第八十四話 JUMと焼き芋
「一つ屋根の下 第八十四話 JUMと焼き芋」
「お?JUM何食べてやがるですかぁ?」学校が終わり帰宅した僕は、リビングでテレビを見ながらコンビニ買ってきた白いものを食べていた。「ん?肉まん。コンビニで見たら食べたくなってさ。」そう、それは肉まん。今の季節、コンビニのレジの隣に鎮座されてるアレだ。「まぁ~ったく、そんなもの食べて。晩御飯食べれなくてもしらんですよ?」「大丈夫だって。何なら、翠姉ちゃんも食べる?」僕がスッと肉まんを差し出す。すると、即座に翠姉ちゃんはそれを受け取り口に含む。「まぁ、そこまで言うなら食べてやるです。ん~……おいひいですぅ~。」「今の時期は美味しいよね。肉まん、おでん、焼き芋が御三家だね。」翠姉ちゃんが、肉まんを半分に割り口に含む。割れた断面から肉やタケノコといった具と湯気が出ている。「ただいま~なの~!あ、JUMと翠星石が肉まん食べてるの。ずるいの、ヒナも食べたいのよ~!」ドタバタと音を鳴らしてヒナ姉ちゃんが帰ってくる。そして、僕の肉まんを発見するとそのまま背中にダイブ。僕の持っていた肉まんにかぶりついた。「ん~、温かくて美味しいのぉ~!」「あーあー、後1個あるからあげるのに……って、あれ?」僕は袋を見る。おかしい。後1個在庫があったはず……そう思って視線を前に向ければ翠姉ちゃんが肉まんを半分に割って食べていた。ちょっと待て。それってもしかして……「翠姉ちゃん……それ、2個目?」「な、何を言ってやがるですかぁ!?証拠がどこにあるですぅ!!」「いや、証拠も何もさ。さっき1個目を半分に割って食べてたのに、今手にあるのは半分に割ったばっかりっておかしいでしょ。」「うっ……ち、違うです!こ、これはキラキーの陰謀ですぅ!!」相変わらず往生際が悪い。それに、勝手にキラ姉ちゃんのせいにしたら駄目ですって。
「翠星石は食い意地がはってるの~。」「う、うるせぇです!!チビ苺に言われたくねぇーですぅ!!」「どうでもいいけど、2個も食べたら翠姉ちゃん太るよ。」僕が言うと翠姉ちゃんはビクッと背中を震わせる。何か思い当たる節でもあるのだろうか。そんな事を思ってると僕の携帯が鳴り響いた。着信元は蒼姉ちゃんだった。「あ、JUM君。今家に居る?いるなら門前に来てくれないかな?姉妹いるなら姉妹も連れて。」「ん?いいけど、何かあるの?まぁ、餌食べた暇な二人が居るから連れて行くよ。」僕は携帯をきると、翠姉ちゃんとヒナ姉ちゃんを連れて門へ向かう。門には、大きなダンボールと蒼姉ちゃん。そして、軽トラにのった柴崎先生。通称おじじ先生が居た。「それじゃあ、先生有難う御座います。美味しく頂きますね。」「うむ、カズキが喜んでくれればワシも嬉しいわい。それじゃあの。」柴崎先生は車を発進させる。そして、残った僕達はそのダンボールを家へと運んでいった。「おもっ……蒼星石、おじじに何貰ったんですかぁ?」「ん?それは後でのお楽しみだよ。きっと美味しいものだからさ。」「ほんと!?うわーい、楽しみなのぉ~!」「うわっ、ヒナ姉ちゃん手を離さないで!!お、おもっ!!!!!」そんなこんなで。僕等は何とかダンボールを家に運ぶ。そして、姉妹が続々と帰宅してくるとようやく、ダンボールの中身を開いたのだった。
「お芋……?にしても、凄い量かしら~。」その中身は芋だった。ええ、もう芋です。見事なまでに芋です。「それにしても、相変わらずおじじ先生は蒼星石に入れ込んでるわねぇ~。」「おじじの野郎、いくら蒼星石が亡くなった息子さんに似てるからってカズキカズキって……蒼星石はこぉんな可愛い顔で翠星石よりスタイルもいいのに……って、何かムカついてきたですぅ。」「先生を悪く言わないで。それより、どうしようか。これ。」大量の芋だ。肉じゃがやカレーにするか。それでも、この量は少し厳しい気がする。「……芋判子なんてどうかな……年賀状も近いし……」「私はやぁよぉ。