第八話 JUMと雪華綺晶
「一つ屋根の下 第八話 JUMと雪華綺晶」
今日は休日・・・意外な事に今日は我が家にほとんと人がいない。まず、銀姉ちゃんと真紅姉ちゃんとヒナ姉ちゃんはくんくん探偵の劇場版を揃って見に行った。高校生にもなって・・・とか思うけど口に出すとくんくんについて小一時間語られるので(主に銀姉ちゃんと真紅姉ちゃんに)言わずに見送る。カナ姉ちゃんは部活らしい。音楽部と科学部を兼部してたはずだ。今日はどっちだったかなぁ・・・バイオリン持って行ったから音楽部だろう。んで、翠姉ちゃんと蒼姉ちゃんは二人で洋服とかのお買い物だ。あの二人の事だ。翠姉ちゃんが何とか蒼姉ちゃんに可愛い服を着せようとし、蒼姉ちゃんがそれを全力で拒否を繰り返して、結局時間かかるだろう。んで、今家に居るのは僕とキラ姉ちゃんと薔薇姉ちゃん・・・だったが・・・「JUM・・・出かけてくるね・・・」「薔薇姉ちゃんもどっか行くの?」と、台所で飯を漁っていると薔薇姉ちゃんがやってきた。我が家は手抜きと言う理由でカップメンすらかなり探さないと出てこない。各自の好物はストックしてあるが、勝手に食べると怒られる。「うん・・・今日は・・・ゲーセン・・・連ザⅡが入荷したから・・・」薔薇姉ちゃんが説明してくれる。手が小さくジョイスティックを動かすように動いている。すでにウォーミングアップをしてるんだろう。でも、薔薇姉ちゃんの事だ。せっかく新型なのに、相変わらずグーンなんだろうなぁ。「そっか。行ってらっしゃい。キラ姉ちゃんは?」「キラキーは・・二度寝してる・・・でも・・・そろそろ起きると思う・・・じゃあ・・行ってくるね・・・」薔薇姉ちゃんがプラプラと手を振って出て行く。時計を見る。成る程、もうすぐお昼だ。キラ姉ちゃんの正確無比の体内時計が目覚めるに違いない。僕は再びカップメンを探す。そんな時、後ろから声が聞こえた。「ふぁ・・・おはようごじゃーます・・・ですわ・・・JUM・・・」
パジャマ姿のキラ姉ちゃんが目を擦って来る。寝起きは眼帯はしてない。「おはよ。キラ姉ちゃん、今日はみんな出かけててお昼ないけど、どうする?僕はカップメン探してるけど。」その時、ぐぅうう~~~と音が鳴る。キラ姉ちゃんはお腹をさする。「あら、嫌ですわ。う~ん・・・そうですわ、JUM。せっかくだから外食しましょう。もちろん、奢りますわよ?」「え、いいの?でも僕自分の分くらいは・・・」僕がそう言いかけるとキラ姉ちゃんは人差し指を僕の唇に当てて微笑む。ほんのり温かい。「ダメですわ、JUMったら。お姉ちゃんのいう事は聞くものですわよ?じゃあ、準備するので待ってて下さいな。」キラ姉ちゃんが部屋に戻っていく。まぁ、割り勘よりは遥かに有難いので受けておく。何せ、キラ姉ちゃんは食べる量が半端ない。あんだけ細いのにどれだけ入るんだって感じだ。とりあえず、僕も身支度だけして玄関でキラ姉ちゃんを待つ。「お待たせですわ、JUM。」玄関にやってきたキラ姉ちゃんはノースリーブのシャツにミニスカートと露出が高い衣服だった。銀姉ちゃんほどじゃないが、姉妹で二番目に大きな胸の谷間と、ミニから覗く真っ白な太股に僕は不覚にもドキドキする。メチャクチャ綺麗だ。でも、綺麗な薔薇には棘があるという。キラ姉ちゃんの場合は食欲だ。不幸にもナンパし、食事に行こうものなら財布は空になるの間違いなしだ。「さ、行きましょう。JUMは何が食べたいですか?」「ん~・・・カップメン探してたらラーメン食べたくなったかも。」「まぁ、いいですわね。そういえば、新しい中華食堂ができたって聞いてますわ。そこに行きましょう。」キラ姉ちゃんが僕の手を繋ぎ、引っ張っていく。そういえば・・・キラ姉ちゃんってローゼン家の姉妹でも直系では一番末っ子なのに、かなり大人っぽいよなぁなんて思う。まぁ、それが魅力なんだけどね。
「ここですわ!運良く空いてるようですし・・・入りましょう。」キラ姉ちゃんが目を輝かせて僕の手を引いて店内に入っていく。店内はそんなに広くないが、いい匂いが漂っており、食欲を促進させた。「さ、好きなもの頼んでよいですわよ?えーっと、私は・・・餃子3つに豚骨2つ、炒飯2つに・・・」何か恐ろしい呪文が聞こえるが聞かなかった事にしよう。僕は無難に餃子、ラーメン、炒飯が全て楽しめるセットを頼む。キラ姉ちゃんは・・・まぁ、見ないほうが、聞かない方がいいよ。お腹が空くどころか胸焼けしそうになるから。そんなこんなで食事が終わりそうになるとき事件はおこった。「はっ・・・私とした事が・・・財布・・・忘れましたわ・・・」一瞬時間がとまる。まさにザ・ワールド。「ええええええ!?ど、どうすんの・・・?僕の分だけなら手持ちでいけるけど・・・・」ぶっちゃけ、キラ姉ちゃんのは無理だ。