第三十一話 JUMと新幹線 帰り
「一つ屋根の下 第三十一話 JUMと新幹線 帰り」
「お世話になりました。」銀姉ちゃんを筆頭にホテルの人たちに頭を下げる。三泊四日だったのかな?この旅行もついに終わりを告げた。いや、でもまだまだ僕には終わりって感じがしないんだよね。何故なら……「さぁ、まずは帰りの新幹線。JUMの上に座るのはカナからかしらー!」そう、帰りも当然のように八人分の席しかなく、行きと同様に1時間ごとに僕の上に座るわけだ。確か、帰りの順番はカナ姉ちゃん、薔薇姉ちゃん、真紅姉ちゃん。んで、最後に蒼姉ちゃんだったかな。ともかく。家に帰るまでが遠足と言わんばかりに僕の旅行は続いていた。「駅弁駅弁♪新幹線でお腹が空いてはいきませんわ。」駅でキラ姉ちゃんは大量のお弁当を買い込んでいた。まぁ、多分車内でも買うんだろうケド。そういえば、総額いくら稼いだんだろう。近辺はきっと食い潰したんだろうなぁ。しかも、今回は大食い大会の賞品である商品券で食べただろうから、きっと黒字のはずだ。「JUM、荷物を見てて頂戴。本を買ってくるのだわ。」真紅姉ちゃんが僕に荷物番を押し付けて売店へ行く。売店の小説って結構微妙なものしかなくないか?それでも、旅行前に大量に買い込んだ本を全て読破した真紅姉ちゃんはやっぱり凄い。僕何ざ活字離れしてて小説なんて全然なのに。ああ、PCとかWEB上のSSは別ね。そんなこんなで、しばらく駅で待っているとようやく新幹線が到着する。僕は少しだけ一人で気合を入れる。そうでもないと、これからの4時間。少し持ちそうにないからね……
「ん~……JUM、これがなかなか上手くいかないかしら~。」さてさて、新幹線の中でカナ姉ちゃんは僕の膝の上でPSPをやっていた。タイトルは分からないが、アクションゲームのようだ。ちなみに、他の姉妹は僕の隣に蒼姉ちゃん。正面に銀姉ちゃん。銀姉ちゃんの隣にヒナ姉ちゃん。通路を挟んで残りの姉妹といった具合である。「ん~……どれどれ。」僕が画面を覗き込む。どうやらタイミングを合わせてジャンプしないとダメらしい。「やっ!たぁ!!うぅ~……もう少しかしらぁ?」カナ姉ちゃんのプレイを見てると、一瞬だけ微妙にタイミングがずれている。これじゃあ、ジャンプしても先に進めないだろう。「カナ姉ちゃん、タイミングが少し早かったり遅かったりしてるよ。」「そんな事言われてもぉ~。カナは今だ!!って思ってるのにさっぱりかしらぁ。」カナ姉ちゃんが眉間に皺を寄せる。釣られて蒼姉ちゃんが僕に体を寄せて覗き込んでくる。「ふふっ、金糸雀は頑固だからね。そう思ったらそうやってみないと気がすまないんだよね。」蒼姉ちゃんがクスクスわらう。膝の上はカナ姉ちゃんで熱く、右腕は蒼姉ちゃんで熱い。「……はぁ、やっぱり座席に関しては蒼星石に完敗ねぇ……結局ずっとJUMに触れ合ってられるものぉ。」正面で銀姉ちゃんが溜息混じりに言う。22話を見れば分かるが、蒼姉ちゃんは順番を最後にする代わりにずっと僕の隣の席を確保したのだ。膝の上の次女よりよっぽど策士だ。「やれやれ……いい?カナ姉ちゃん。このタイミングだよ。」僕は未だにうーうー唸ってるカナ姉ちゃんを抱きしめるようにカナ姉ちゃんの上からPSPを握る。あれだ、例えは悪いけどエロ親父が若い女性にゴルフレッスンする際に後ろからやるような奴。わかるかなぁ。「ひゃぁ!?JUMったらちょっと大胆かしらぁ。えへへ~。」カナ姉ちゃんの手は小さかった。そんなに大きくない僕の手でもすっぽり包めるくらいに。僕はその手と同化して、キャラクタをジャンプさせる。すると、ようやく飛び越えた。「やったかしら~。これもJUMとカナの愛の成せる技よね?」いや、タイミングの成せる技です。
