第三十四話 せめて、自分らしく
「超機動戦記ローゼンガンダム 第三十四話 せめて、自分らしく」
「レンピカ、スィドリーム照準!目標前方敵艦隊!てえええええ!!」サクラダから2連装の副砲が放たれる。放たれた光は敵機を数機撃ち抜き空へ消えていく。「砲撃、来ます!」「ピチカート起動!ビームは回避しろ!」サクラダの船体が傾きながら迎撃システムが作動する。飛来したミサイルの9割は打ち落とすが残りは被弾する。ビームもある程度は威力が軽減されるものの、船体は破損箇所が増えてきた。「ベリーベル4から8番沈黙!スィドリーム2番沈黙!損傷率は40%を越えました!味方機を呼び戻しますか!?」「いや、ここは僕らだけで食い止めるんだ!!メイメイ装填!うてええ!!」今度は6連装のミサイルランチャーを放つ。ベルリンの空にいくつかの花火ができる。「ちっ、キタネエ花火だ。JUM!無理はするな!」サクラダに近づいてくる敵機を一機で追い払うのはべジータの乗るスーパーサイヤジン。「大丈夫だ!それより、お前もカカロットはいいのか!?」「問題ない!サクラダに比べれば後方だからな!っちぃ!落ちやがれ!」視界に入った機体にギャリック砲を放つ。戦いは未だに終わる気配がなかった。
「いい加減!落ちやがれですぅ!!」スイセイセキがGSのライフルモードでラプラスを狙う。しかし、そこは白崎。悠々と回避し、高出力ビームライフルで応戦する。「はははっ、面白い。やはり、人生はこうでないとね。刺激のない世界なんてツマラナイ。トリビァル。」「トリビアだかメロンパン入れだか何だかしらねーですけど!」今度はGSを背部に装着し、ガーデナーシザーで接近する。ラプラスはビームサーベルを2本抜き、スイセイセキを迎え撃つ。触れ合う刃が火花を起こし、空に閃光が走る。「おや・・・梅岡に続き槐の反応がないな。ふふっ、死んだかな?」「ざまぁみろです!てめぇもさっさと一緒に連れてってやるですよ!」鋏がブゥンと唸りを上げる。ラプラスは切り結ばずに後方に下がる。「一緒に?それはオカシイ。悪いけど、僕はまだ君に倒される気は、毛頭ないんだよ。何故なら・・・ようやく槐が消えてアリスを僕の思うままに出来るんだからね。」「なっ・・・・どう言う事ですか!?」「教えてあげましょうか。いい機会ですから。まず・・・・10年前アリスを暴走させたのは槐です。彼はアレでも一応ローゼンの弟子でしたからね。アリスの回路をいじったのですよ。」ラプラスはラ・ビットを展開する。スイセイセキはガーデナーシザーをしまい、GSでビットを迎撃する。「・・・つまり・・・この戦いの発端はあの槐とかいうやろーのせいって事ですか!?」「うん、話だけ聞くとそうだろうね。彼もきっとそう思ってるよ。自分がアリスを操り、実質的な神になろうとしてたからね。でもね・・・違うんだよ・・・何せ、槐をそそのかしたのは僕だからね・・・」
「お前・・・・!」「ふふっ、あいつは小物の割りに野心だけは大きくてね。僕がボソッと言ったんだよ。アリスの回路でも弄れれば操ってこの世界の神になれるのにってね。そしたらどうしたと思う!?奴は僕の思い通りにアリスの回路を弄ったんだよ!笑いが止まらなかったね。生憎僕はアリスなんて弄れないからね。」ラ・ビットを全て撃墜したスイセイセキがGSを向け、連射する。しかし、当たらない。「何故です!何故そんな事を・・・!?」「決まってるよ。僕に平穏な世界はつまらなかったからさ。僕はね、面白い事が好きでね。ああ、悪戯とか大好きだね。あのままアリスが人類の支援をしてれば人類はとてもとても平穏に過ごしたろうね。それくらいにアリスの出来は凄かったのさ。しかし・・・それは僕にとってはつまらないんだよ。トリビァル!」「お前は・・・!!」GSのエネルギーを最大までチャージし、砲身をラプラスに向ける。「お前はただ自分が!世界がつまらないからと・・・それだけでここまでしたんですか!」「まぁ、簡潔に言えばね。ほら、世界は僕の望んだスリリングな世界になったろ?」「ふざけるなですぅ!!」ラプラスに向けてGSを放つ。放たれたビームは雨となり、ラプラスに襲い掛かる。「おっと・・・兎は危機管理に優れた動物でね。簡単にはつかまらないよ?」しかし、それを全て回避してみせる。しかし、スイセイセキは攻撃を止めない。「お前は・・・翠星石の両親を殺し、おじじとおばばを壊し・・・蒼星石まで殺した・・・」「うん、そうだね。でもさ、考えてみなよ。そのおかげで僕は君に憎しみと殺意を向けられ、追われる身になった。これがスリリングで面白いんだ。でもさ、僕が一番好きなのは勝つ事なんだ。最後には僕が勝つから面白い。梅岡と槐なんていなくても問題ない。君を殺し、君の仲間も殺し。僕好みの世界にさせてもらうよ。」「っく・・・・これ以上・・・・これ以上人殺しなんてさせてたまるかですぅ!!!」