てか、キラ姉ちゃんはこれ払えるほどお金あるのか・・・「困りましたわね・・・誰か呼びましょうか・・・でも、それだと迷惑かけてしまいますわね・・・」うーんと携帯を眺めながら悩む。さすがに、自分のミスで他の姉妹の休みの時間を壊すのを躊躇してるんだろう。が、その時キラ姉ちゃんの目が光った。「こ、これですわーーー!!」その視線の先にはこう書いてあった。「ウルトラ餃子、ウルトララーメン、ウルトラ炒飯。どれでも20分で完食すれば1万円。ただし、残した場合は罰金一万円。貴方は、この挑戦をうけれるか・・・」と。写真つきで。それはどれもウルトラな大きさだった。ぶっちゃけ、僕は時間無制限でも無理。「ま、まさかキラ姉ちゃん・・・」「ふふっ、当然ですわ!あの~、すいません~~~ん!」キラ姉ちゃんが店員を呼ぶ。それはいい・・・でもさ・・・これ賞金だけじゃお金たりなくない?僕のその考えを吹き飛ばす恐ろしい事をキラ姉ちゃんは言い出した。「この三つ全部を20分で食べたら、いくらくれますか?」
僕も店員も時間がとまる。ザ・ワールド再びだ。そして時は動き出す。「ええっと・・・こちらは一つでよろしいのですが・・・」「ええ、それじゃ面白くありませんもの。3つを20分で・・・おいくらですか?」店員さんが困惑してる。僕も困惑どころじゃない。マジ・・・キラ姉ちゃん。すると、店長らしき人が出てきた。いかにも!って感じの職人さんだ。「嬢ちゃん。食えなきゃ3万だぜ?無理はしねぇほうが・・・」「おいくら出しますか?と聞いておりますの。」キラ姉ちゃんは笑顔で言う。親父さんもその態度が気に入ったんだろう。「そうだな。3つを20分で難易度は3倍以上・・・きりよく10万くれてやろう!だが、食えなきゃ・・・」「3万ですわね。では、お願いしますわ。」爆裂スマイルで言うキラ姉ちゃん。親父さんは不敵に笑うと厨房へ戻っていく。「ねぇ、キラ姉ちゃん。そんだけ食べた後で・・・無理だって・・・」「あら、私本気になれば雛苺くらいなら食べれますわよ?」それはギャグで言ってるのか?そうこうしてるうちにウルトラな三セットがくる。ぶっちゃけ、テーブルに全部乗らないので近くの席を巻き込む形になる。店に居る人が全員それを注目してる。「ふっ・・・いまさらびびってもおせえぜ?では・・・制限時間20分・・・・レディ・・・・GO!!」そして、運命の20分が始まった・・・まぁ、さぁ・・・人間て不思議な生き物だよね・・・キラ姉ちゃんは大食い番組のように、ガツガツ汚く食べるんじゃなく、あくまで優雅に食べていく。うん、凄いスピードで・・・その動きが何だかとても切ない。綺麗なキラ姉ちゃんが・・・ねぇ・・・「ふぅ・・・大変美味しゅう御座いましたわ。」箸をコトンと置き、手を合わせる。タイムは15分28秒。ぶっちゃけ、ありえない。「くっ・・・俺も料理の道を歩んで30年・・・おめえほど美味しそうに、優雅に、そして激しく食べる奴は見たことねぇ!完敗だ・・・10万もってきやがれーーーー!!」親父さんは感動して10万をキラ姉ちゃんに渡す。「うふふっ、やりましたわ、JUM!」心底嬉しそうなキラ姉ちゃん。その笑顔は、10万の嬉しさか満腹の嬉しさなのか・・・でもさ、あんだけ餃子食べて口が全くニンニク臭くないのも凄いよね。
後で聞いた話だが、あの店。赤字かと思いきやキラ姉ちゃんみたいなか細い女の子が食えるんだから・・と挑戦者が殺到。しかし、食べれるはずもなく逆にウハウハらしい。今日も店内に飾ってあるキラ姉ちゃんの記録を超えるため、大食いの男が挑み、敗れ去ってお金を落としていってる事だろう・・・「でも・・・ごめんなさいね。せっかく二人でお食事でしたのに、心配させてしまって。」財布を忘れた事だろうか。まぁ、確かにビックリしたけど。そういえば、キラ姉ちゃんのお金はどっから出てくるかと言えば、賞金のある店を巡り巡って稼いでるらしい。「ううん、結局はキラ姉ちゃんの力だけど、どうにかなったし・・・それにキラ姉ちゃんと二人ってのも面白かったよ。」僕は素直にそう思う。キラ姉ちゃんが食べてるところは本当に幸せそうだ。その姿を見てると僕まで嬉しくなった。「JUM・・・よかったですわ。」キラ姉ちゃんがそっと僕の手を握る。女性らしい真っ白で温かな手だ。「キラ姉ちゃん・・・?」「ふふっ、たまにはよいでしょう?いつもは水銀燈達にとられてますけど・・・私だってJUMが好きですわよ?」そう言ってキラ姉ちゃんは笑った。僕はその笑顔にドキドキする。「さ・・・そろそろ帰りましょうか。みんなも帰ってくる事ですし・・・今日の晩御飯何でしょうね?」僕はキラ姉ちゃんと手を繋いで帰る。さっき、あんだけ食べたのに何だか僕までお腹が空いてきた・・・END
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