第二十話 金糸雀の決断
「超機動戦記ローゼンガンダム 第二十話 金糸雀の決断」
「よし、今日はここまでにしよう。後はみんな自由行動でいいよ。」「やったかしらー。みっちゃんの家行って来るかしらー!」ミーティングが終わった途端に金糸雀が部屋を飛び出していく。ここ数日の見慣れた光景だ。「や~れやれですぅ。金糸雀は無駄に元気すぎるですよ。」「はははっ、いいじゃない。ようやく探してた人に会えたんだからさ。」何故かプリプリしている翠星石を蒼星石がなだめる。「う~、でも最近カナが遊んでくれないからちょっとつまんないの~。」「ふふ、じゃあ雛苺。私と遊びましょうか。」ブータレる雛苺をなだめるのは巴の仕事だ。「でも、どうするのかしらねぇ。金糸雀ったら。」そんな光景を見ながらヤクルトを飲みながら水銀燈がいう。「どうするって・・・何をだ?」「もしかしたらメイデンを抜けて金糸雀がみっちゃんさんと暮らす・・・と言う事でしょう?」紅茶を飲みながらJUMの疑問に答えるのは真紅だ。「そっか・・・確かに金糸雀が戦ってたのはあの人に会いたかったからだもんな・・・」「カナリアはあの子しか乗れない。戦力が減るのは厳しいが・・・だが止める事はできないな。」雪華綺晶の言葉に部屋に沈黙が走る。みんな思ってることは同じなんだろう。そんな時だった。ベジータから通信が入った。「JUM!大変だ!そっちにアリスの部隊が攻め入った!防衛網は突破されている・・・迎撃してくれ!!」
「ん~、カナのバイオリンはとっても安らぐわぁ~。もうさいっこ~。」金糸雀はみっちゃんの部屋でバイオリンを弾いていた。「ふふっ、カナの音楽はみんなの癒しかしら~。」金糸雀はみっちゃんが用意してくれた好物の玉子焼きを摘む。とても幸せそうな空間だ。そんな中でみっちゃんは金糸雀に話を切り出した。「ねぇ・・・カナ。もう一回私とここで暮らさない?レジスタンスなんて抜けて、静かに暮らさない?」「みっちゃん・・・そんな事、急に決められないかしら・・・」金糸雀は迷っている。しかし、そんな金糸雀の手を握り締めるみっちゃん。「お願い!カナ・・・戦場にいたらカナだっていつ死んじゃうか・・・せっかく会えたのにカナが死んじゃったら、私・・・私・・・」握り締めた手に涙が零れ落ちる。「みっちゃん・・・カナは・・・カナは・・・」そんな時、街中に警報が響き渡った。来たのだ・・・アリス軍が。「!?敵襲・・・いけないかしら!カナも行かないと!」走り出そうとする金糸雀。しかし、みっちゃんは強く金糸雀の手を握った。「お願い、カナ!行かないで・・・もう・・・別れたくないよ・・・」「みっちゃん・・・・」金糸雀はその場を動けないでいた。
「金糸雀がまだきていない・・・サクラダはここから動けないな・・・MSだけ出撃させろ!」JUMが指示を出す。それとほぼ同時に6機のMSが出撃していく。「艦長、敵軍確認できました。敵艦、ディアーズ1隻。MS識別・・・バーズ20機・・・これは!パイロットは警戒してください!ラプラスがいます!」「白崎か・・・機体は直ったようだな・・・」出撃した雪華綺晶がつぶやく。「いいか、街に被害を出させるわけにはいかない!必ず止めるんだ!!」「分かってるのだわ・・・真紅、RG005行くのだわ!」シンクがサクラダから射出される。アリス軍の前に6機が立ちはだかった。「お久しぶりですねみなさん。おやぁ?紫のお嬢さんがいないですねぇ・・・どうなさいました?」白崎が不適な笑みを浮かべながらいう。「貴様・・・!!」それに大して明らかな怒りを向ける雪華綺晶。「はははははっ!大人しくこちらに来ればよかったんですよ・・・さぁ、やりましょうか!」20機のバーズとラプラスが向かってくる。ここに戦闘が始まった。