ラプラスがラ・ビットを展開する。スイセイセキはガーデナーシザーに持ち変える。懐に飛び込むつもりだろう。「さ、そろそろ終わりにしようか。君は僕を充分楽しませた。でもさ・・・飽きたんだよね!」ラ・ビットがスイセイセキに襲い掛かる。スイセイセキはそれを回避しながら反撃の機会を伺っていた。「ふふっ・・・これでどうだい?」ラプラスがスイセイセキの回避運動を読み、そこにビームライフルを放つ。「!?っこのおおおおお!!」ギリギリでスイセイセキはビームを回避する。しかし、さらにそこに罠があった。先回りしたラ・ビットはスイセイセキの左腕を捕らえ、破壊した。「きゃあ!?しまった・・・です・・・」スイセイセキが残った右腕でガーデナーシザーを構える。「あはははは!悲観する事はないよ。君も妹と同じように殺してあげるからさ!」ラプラスがサーベルを持ち、スイセイセキめがけて突っ込む。しかし、その時にラプラスの警告アラートが鳴った。「!?何だ!?うおっ!」ラプラスは機体を急停止させる。すると、飛来した2つのミサイルはラプラスの前方でぶつかり、そして盛大に煙を吐き出した。「何だこれは!?煙幕爆弾か・・・?何も見えない・・・レーダーも・・・反応なしか・・・クククッ・・・」ラプラスは右手にサーベルを、左手にライフルを持ち辺りを見回す。「まぁいい。どっかの戦闘のが来たんだろう。どの道僕の勝ちには変わりない・・・煙が晴れたらすぐにやればいいんだ・・・ほんの数秒命が延びただけ・・・さぁ・・・どこだ。んっ!?」太陽の光を何かが反射し、ラプラスを照らした。「うおっ、まぶし!・・・あれはガーデナーシザー!?はっはっはっは!見つけた・・・見つけたよ。その鋏で妹の敵を取ろうとしたのが仇になったね・・・もらったああ!!!」白崎の視線の先には太陽の光を浴びて輝く庭師の鋏の先端が見えていた。しかし、それで充分だった。ラプラスはその鋏を持っている機体めがけてライフルを放った。
ビームは煙を貫き、そして煙を払った。白崎は勝利を確信する。勝った。あそこにあるのは撃ち貫かれた緑の機体。そのはずだった・・・・しかし・・・「えっへへ・・・・ひっかかった・・・かしら?」そこに居たのは右腕を撃ち貫かれながらもガーデナーシザーをもった黄色の機体・・・つまりカナリアだったのだ。「な・・・カナリアだと!?さっきのは・・・ジャマーボムか!?ス、スイセイセキは・・・・!」「よーやく兎の尻尾を見つけたデス・・・おめーの攻撃で位置が分かったですよ!」白崎がその瞬間機体を動かそうとする。しかし、背後からぶつかった何かによって、機体の推進システムは完全にやられたようだった。「ス・・・スイセイセキ・・・・!?」ラプラスの背後をとったのは残った右腕で庭師の如雨露、ガーデナースプリンクラーを持ちその頑丈な砲身をラプラスに突き刺しているスイセイセキだった。「捕まえたです・・・兎は確かに危機に反応する能力はすげーです・・・でも・・・捕まったらどうするですか?」「くっ・・・ラ・ビットは・・・くそ!こっちも潰されてるのか!?」その巨大なGSの口はラプラスの背中部分を完全に押しつぶし、機体にめり込ませていた。ラプラスは完全に動けない。兎も・・・捕まってしまえば抵抗のしようがないのである。「くそぉ!くそぉくそぉくそぉくそぉおおお!!僕が・・・ぼくがぁ・・・・・何でお前がそっちなんだよぉ!」「翠星石は・・・蒼星石じゃねーです。翠星石は翠星石として・・・せめて、自分らしくおめーを倒すです!後ろってのは見えなくてこえーでしょう?おめーには蒼星石が味わった恐怖以上を教えてやるですよ!」GSのエネルギーをチャージする。加熱される砲身が白崎の後ろから伝わってくる。「ひっ・・熱い・・・死ぬ・・・死ぬのか・・・僕が・・・こんなとこで・・・・」「あの世で蒼星石達に詫び続けろですぅ!ラプラスーーーーー!!!」零距離でGSのフルパワーが放たれる。その口から出るビームの雨は白崎と、機体を余すことなく飲み込んだ。「ウ・・・うわああああああああああああああああああああああああ!!!!!」こうして、今回の戦いの元凶ともいえる男は自分の危機管理能力に溺れ、最後は自分で尻尾を見せ死んだ。
「や、やったかしら?翠星石が兎をやったかしらー!」「やった・・です・・・金糸雀。その・・・ありがとです。」翠星石が金糸雀にお礼を言う。それに金糸雀は背筋を振るわせる。「す、翠星石が素直にお礼を言うなんて・・・・天変地異の前触れかしら!?」「う、うるせーです!さ、金糸雀が多少は使える事が分かったです!まだ戦いはおわってねーですよ。そのガーデナーシザー・・・貸しといてやるですから・・・とっとと付いてくるです。失くしたら許さんですよ。そうですね・・・兎みてーに零距離からGSをフルパワーでぶっぱなすですぅ。」スイセイセキは残った右腕でGSを持ち直し、再び戦地に向かう。「うぅ・・・失くしたら翠星石は本当にやりそうかしら・・・でも、翠星石の期待を裏切るわけにはいかないかしら。」カナリアも同じように残った右腕で戦地へ向かっていく。これで、梅岡、槐に続き白崎もが去った。残るは遂にアリスのみ・・・
次回予告 ついにアリスの幹部は消えた。残るはアリス本体のみ。全ては槐らが仕組んだ事。しかし、アリスはこれはローゼンの意思と言って聞かない。しかし、真紅だって負けるわけにはいかない。この世界の為に。果たして、真紅とアリスの戦いの行方は・・・そして、長い戦いにピリオドは打たれるのか。次回、超機動戦記ローゼンガンダム 真紅 その右腕に全てを賭けて・・・
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