「JUMも……一緒に聞こう…?」さて、お次は薔薇姉ちゃんだ。僕の膝に座りながら片方のイヤホンを渡してくる。てっきり、カナ姉ちゃんみたくゲームかと思いきやご愛用のiPodのようだ。僕は言われるままにイヤホンを耳にいれる。もう片方は当然薔薇姉ちゃんの耳だ。さて、どんな歌が流れてくるんだろう。♪~閉ざされた時の狭間に 迷い込んだ小さな光の雫 夢の終わり ただ君だけを歌う~♪「……いい歌だね、これ。何ていうの?」「んと、光の螺旋律だよ……いい歌だよね…私もこれ好き。」ゆったりとした曲調で綺麗な歌声が印象的な曲だった。EDテーマによさそうである。次の曲が流れる。♪~見つけてyourdream どこにいても 聞こえてる 時を越えて kisskisskiss~♪「ああ、これは知ってる。確かテイ○ズ……ファンタジアだっけ?」「正解……そして……スレタイでもある。」それだけの為にこの曲を流したんだろうか。ちなみに、個人的には「夢であるように」の方が好きだったりする。今見てもあのOPアニメは鳥肌が立ちそうになる。まぁ、どうでもいいけどね。♪~まだ触れないでその慄える指先は 花盗人の甘い躊躇い 触れてもいいこの深い胸の奥にまで~♪これまた何だか独特の歌だ。でも、何だか中毒性のありそうな歌というか……ハマリそうだ。「届く自信がぁ あるならば~…白馬の王子様なんて信じてるわけじゃない~♪」薔薇姉ちゃんがついつい歌っている。そして、歌い終わると僕の首に腕を回し、顔を近づけてくる。「でも……私の白馬の王子様は……JUM……」「ちょ、ちょっと薔薇姉ちゃん!?」「そこまでよ、薔薇水晶。生憎時間なのだわ。」と、僕と薔薇姉ちゃんの前にスッと本が壁としてできる。そう、当然それは真紅姉ちゃんだった。「う~……もうちょっとだったのにぃ…真紅イケズ……」
「さ、JUM抱っこなさい。」さも当然のように真紅姉ちゃんは言う。僕は言われるままに真紅姉ちゃんをお姫様抱っこする。「真紅姉ちゃんてさぁ……なんでそんなに抱っこが好きなのさ?」僕はつい、そんな疑問を投げかける。真紅姉ちゃんはそうね……と考える。「乙女だからよ。女の子はいつでもお姫様抱っこに憧れるものなのだわ。」真紅姉ちゃんがクスリと笑う。そんなもんですかねぇ?「……いいな……僕も…でもやっぱり似合わないかな……」隣でボソリとそんな声が聞こえてくる。「ふふふっ、真紅ったらぁお子様ねぇ~。」「何とでも言いなさい?もっとも水銀燈じゃあ……重くてしてもらえないでしょうけど?」「ぐっ……」おっと、珍しく真紅姉ちゃんが銀姉ちゃんを言い負かしてる?確かに、銀姉ちゃんも重いってほどじゃないけど。ほらまぁ、背も高めだし胸も……とりあえず僕の貧弱な筋力では少し厳しいわけだ。「そ、そうねぇ。貴方チビだし胸もないから軽いわよねぇ?骨と皮しかないんじゃなぁい?」「そのお陰でJUMにお姫様抱っこしてもらえるのだわ。貴方みたいに重い脂肪の塊じゃないもの。」「あ……あうぅ…うぅ……」強気だ。真紅姉ちゃんが凄く強気だ。まるで日頃の鬱憤を晴らすようだ。「うわぁ~ん、JUM~。真紅が水銀燈をいじめるよぉ~。」「無駄よ、水銀燈。まだJUMはこの真紅の物の時間なのだわ。」ああ、完勝。何だか今日は珍しいものが見れた気がした。
