第一話 「消失」
雪~SMALL MEMORYS~
誰かを助けたいと思った事はありますか?人は救いを求める生き物。なら助けたいと思う人がいるのも道理。これは助けたいと願い続ける乙女の物語。
なんでこうなったの?病院の手術室の前で私は考えていた。何故私は此処に居るのか?それについてはつい2時間程前にと話は遡る。二時間前、私は妹の薔薇水晶、ばらしーちゃんと街で買い物をしていた。休日はいつもこんな感じだ。そしてふと妹がおもちゃ屋の一角を見つめだした。この子は昔から子供みたいにアニメやら漫画やらが好きだからだろう。そしていきなり走り出した。私は少し遅れて待ってと言いながら後を追いかけていく。しかしスピードを緩める気配は無い。そこまでして欲しい物でも見つかったのだろうか?おもちゃ屋まであと10M。9、8、7、6、5、4、3、2、1ドン!と音が聞こえる。何の音かを一瞬考えていた。そして一瞬の後に誰か轢かれたんだとわかった。でも誰が?と考えてると目の前には妹が倒れているのを認識する。足は曲がり目が虚ろとなっている。口からは唾液交じりの血液が出ている。何で妹が?一瞬の間考える、そして導き出した答えは。「これは・・・夢なんですよね。」
交通事故に遭う確立というのはとても少ないと聞いた事がある。妹がそんな確立に当たるなんてある筈が無い。そんな事を考えながら目を瞑る。夢の中で時々これは夢だと認識することがある。そんな時にこうやって目を瞑りそして目を開けると夢が覚めてるのだ。最も夢は覚えてないが。目を開ける。そこには現実があった。目を瞑る前と変わらない光景。つまりこれは夢じゃなかった。て事は・・・て事は・・・。急いでばらしーちゃんの元へと走っていく。「ばらしーちゃん!ばらしーちゃん!」返事は無い。起こす為に体を揺らしているとボキッといういびつな音が聞こえてくる。音があった方向を見ると腕が曲がっている。ただしそれは普通の方向では無く逆の方向へと。「きゃ・・・きゃああああああああああああああああ!!!!」
記憶はそこで途切れて目を覚ましたのは病院。目の前には水銀燈がいる。「何故・・・病院に?何故・・・私は此処に?」「あなた気絶してたのよぉ。」成る程、と言う事は今までのは気絶してる間に見たタチの悪い夢なんだな。それにしてはばらしーちゃんが居ない。「ばらしーちゃんはどうしたのですか?」すると水銀燈は顔をしかめて一つ間をあけて答える。「・・・まだ手術室よぉ。」手術室?何でばらしーちゃんが。そうかこれは。「夢・・・では無いのですか?」コクリと水銀燈が頷く。瞬間、また意識が飛びそうに。「しっかり!雪華綺晶!」飛びそうになった所で水銀燈が私に叫ぶ。その声のお陰で意識は留まる。
「薔薇水晶が事故に遭った時あなたショックで気絶したのよぉ・・・。」「そんな事よりばらしーちゃんはっ!?」水銀燈の体を掴んで揺らしながら聞く。「だから・・・手術室よぉ。」私は水銀燈を突き飛ばすと急いで部屋を出る。何やら水銀燈の悲鳴が聞こえたが関係ない。非常事態だ。急いで手術室を探す。「手術室はどこですかっ!?ばらしーちゃんの!」そこいらをうろつくナースの首根っこを掴み聞き出す。「お、落ち着いて・・・。」「いいから早く教えて!」ナースが怖がってるのを見て少し力を緩める。興奮しすぎた。「きゅ、急患の方の手術なら恐らくこの下の階の手術室で・・。」先程のようにナースを突き飛ばす。階段を探し急いで下りて行く。途中踏み外してこけてしまい痛いが関係ない。早く行かなければ、早く行かなければ、早く行かなければ。