指怪我したら痛いしぃ~。そもそも薔薇しーほど手先器用じゃないしぃ。」「駄目ですわ薔薇しーちゃん!食べ物を粗末にしてはいけませんわ!」そもそも、芋判子になんてしないでもキラ姉ちゃんが勝手に食しそうな気がする。「はいは~い!ヒナねー、焼き芋にしたいのー!」ヒナ姉ちゃんが元気よく手を上げて提案する。「あら、雛苺にしてはいい案ね。それでいきましょう。」真紅姉ちゃんがヒナ姉ちゃんに賛同する。「うん、いいかもね。丁度庭に枯葉あるし、それで焚き火して焼き芋作ろうか。」とまぁ……こんな冬の夜に焼き芋大会が行われる事になってしまった。何でこうなったのだろう。まぁ、強いて言えば……我が家だから……って気がする。
「うぅっ、寒いわぁ~。ねぇ、JUM。あっためてぇ~!」「ちょっと水銀燈!JUMから離れなさい!引っ付きすぎなのだわ!」僕に引っ付く銀姉ちゃんを引き離そうとする真紅姉ちゃん。こんな寒いのに元気な事だ。「ん~、いい匂いですわ…もう食べれますよね?」「……まだ2分しかたってないよ、雪華綺晶。」キラ姉ちゃんの目がランランとしている。まぁ、キラ姉ちゃんなら生でもいけそうな気もするなぁ。パチパチと音をたてて、集めた枯葉が燃えている。その中にはアルミに包まれた芋。「やっぱり外は寒いかしらぁ~……でも、焚き火が温かいかしら。」「うん……焚き火ってこんなに温かかったんだね。」「たまには、こうやってみんなで楽しむのもいいものですねぇ~。」僕等は何時しか焚き火を中心に、円を作って焚き火に当たっていた。揃いも揃って手を出している。手から熱が伝わり、体に伝わっていく。確かに風は冷たいけど、体は温かい。とても不思議な感じだ。「……よっし、みんなぁー!お芋焼けたよ~!」蒼姉ちゃんが言う。すると、それまで微妙にセンチだった姉ちゃん達は一斉に群がる。あれですか、色気より食い気って奴ですか?「あつっ!あつっ!ふふっ、でもこれくらいでは私のお芋への愛は拒めませんわよ?」キラ姉ちゃんが意味不明な事を言って素手でアルミと格闘している。軍手あるのに……「JUM、早く私のアルミを剥がしなさい。」「はいはい、分かったよ……あっつぅ~…でも、うん。美味しそう。綺麗な黄金色だ。」「ふふっ、真紅ぅ?お芋食べ過ぎてオナラしたらやぁよぉ?」「なっ!?そんなはしたない真似するわけないでしょう?それに、どっちかと言えば貴方の方が危ないわよ?乳酸菌と繊維質でお腹スッキリすぎなのだわ。」「うっ……確かに言われてみれば……」しっかしまぁ……晩御飯が焼き芋だなんて我が家くらいだろうなぁ。
「あ、JUM君。マーガリンいるかな?」蒼姉ちゃんがスッとマーガリンを差し出してくれる。「マーガリン?何に使うの?」「焼き芋に塗ると美味しいんだよ?ほら、こんな感じにさ。」蒼姉ちゃんがスッと僕の芋にマーガリンを塗ってくれる。熱のせいか、あっと言う間にマーガリンは溶ける。「それじゃあ……おっ、これ美味しい……」「ふふっ、そうでしょ?沢山あるから、沢山食べてね。」蒼姉ちゃんが微笑みながら言う。いや、本当に美味しいんだ。これがさ。「あー!翠星石、それヒナのなのぉー!」「うるせぇですねぇ!チビチビはチビらしくそっちの小さい奴を食べてればいいんですぅ!」「もしゃもしゃ…うんうん、やっぱり冬は焼き芋ですわね。」「………芋判子……作りたかったな……」「う~……ちょっとお腹一杯になってきちゃったかしら~。」「JUM、何をしてるの?早く紅茶を淹れなさい。」「ふふっ、でも偶にはこういうのも悪くないわねぇ~。」何時も通り騒がしい姉妹の囲まれて僕は焼き芋を食べている。そういえば、さっきから熱いくらいに温かい。それは、焼き芋のせいなのか。それとも、焚き火か。或いは……END
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