幼馴染
季節も冬になり、寒くなったある日・・・学校から帰るジュンは、この寒さに耐え切れず自分の肩を抱きしめ身震いした。「さ、さむいな。今年は暖冬じゃなかったのかよ」そう呟きながら家の鍵を開け家の中に入る。今日は姉ののりが部活の合宿で家には誰も居ないせいか、家の中はやけに静かだ。ジュンは自分の部屋に行き制服から部屋着に着替えた。「・・・(あいつ、そろそろ来るかな?)」ジュンは時計を見ながらそんなことを考える。今朝、幼馴染のあの子に今晩のことを言ったら晩御飯を作りに来てくれると言ってくれたのだ。放課後、彼女は『晩御飯の材料を買ってくる』と言って先に帰ってしまった。「・・・(なにを作ってくれるのか楽しみだな)」そんなことを考えてると『―――ピンポーン』とチャイムが鳴った。彼女が来たのだ。ジュンが玄関のドアを開けるとそこにはスーパーの袋を持った幼馴染が立っていた。
「いらっしゃい。さぁ上がって」ジュンがそう言うと彼女は『お邪魔します』と答えて一目散に台所へと向かう。彼女は子供の頃から何度も家には遊びに来ているので場所を教えなくても大丈夫だ。ジュンも玄関を閉め彼女の後に続いて台所に向かう。台所に行くと彼女は制服の上からエプロンを着けているところだった。「今日は何を作るんだ?」ジュンが彼女に尋ねると彼女―――翠星石は髪を一つにまとめながら答えた。「ん?今日ですか?今日は寒いですからシチューにするです。とびっきり美味いのを作ってやるですから覚悟しておけです!」そう言って翠星石はジュンに向かって――ビシッと指さしてきた。「わかったwww。楽しみにしてるよ」そう答えながらジュンは椅子に座り翠星石を眺める。「?なんですかジュン?料理が出来るまでテレビでも観てやがれです」「今の時間じゃ面白い番組ないしな。・・・そうだ!僕も手伝っていいかな?」「しゃーねーです。でも、邪魔だけはするんじゃねーですよ?」「まかせなって」そう言って二人で料理を作ることに。
「じゃぁ、これとこれを適当な大きさにに切るです」「わかった」ジュンの目の前にはレタスやアスパラなど野菜が置いてある。多分サラダ用のだろう。翠星石のほうは鶏肉や野菜、シチューの具材が並んでいる。「~~♪~~~~♪」機嫌が良いのか、翠星石は鼻歌を歌いながら手馴れた手つきで材料を切っている。それを見ていたジュンは驚きの声を上げた。「流石というかなんというか、すごいな」「伊達に家でも作ってねーですよ。それよりジュンのほうは終わったですか?」翠星石がジュンのほうを見てみると、まだ切っていない野菜がいくつか転がっている。「なにやってるですか。さっさと切りやがれです」「ああ。悪い悪い」翠星石に言われ急いで切ろうとしたせいか、ジュンは野菜と一緒に指先を少し切ってしまった。「・・・・っつ!!」「ジュン!大丈夫ですか!?」翠星石はジュンに駆け寄りジュンの指先を見つめる。「大丈夫だよ。少し切っただけだから」「いいから。ちょっと見せるです!
