ラストプレゼント
弟が死んだ
彼はぶっきらぼうで、無茶もよくした。彼の友人が虐められてる時も、何とかその友人を助けていた。基本的にイライラしていたけど、其れでいて何処か優しい人だった。
「行って来る。」
其れが彼の残した、最後の言葉だった。彼はその日、かつあげされていた子供を助けようとして、頭を打って死んだ。彼は出血多量で死んだが、助けられた子供は。ジュンが死ぬ直前に、こう言っていたと言っている。
「無事でよかったな。」
其れが、間接的に聞いた最後の言葉である。其れを聴いた瞬間、涙が溢れてきた。怒りではない、喜びと悲しみによる涙だった。死体は綺麗に拭かれ、安らかに眠ってしか見えなかった。最初は冗談だと思った、否、思いたかったのかもしれない。けれど其れは、医師の残酷な言葉に打ち壊された。
「仏は、腕の脈をやられてます、2分ぐらい持ちこたえたそうですが・・・」
何も言えなくなった、何も見えなくなった、何も聞こえなくなった。気が付くと私は、病院のベットで寝ていた。軽度のショックによる、気絶だそうだ。私は運んでくれた看護婦に、数回礼を言うと病院を後にした。一体どんな顔をしていたのだろう。きっと、真っ赤な顔だったんだと思う。家に帰ると、ベットで泣いた。朝になるまで、ずっと泣いていた。朝、親に起こされた、いつの間にか泣き疲れて、寝てしまっていた。夢であって欲しかった、しかし、妙に重たい体は其れを如実に否定した。気が付くと、ジュンの葬式は終わり、ジュンの部屋に入ろうとしていた。
「ギィ・・・ギギギ・・・バタン。」
ドアを開けて、部屋に入った。後ろから妙に古めかしい、寂れた木の擦れる音と。ドアの閉まる音がした。此処がジュンの部屋だと思うと、妙に物がこじんまりとして見えた。そして、幻聴が聞こえるような気がした。しかし、気がしただけで、音は聞こえなかった。ふと机に目を移すと、走り書きの手紙が書いてあった。ペリペリと音を立てて、封を開き。パサリと音を立てて、手紙を見た。其処にはこう描いてあった。
「この手紙を見た人へ・・・もし君がこの手紙を開けるとき。」「僕は、この世にいないかもしれない。」「其れは哀しい事なのだろうが、運命がそうと定めるのなら、仕様がない事だ。」「この手紙を受け取った人へ、僕の遺品は家族に渡してください。」「もし泣いているのなら、僕の事は出来れば忘れてください。」「僕が死ぬ事により、人に迷惑をかけたくありません。」
此処で、また涙が出てきた。もう、泣かないと決めたのに、コレを見ていたら涙が溢れてきた。
「そして、之から言う事に従ってください。」「この家の庭に穴を掘って、其処に紫陽花を植えてください。」「私の願いは此処までですが、この手紙は○○県○○市○○区○○町 ○-○○-○○の桜田家に、帰属します。」「この手紙を読んだ方は、出来れば桜田家に渡して頂けると幸いです。」「そして、コレを読んだ親族の皆さん、今まで迷惑をかけてゴメンなさい。」「出来るなら、大きい紫陽花を咲かせてください。」「平成1X年X月、XX日 桜田ジュン。」
「この子・・・は・・・っ・・・!」
泣き崩れていた、足も震えて立ち上がれない。今は泣いてしまおう、そして、後で庭を掘る事にした。
―――――――――――――――――――――――――――――
夕方だった、庭を掘ると、カチンと音がして手を止めた。慎重に其処を掘ってみると、手に余るほどの宝箱が出てきた。中には一つだけ、深い藍色に輝く、宝石が輝いていた。良く見ると、宝箱の中にこう描いてある。
「さようなら、姉さん、其れ最後のプレゼントです。」「平成1X年X月、XX日 桜田ジュン。」
その後、ジュンを殺害した、犯人は泥酔して酔った所を、尋問した結果捕まり。藍色の宝石は、結局のりが遺書に則り受け継ぐ事になった。最後のプレゼントが、何処から出てきたのは判らない。しかし、其れをのりは家宝として、家系代々家の宝として祭った。結局、のりが其れをつけたのは、紫陽花の穴を掘った時だけだった。その数年後、庭には綺麗な紫陽花が、咲き誇っていた。花は深い、深い藍色をしていた。のりは、医者になり。ジュンの様な事が無いように、どんなに辛くても必死に頑張っているそうだ。心の支え人は、何時も家に居るのだから、辛くは無いそうだ。紫陽花が、少し風に揺られて揺れていた。
fin
このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー と 利用規約 が適用されます。
1文字以上入力してください
本文は少なくとも1文字以上必要です。
1文字以上入力してください。