そこらを走り回ってようやく手術室を見つける。其処の部屋のランプはまだ点いたままだ。「きらきーちゃん・・・起きたの?」この声は・・?はっとして手術室前の椅子の方を見る。雛苺が居た。彼女が声をかけて来たのだろう。よく見ると他に金糸雀、真紅、雛苺が居る。「あなた達・・・何で此処に?」“あなた達双子姉妹が二人揃って病院に運ばれたと聞いたら 駆けつけないとでも思ってるの?“「かしらー。」「・・・御免なさい、心配かけて。 ばらしーちゃんは・・・まだ・・?」真紅らは黙って頷く。思わず今まで溜まってた涙が左目から頬を伝う。
そして今に至る。その後鼻を押さえた水銀燈が来て謝ったがいつもと違い許してくれた。流石にこんな状態の私の事を思ってなんだろう。ほんとに申し訳が無い。暫くの間いるかどうかわからない神様に祈り続ける。お母さんと・・・同じ事にはしないで。昔、事故で死んだお母さんを思い出しながら思う。暫くすると手術室のランプが消える。中から医者が出てきた瞬間飛びつく。「ばらしーちゃんはっ!?」「お、お、落ち着いてください・・・。」はっとして手を離す。医者は咳をしながら話す。「ひ、ひとます命は助かりました・・・。」涙がまた溢れる。良かった・・・ほんとに良かった・・・。助かって良かった・・・。「ですが・・・。」医者がまだ何かを言おうとする。
「意識が戻るかどうかは・・・わかりません。」今なんて?「脳へのショックが大きかったようで・・・。 つまりは・・植物人間に近い状態に・・。」嘘でしょ?嘘でしょ?「嘘でしょ・・?」思ってた事が口に出たところで意識は途切れた。周りの騒ぐ声がするが起きる気力がわかない。
目が覚めると病院だった。この光景を前に見たことがある気がするな・・・。そんな事を考えながら回りを見回すと其処には水銀燈が居た。椅子に座りながら寝ている。私の事を見ててくれたのか?そうだったらほんとに申し訳ない。迷惑ばっかかけてしまって・・・。水銀燈を起こさないようにそーっと部屋を出て行く。探すはばらしーちゃんの部屋。植物人間に近い状態だなんて信じられない。この目で見るまでは。そう思い部屋を探す。が、それはすぐに終わった。姉妹だからか?私の部屋の隣にばらしーちゃんの部屋があった。軽くノックをし入っていく。ベッドには寝ているばらしーちゃん、そして椅子には寝ている金糸雀が居た。この子も見ててくれたのだろうか?「ありがとうございます・・。」金糸雀にそう声をかけてばらしーちゃんの近くへと行く。「ばらしーちゃん・・・もうそろそろ起きた方がいいですよ。」
顔に触れながら喋りかける。いつもの朝のように起こす。いつもの朝のように起きるはず。けど・・・。「なんで起きないの・・?」左目から涙が出てくる。涙は頬を伝い地面へと落ちていく。「死んだふりなんて言って脅かしたりすのですよね?ばらしーちゃん・・・。」泣きながらばらしーちゃんに抱きつく。そして揺さぶる。喋り続ける。呼び続ける。しかし薔薇水晶は目覚める事は無くそのまま雪華綺晶は寝入ってしまった。そして30分程して目が覚める。「寝てたのですか・・。」自分は起きても薔薇水晶は起きない。「・・・。」もう一度ぎゅっと抱きしめる。
「きっとその内・・・目を覚ましてくれますよね。」そう言うと薔薇水晶の体を離し乱れた布団を整えると自分の部屋へと戻っていく。もし水銀燈が起きてたらありがとう、ごめんなさいを言わなければ。そう思って扉を開けるとそこに水銀燈がいた。「きゃっ・・・!」「驚かさないでぇ。」水銀燈の言葉で少し冷静を取り戻す。「水銀燈・・・ごめんなさい・・・そしてありがとう・・。」「気にしなくていいのよぉ、友達なんだからぁ。」ほんとにありがとう、ごめんなさい水銀燈。そんな事を思い浮かべてると何か聞こえる。「これは・・・歌ですか・・?」隣の方の部屋から聞こえてきた。「からたちの・・・とげは痛いよ・・青い青い・・・。」弱々しいが綺麗な歌声が聞こえてきた。
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