「ええっと………」さて、残り1時間になった頃に蒼姉ちゃんは僕に座ろうとせずモジモジしている。「蒼姉ちゃん?どうしたの?遠慮してるの?」「ええっとね、その……だ、抱っこ…じゃなくて、ええとその……」「蒼星石はJUMにお姫様抱っこしてもらいてぇんですよ。」通路を挟んで翠姉ちゃんが言う。僕が蒼姉ちゃんを見ると顔を赤くしてコクコク頷いていた。「何だ、そんな事か。いいよ、蒼姉ちゃん。」「うん。じゃあ、失礼して……」蒼姉ちゃんはまだモジモジしながら僕にお姫様抱っこをされる。真紅姉ちゃんよりも大きいけど何とかなるだろ。「ほっほ~、今日の蒼星石は水玉……」「わぁ!す、翠星石!!」蒼姉ちゃんは慌ててスカートの裾を押さえる。今日は珍しくミニスカートだ。旅行前に買った奴だろう。「J、JUM君聞こえた・・・かな?」「……いや、聞こえてないよ。でも……そうだなぁ。こうすればいいかな?」僕は蒼姉ちゃんの太股の裏に回してある手を伸ばし、スカートの裾を押さえる。「ひゃ!?ンンッ…JUM君くすぐったいよぉ…でも、有難う…えへへ…」と、次の瞬間。蒼姉ちゃんは首の辺りに回していた僕の腕を掴むと自分の左胸に乗せた。「そ、蒼姉ちゃん!何を!?」柔らかい……そして手に収まりきらない……って、そうじゃなくて。「へへへ……JUM君に届くかな。今ね、僕凄くドキドキしてるんだよ。」改めて手に神経を集中させる。すると、トクトクと蒼姉ちゃんの胸の鼓動が感じられた。「うん、分かる。トクトクしてる。」「うん……きっとこんなに僕の胸がドキドキしてるのはね……僕がJUM君を……」
蒼姉ちゃんの顔が赤い。いや多分僕の顔も赤い。蒼姉ちゃんが僕の胸に頭を預けて僕を見る。上目遣いで潤んだ瞳なんて反則だ。そして、小さな声で言った。「お待たせしました!!『大好きだから…』まもなく○○!!まもなく○○です!!」蒼姉ちゃんの口が七回動く。しかし、何て言ったかは車内放送にかき消されて全く聞こえなかった。「へ?ごめんね、蒼姉ちゃん。聞こえなかった。」「……ふふっ、何でもないよJUM君。じゃあ、そろそろ降りる準備しないとね。」蒼姉ちゃんはそう言って、少しだけ残念そうな顔しながら笑った。
「ようやく家についたわねぇ。ホテルもよかったけど、やっぱり家が一番落ち着くわぁ。」でだ。そんなこんなで家に到着する。何だかんだでみんな疲れ果ててるみたいだ。「あふ…疲れたのだわ。私はもう寝るわ……」「私も眠いですわ……たくさん食べましたし……」「は~~い!ヒナ提案なの~!」みんなが寝ようと部屋に戻ろうとする中、一人元気なヒナ姉ちゃんの声がする。「あのね、ヒナホテルでみんなで寝るの凄く好きだったの~!だから、今日までリビングでみんな一緒に寝よ?」ヒナ姉ちゃんがニコニコしながら言う。まぁ、確かに来客用の布団を使えばみんなでリビングで寝れるだろう。「チビにしてはまぁまぁの案ですぅ。翠星石も賛成でっすぅ~。」「うん、僕もなんだかそんな気分。みんなで寝ようよ。」翠姉ちゃんと蒼姉ちゃんが同意を示す。結局、リビングでみんなで寝る事に決まったようだ。「それじゃあ……みんなお休みなさぁい。」銀姉ちゃんの声と共に電気が消える。すでに、何人かの姉妹の寝息が聞こえる。色々あったけど。本当に色々。でも、楽しかった。それと同時に、僕の日常もまだまだ続く。何せ……お騒がせな8人の姉がいるんだから……END
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