁっ!?」グワァ!黒・紅『!?』ジュンの激しい怒号が周囲の大気を震わせた…黒『も…申し訳ありません…今後一切そのようなことはせぬと誓います…』黒王は申し訳なさそうに弱々しく頭を下げたジ「よし…わかってくれたらいいんだ。真紅だって真紅なりに僕のこと考えてくれたんだと思うしさ…それも分かってやってくれ。」
黒『はい…申し訳ありませんでした…』ジ「さて…真紅?」紅「な…何!?」ビクゥ!ジ「こらこら…そんなに怯えるなよ…お前を責める気なんてないよ。たださ…黒王だってあれで真剣に僕のことを考えてくれてるんだ。」紅「あ…貴方は本当にその拳王とやらになる気なの?誰かを傷付けても平気な…そんな人間になるつもりなの!?」ジ「わからない…ただ…」紅「ただ?」ジ「今まで理不尽に傷付けられてゆく大切な人達を見て思ったんだ…そんな奴らから友達を…家族を…いつか出会う愛する人を守りたいって。でも思うだけじゃ駄目なんだ、僕が強くなることで誰かを救える…雛苺や翠星石、金糸雀の笑顔を見た時そう思った…だから僕はもっと強くなりたい!!この拳で誰かを守れるってんなら僕は傷付こうが構わない。 だって、生きることは闘うこと…そう教えてくれたのは真紅、お前だろ?」紅「!?…ジュン…そぅ、分かったのだわ。もう私は何も言わない…」ジ「すまない、妙な心配をかけたな。」紅「いえ…本当に強くなったわね、ジュン。嬉しいのだわ…」ジ「真紅…」紅「それでこそ私の家来に相応しい殿方よ。」ジ「なっ…お前なぁ…」
紅「でも…一つだけ約束しなさい。」ジ「何だよ?」紅「絶対に生きて帰ってくること…もしできなければ荊の鞭で百叩きよ?」ジ「ははっ…そりゃ勘弁、なら絶対に死ねないな。」紅「よろしい…さ、紅茶が飲みたいわ。抱っこして頂戴。」ジ「へいへい…ほらよっと。」ヒョイ紅「ふふ…よろしい、でもジュン?よくあの一撃を受け切れたわね…しかもそのまま投げ飛ばすなんて貴方本当に人間?」ジ「あぁ…あれはさ、ほら、僕が今和訳してる巻物があったろ?あれに書いてあった技で…確か『転龍呼吸法』って名前だったかな?何でも人間の普段使われてない筋力を最大限に引き出す呼吸法らしいんだよ。」紅「ふぅん…それなら買い物の荷物持ちもたっぷりと頼めそうね…(にやり)」ジ「勘弁してくれよ…」紅「ふふ…ねぇ、ジュン?」ジ「何だよ?」紅「助けてくれて…ありがとう///」ジ「あ…あぁ…」紅「さ…さぁ、ぼさっとしてないで早く行くのだわ///それと服も汚れたから代わりを用意なさい。」ジ「はいはい、わかりましたよ、お嬢様…」そんな会話を済ませながら二人はいつものたわいない日常に戻って行ったのであった…続く
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