第十九話 JUMと終業式
「一つ屋根の下 第十九話 JUMと終業式」
季節はすでに夏・・・クソ暑い体育館で僕らは校長の果てしなくどうでもいい、ありがたい話を聞いていた。「暑い・・・話長い・・・くそ・・・・」僕はハンカチで汗を拭う。どうしてこう、校長ってのは話が好きなんだろうな・・・「ふっ、JUM。心頭滅却すれば何とやら・・・それに、楽しみもあるぞ?」「楽しみ?何もねーよ。」僕は軽くべジータをあしらう。ああもう、暑苦しいあいつのせいで、益々暑い気がするよ。「青いな。この暑さだ・・・人間汗をかく。それは女子も例外じゃない。」「?まぁ、人間だしな。それがどうしたんだよ?」すると、奴の顔がみるみるエロスに染まっていくのを感じた。「夏季のウチの制服はブラウス!そして、この汗!ブラ透け見放題だ!ひゃっほーーーー!!」そんな事を大声で張り上げるM字ハゲ。とりあえず僕は他人のフリをしとこう。べジータは担任の梅岡先生に連行される。まぁ、その後なんて興味はない。でもまぁ・・・僕はついつい周りを見渡してしまった。目の覚めるような金髪の頭が二つ並んでる。ヒナ姉ちゃんと真紅姉ちゃんだ。ヒナ姉ちゃんは暑さでフラフラしてる気がする。僕はついつい見てしまう。白の薄いブラウスの下から、ピンクの線が見える。ああ、ヒナ姉ちゃんらしいな。可愛らしいと言うか。その隣、真紅姉ちゃんの背中からは赤い線。何となくエロスな感じだが、まぁ赤が好きだしな。ちなみに、銀姉ちゃんに色気無いから似合わないといつも言われてる。少し遠めにはキラ姉ちゃん。あ、あれ寝てるな。立ちながら。頭がウツラウツラしてるもん。キラ姉ちゃんは色っぽいけど、線は白だ。真紅姉ちゃんと変えたほうが・・・いや、何でもない。とまぁ、場所的に同じ一年生の姉妹しか見れなかった。まぁ、どうせ他の姉妹の予想もつく。「JUM・・・何キョロキョロしてるの・・・?」おっと、この人がいた。唯一同じクラスで、場所も隣に立っている。「別に・・・何でもないよ。にしても暑いね、薔薇姉ちゃん。」そう、薔薇姉ちゃん。薔薇姉ちゃんはコクリと相槌をうつと、スッと近づいてボソッと言った。「JUM・・・今日の私は・・・紫・・・」バレテましたか。
「はい、通知表も返し終わったな~。各自これで反省して夏休みを過ごしてくれよ~!」梅岡先生が全員に通知表を渡し、どこでも言いそうな事を言う。「JUM・・・どうだった・・・?私は・・・・こんな・・・・」薔薇姉ちゃんが僕に通知表を見せる。えっと・・・7,8,8,9,7・・・すげ、結構優秀だ。「JUMは・・・?」僕も薔薇姉ちゃんに言われるままに通知表を見せる。まぁ、自慢できるほどじゃないけど、そこそこだ。「あ、JUMのが・・・保健体育はいい・・・じゃあ・・・今日教えて・・・・?」「うん?別にいいけど?」僕がそういうと、何故か薔薇姉ちゃんは顔を赤らめる。「JUMったら・・・お昼から大胆・・・ぽっ・・・・じゃあ、今日の夜はJUMのベッドの上で・・・」前言撤回。一瞬クラスの男子の目が突き刺さるのを感じたよ。「よぉ、JUMに薔薇嬢。どうだった?俺はまぁまぁだぜ?」自信ありげにバッと通知表を開くべジータ。中には、3や4ばっかだった。「べジータ・・・これギャグか?」「はぁ?何言ってんだよ。そう言うならお前の見せて・・・み・・・ろ・・・?」ベジータは僕の通知表をみて目を見開く。目を擦る。もう一度見る。「もしかして・・・高校って10段階評価?5段階じゃねえの?もしかして、俺物凄くバカか?」もしかしなくてもバカです。そんなやり取りをしてると、梅岡がパンパンと手を叩く。「はいはい、静かに。とりあえ注意事項はなし。ただ、余りに夏休み明けの成績が悪いと先生困るから、その時はマンツーマンで教えるからな!」それは容赦願いたい。やっぱり勉強しないとな。「あ、夏休み中先生に勉強聞きたい人は大歓迎だから。いつでも先生の家においで!」バチコーンとウインクをする梅岡。相変わらず空気の読めない担任だった。