「そこなのだわ!」シンクが出力の上がったライフルをバーズに向けて放つ。1発目は右脚部へ、2発目は腹部を直撃。撃墜させる。コクピットに警告アラームがなる。反射的に機体を翻すとそこにビームが通っていく。「いや、まだ出さないでいい。待機させておけ・・・おっと?」ラプラスへ接近していくのはソウセイセキ。ソードモードでラプラスに切りかかる。「これはこれは・・・貴方が突っかかってくるとは。」「お前は薔薇水晶を・・・仲間を侮辱した!!」二つの刃が乱れ舞い、ラプラスに襲い掛かる。しかし、ラプラスは両手に持ったビームサーベルでそれを捌いていく。「いやいや、熱いですねぇ・・・これならどうですか!ラ・ビット!!」ラプラスの背後から複数のファンネルが射出される。「接近戦しか脳のない貴方にはこれは厳しいのでは?」ソウセイセキの周りを飛び交うラ・ビット。しかし、それに向かってビームの雨が降り注ぐ。「蒼星石は苦手でも翠星石は得意ですよ!」「助かったよ、翠星石!でやああああ!!!」再び切りかかるソウセイセキ。ラプラスはかわしはするが、さっきより余裕はない。「くっ、やりますね・・・さすがは接近戦に特化した機体だ・・・ならば・・・ディアーズ!こちら白崎だ。残りを出せ!!」白崎の合図と共にディアーズからさらに10機が飛び出した。「!敵機追加・・・このままでは捌ききれません!」
「カナ・・・私と一緒に静かに暮らそう?ね?」みっちゃんは金糸雀の手を握りながら懇願する。「カナは・・・カナは・・・」金糸雀は迷っていた・・・確かに自分の目的はみっちゃんともう一度暮らすことだ。今、願いが叶おうとしている。しかし・・・いいんだろうか。自分だけが幸せになって。そして、ハッとする。「みっちゃん・・・聞いて欲しいかしら・・・カナにはね、薔薇水晶っていう友達がいたかしら。」金糸雀が小さな声が語り始める。「薔薇水晶はね・・・カナの力が足りないせいで死んじゃったの・・・カナにもっと力があれば、真紅があんな事にならずにすんで・・・そうすれば薔薇水晶だって・・・」金糸雀の頭にはあの光景が浮かんでいた。金糸雀だって悔やんでいた。Reカナリアを止められなかった事を。「カナ・・・・」「だから、カナは戦わないといけないかしら・・・カナだけ今戦うのは止められないかしら。戦わないとカナとみっちゃんみたいな人たちがきっと出ちゃう・・・だから・・・だからカナは戦うかしら。」金糸雀は窓から外を見る。遠めに仲間達が戦っているのが見える。数が絶対的に不利だ。自分が行っても敵の撃墜の役には立たないのかもしれない・・・それでも、音を奏でる事はできる。「みんなもみっちゃんと同じようにカナの音が好きって言ってくれてるかしら。だから、カナは音を奏で続けるかしら・・・それが、カナの戦いだから!!」金糸雀は、みっちゃんにそう言い切った。「カナ・・・しばらく見ないうちに大人になったね・・・子供だったのは私のほうか~。」みっちゃんは金糸雀の手を離すと金糸雀を抱きしめていった。「いってらっしゃい、カナ・・・でも・・・絶対帰ってきてね。私、ずっと待ってるから・・・」
金糸雀は走った。サクラダまで。その小さな体を精一杯に動かして急いだ。サクラダは金糸雀を待つように停泊したままだ。急いで中に入ると一直線にデッキに向かう。「お待たせかしら!JUMに伝えて!サクラダ発進していいかしら!」金糸雀は整備士に伝えると急いでカナリアに乗り込みシステムを起動させる。その途中で少し揺れる。恐らくサクラダが発進したのだろう。「レンピカ、スィドリーム照準、目標前方敵機!てえええーーーー!続けてメイメイ照準!」JUMが矢継ぎ早に指示を飛ばす。しかし、そこへディアーズから追加されたバーズが5機ほど向かってくる。手にバズーカ砲。サクラダのブリッジに照準が合わせられている。「いけない・・・お願い、間に合って!!ファンネル!!」水銀燈が危機を察しフェザーファンネルを放つ。しかし、間に合いそうにない。「!?しまった!迎撃!」「ダメです、間に合いません!!!」引き金が引かれるかどうか、その瞬間だった。バーズの動きが止まった。「迎撃のパルティータ!間に合ったかしら・・・」範囲内の人工知能の機能を停止させる迎撃のパルティータ。こんな芸当ができるのは彼女だけだ。スイギントウのフェザーファンネルが止まったバーズを撃墜する。その爆炎から姿を現したのはカナリアだった。「みんな、待たせたかしらー!さぁ、今日もカナの音を聞くかしらー!」
次回予告 自分の意思を伝え再び戦場に舞い戻った金糸雀。その彼女の奏でる音に仲間達は気力を取り戻す。さぁ、卑劣な白崎を蹴散らすのだ。そして、メイデンは新たな戦いへ向かう。次回、超機動戦記ローゼンガンダム 終劇への序曲 戦いは、遂に終盤へ・・・
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