ジュンの手を掴み引き寄せてみると、切ったところから血が垂れている。「まったく・・・しゃーねー奴です」そう言いながら翠星石はおもむろに切った指を口に含んだ。「お、おい!翠星石!///」「・・・?にゃんでしゅか?」ジュンの指をくわえ、上目づかいでジュンを見る翠星石。どうやら自分のしていることに気づいていないらしい。そんな間にも翠星石の小さい舌がジュンの指をチロチロと舐めている。「いや・・・その・・・・指・・・なんだけど・・・///」「・・・・・・あ//////」ようやく気づいたのか、翠星石は慌てて口から離した。「ま、まったく世話の焼ける奴です。あ、後は翠星石がするですから、ジュンはバンソウコウでも貼ってテレビでも観てやがれです!」そう一気にまくし立てられてジュンは台所から追い出されてしまった。
―――そして夜「ジュン。晩御飯できたですよー」翠星石が居間でテレビを観ていたジュンを呼びに来た。
ジュンが台所に行くとそこには、綺麗に盛り付けられた料理が二つテーブルの上に置かれていた。「おぉ!すごいな」「ま、翠星石にかかればこんなもんです」と、胸を張り自信たっぷりに言う翠星石。そんな翠星石を苦笑いしつつ、椅子に座る。「さっそく食べるです」「そうだな」お互いに手を合わせ、「「いただきます」」と合掌をして食事にかかる。「・・・・・(じーーーーーー)」「・・・・・・」「・・・・・(じーーーーーーーーーー)」「・・・・・・・・」さっきから自分の料理に手をつけずジュンをじっっと見つめる翠星石。ジュンはたまらず口を開いた。「さっきからずっとこっちを見てなにしてるんだ?」「・・・・え!?な、なな、なんでもないですよ?い、いいからさっさと食いやがれです!」「わっかた。わかった」翠星石の作ったシチューやサラダetc・・・。それをジュンは黙々と食べる。翠星石はその姿をまたしてもじっと見つめ、何か言いたそうな顔をし、おずおずと聞いてきた。「・・・えっとジュン?」「?・・なんだ?」「その・・・おいしいですか?」「・・・・は?」「だ、だから!翠星石の作った料理はぉぃsゴニョゴny」「・・・(あぁ、なるほどね)」その表情でジュンは気づいたのか、自分の食べていたシチューをすくい、翠星石の口元に持っていく。
「・・・え?」「気になるなら、自分で食べてみろよ・・・ほら、あーんして」「・・・・あ、あーん」――パク。もぐもぐ。「どうだ?」「お、おいしいです///」「だろ?俺も同じ気持ちだよ」「そうですか///よかった・・・って、おいしいならおいしいってはっきり言いやがれです!」「なんだよ。そんなに怒ることないだろ?」「しょうがねーです。許してやるです。そ、そのかわり・・・」「・・・?」「も、もう一回『あーん』ってしてほしいです///」そんな翠星石を見て、ジュンは微笑みながらもう一度食べさせてあげるのだった。
食事も終わり、ジュンと翠星石は一緒にテレビを観ていた・・・。『――今週は冷たい寒気が来る為、夜はとても冷え込むでしょう』ニュースキャスターがそんなことを言っているのを聞きながらジュンは身震いをした。「どうりでこんなに寒いわけだ」「今週いっぱい続くんですか?最悪ですぅ」同じソファーに座っている翠星石もとなりで呟く。今はもう制服ではなくラフな格好になっている。翠星石も食事が終わった後、のりの部屋で着替えてきたのだ。どうやら買い物のついでに、自分の家に取りに帰ってたようだ。天気予報が終わるとき、翠星石は『あ!』っと声を上げ、立ち上がった。「そうえば、ジュンに渡すものがあったです。ちょっと待っとくですよ?」そう言って翠星石は居間を飛び出し、しばらくして戻ってきた。その手には、一つの紙袋が握り締められていた。「なんだそれ?」「これはですね」そう言いながら翠星石は袋の中身を取り出した。「じゃーん!翠星石の手編みのセーターですぅ!ジュンにプレゼントするですよ」そういってセーターをジュンに渡す。「僕にくれるのか?ありがとう///・・・あれ?」
もらったセーターを広げてみると、なぜか大人、二人分の大きさのセーターが・・・。「こ、これはいくらなんでも大きすぎだろ・・・」「そ、そうですか?翠星石がいつも見ているときはジュンの背中はこれぐらいなんですけど・・・」そう呟きながら――しゅん。となる翠星石。そんな翠星石を見たジュンは手に持っているセーターを着て、翠星石をセーターの中に抱き入れた。「・・・あ。ジュ、ジュン///!?」「こうすれば問題ないだろ?」ジュンの言葉に翠星石は無言でうなずいた。しばらくそのままでいた後、翠星石は口を開いた。「・・・・・ジュン」「ん?どうした?」「きょ、今日はこのまま、一緒に寝てもいいですか//////?」「僕なんかでよければ///」こうして二人っきりの夜は過ぎていった・・・。―――おしまい。
このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー と 利用規約 が適用されます。
1文字以上入力してください
本文は少なくとも1文字以上必要です。
1文字以上入力してください。