「ふっふ~~ん、明日から夏休みなのよ~~♪」家に帰るとヒナ姉ちゃんはすでにご機嫌で鼻歌を歌っていた。「みんな夏休みは何か予定あるのかしら~?」「私は・・・結構・・・バイト・・・あるよ。」「私は食べ歩きでもしようかと思ってますわ。」「読書ね。クーラーの効いた部屋でJUMの紅茶を飲みながら。優雅なのだわ。」「翠星石は特には決めてねーですけど・・・どっか出かけるのもいいですぅ。」「そうだね。海とか山とか・・・身近にプールとかもいいね。」口々に自分のプランを話す姉妹達。ただ、僕は一つ気がかりな事があった。真っ先に何か言うはずの銀姉ちゃんがさっきから無言だ。それが物凄く不気味だ。「JUMはどうするなの?暇ならヒナと遊ぶのよ~。」「ん?まぁ、暇だけどさ。」僕がそう言うと銀姉ちゃん以外が僕に目を向けた。何が言いたいか分かった気がする。「JUMはカナと音楽に勤しんだり、実験したりするかしら!音楽と理科の成績もアップで一石三鳥かしら~。」「JUM!暇なら毎日翠星石の元で働けですぅ!そ、そしたら労いに・・・ごにょごにょ・・・」「えっと、JUM君・・・一緒にプールとかどうかな・・・あ、よかったら水着も一緒に買いに・・・」「待ちなさい。JUMには夏休みなどないわ。私の下僕として働くのだわ。」「JUM。では私と食べ歩きツアーに行きましょう!そして精力つけて夜は・・・きゃっ♪」「・・・JUMも・・・メイドさん・・・やる・・・?」尽く僕の人権を無視してくれて有難う。んー、でもヒナ、カナ、蒼姉ちゃんかな。選ぶとしたら。「あのさぁ・・・もしかしてみんな忘れてなぁい?」ここでようやく銀姉ちゃんが会話に入って来る。みんなは銀姉ちゃんを凝視する。「これよ・・・お父様が用意してくれたのよぉ。」銀姉ちゃんが掲げる紙。それは、旅行券だった。
「あ・・・そういえば・・・」僕は思い出していた。先月くらいだったか。父さん(ローゼン)から国際郵便が来て、旅行券やら何やらが入っていた事を。ちなみに、時期的にお歳暮だと思ってたキラ姉ちゃんは相当ガッカリしてたな。「思い出したぁ?私、この旅行地調べたんだけどぉ。」銀姉ちゃんが手元の雑誌を広げてみせる。なるほど、それでさっきまで静かだったのか。「貴方達の望みは大抵叶うわよぉ?まずぅ、ホテルは超高級。一応一人一部屋あるけど・・・まぁ、部屋なんか飾りよねぇ。食事は豪華バイキング。オーソドックスなのから名物まで揃えてるらしいわぁ。」「バイキング・・・名物料理・・・・何より・・・タダ!!!じゅるり・・・・」キュピーンとキラ姉ちゃんの目が光る。この人の行動概念の9割は食欲なんだろうなぁ。「部屋が優雅ならいいのだわ。景色も綺麗そう・・・涼しい部屋で美しい景色を眺めながらJUMの淹れた紅茶で読書・・・悪くないのだわ。」「あとはぁ~、海も山もあるわねぇ。ホテル屋内にはスパもあるそうよぉ?」「へぇ、凄いね。何から何まで。飽きなくて済みそうだね。」「スパもあるですか・・・じゃあ、水着でみんなで入るですぅ♪蒼星石、水着買いにいくですぅ。」「うよ・・・何かわかんないけど・・・楽しそうなの~!」「かしらかしらー!」結局、僕の夏休みはこの旅行に決まりそうだった。「にしてもさ、父さんも羽振りいいね。本当ならお金凄そうだよね・・・」「そうねぇ・・・まぁ、お父様が気を使ってくださったのよぉ。今年でみんな高校生になったしねぇ。ふふっ・・・JUM?」銀姉ちゃんが僕の手を握る。銀姉ちゃんにしては地味な行動に逆にギャップでドキリとする。「楽しい思い出、作りましょぉねぇ?もちろん・・・私達姉弟みんなで・・・・ね♪」END
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