~死神のキス~
~死神のキス~「ジュン~♪いらっしゃぁい♪」「あぁ…最近来れなくて悪かったな。」「いいわよぉ♪こうして貴方が来てくれたんだものぉ…」とけるほど甘い香がたちこめる部屋、僕を誘うとろんとした彼女の目…それは僕の理性を曇らせ、自分を見失わせるタチの悪いワナ。「最近来てくれなかったから水銀燈寂しかったのよぉ」「あぁ…最近真紅が…むぐっ?」言葉をつむごうとした瞬間、僕の唇が塞がれる。「んっ…ぷはっ…私の前でその名前を出さないでぇ?今は貴方は真紅のモノじゃないんだからぁ…」「あぁ…すまん…」「ふふっ…いいのよぉ…真紅と言えば…あの子とはいつ別れてくれるのぉ?」「悪い…なかなかきりだせなくて…」「そぉ…」「すまん…」
「いいの…そのかわり…今日は楽しませてねぇ?//」そう言って恥ずかしそうにうつむく彼女はとても魅力的に見えた。まずい…真紅には申し訳ないがいつもの悪いクセが出てきそうだ…僕は我慢出来ずに彼女を抱きよせ、唇をむさぼる。「ん…ちゅくっ…もうっ…ジュンったらぁ…」「水銀燈…」白くすべすべした彼女の体を求めれば求めるほどに酔いしれてしまう…彼女は何度も僕にキスをする。唇だけではなく首、耳、全身に…「(いつもならこんなことしないのに…)」多少違和感を持ったが気にもとめない。まぁこんなときもあるさ…
しかしこのとき僕は気づいていなかった。この首につけられた"傷跡"に……コトが終わり、服を着ようとすると「私が着せてあげるわぁ」と言ってYシャツを着せ、ネクタイを締め、スーツを着せてくれる。「あぁ…ありがとう」「いぃえぇ♪あ、ほらマフラーも…はい、出来たわぁ」「悪いな…じゃぁ…また」「うん。いつでも待ってるわぁ♪」別れのキスをかわし、僕は真紅が待っている家へと足を運ぶ。彼が出ていき、ドアが閉まると水銀燈はつぶやく「…貴方だけ家庭をもって幸せなんて……絶対に…絶対に許さないんだからぁ…ふふっ、あはは…あはははっ…!」
「よし、水銀燈の部屋の香はついてないな…」何度もスーツやYシャツ、マフラーを匂って確かめてみる…どうやら大丈夫のようだ。それを確認すると、愛する真紅の待つ我が家へ入ってゆく。「ただいまー…」「おかえりなさいなのだわジュン。遅かったのね?」真紅が笑顔で玄関まで迎えに来てくれた。その笑顔を見ると罪悪感がつのる…「ん…あぁ、途中で懐かしい友達に会ってね。しばらく飲み屋で話し込んじゃったよ」…もちろん嘘。
「そう…じゃぁ夕飯はもういらないの?」「いや…実は腹ぺこぺこでさ…」「わかった…じゃぁ早速準備してくるるのだわ。ちょっと待ってて?」「あぁ…頼む」食事を待っている間にマフラーとネクタイをほどき、スーツを脱ぐ。さすがに食事中はね。しばらくして真紅が食事を運んできた。「はい、簡単なものでよかった?」「ありがとう。いただきます…」うん、やっぱり美味い。すきっ腹に真紅が作ってくれた夕飯がよく効く。「美味しいよ、しん…ひっ!?」ふと真紅のほうを見て僕は思わず声をあげてしまった。彼女は笑っていた…すごく冷たい顔をして…
「ねぇジュン…貴方…死神にでも取り憑かれてしまったの?…」なんだ?彼女の言葉の真意が読めない…「な、なにを言っ…」「とぼけないで…その首の傷は何よ!」その言葉に"虚"をつかれたような気がした…しかし僕は(まさか…)と思いながら、無意識に苦笑いを浮かべていた「ジュン…目をそらすのは何故なの?」真紅が言い終わらないうちに洗面所へ走る。「ちょっと…ジュン!」「はぁ、はぁ……なっ…!?」鏡の前に立ちすくんでる僕の瞳に写っているのは…首につけられた、まさに"死神のキス"と言えるべき逃げられない、消えることのない証拠……
「あ、あの女…!」「あの女って…誰?」はっとして振り向くと、氷のように冷たい表情で僕を睨む真紅がいた。「し、真紅っ…これは…」まずい…この先は…今はまだ見えない未来は想像もつかない…そこには何がある…?いっそシラを切るか?いや、ダメだ…強がれば強がるほどに見透かされてしまう…くそっ…僕には「敗北」を意味する"JOKER"が与えられたようだ…コイツを破り捨てて逃げることはできないのかっ…?「ジュン…何か言ったらどうなの?」真紅に急かされ、たまらず苦しい言い訳を繰り返す。
"おそらく理解はしてくれない"だろうけど…真紅をごまかすための言い訳をひとしきり言うと、彼女は「そうなの…」と小さく呟いただけ。しかし…それはまさに嵐の前の静けさだった……「…真紅?」たまらず真紅に声をかける…すると僕の意識は急にブラックアウトした。気がつくと僕は薄暗い部屋で服を脱がされ、ベッドに寝かされていた。「うっ…一体…?」起き上がろうとするがそれはできなかった。僕の手と足はロープで縛られていたのだ。「くそっ…これはっ…?」ん…目がだんだん慣れてきたな……するとふとドアが開く音がする。音がした方に目を移すと、真紅がドアのところから無表情で僕を見下ろしていた。
「真紅っ?ぼ、僕が悪かった…許して…」真紅は何も応えずに近づいてきて、僕の首の死神の傷跡に爪を立てた。「痛っ…!?」血が流れだす。真紅はその光景をしばらく見ていると急に笑いだした。「ふふふふっ…きゃははははっ!」「し、真紅…?」「ふふ…ジュン…ねぇジュン…」真紅はそう言って笑いながら僕の体に何度も何度も爪を立てていく…痛みに耐えるだけの僕は、ただ何もできない人形のよう。もてあそばれるのは慣れてるけど、僕は●じゃないっ…痛い…あまりの痛みに涙が出てくる…だけどそれくらいでは彼女は止められない……「真紅っ…もう…やめて…」「ふふふ…きゃはははは!」純白だったベッドは僕の血で真っ赤になってゆく……僕の意識は…完全に消えた…「ふふふ…言ったでしょ?自分だけ幸せだなんて絶対に許さないんだからぁ…」The End...
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