第十八話 絆
「超機動戦記ローゼンガンダム 第十八話 絆」
「真紅!おせぇですよ!」「真紅・・・お帰り・・・」出撃した真紅に双子が声をかける。「待たせたのだわ。さぁ、いきましょうか・・・」Reカナリアがうなだれ兵士のマーチを奏で続ける。真紅はまずはReカナリアに目標を定める。(私にはあの光景はもう悪夢なんかじゃない。お父様とお母様は私を生かしてくれた・・・)左手でビームサーベルを持ち一直線に突っ込んでいく。そのスピードにReカナリアは全く反応できていない。すれ違いざまに閃光が散る。Reカナリアの左腕を瞬時に切断すると、シンクは振り返りながら右腕のビームガトリングガンでコクピットを打ち抜いた。ガクガクと油の切れたロボットのようにReカナリアがその機体を震わせると次の瞬間には爆散していた。「1機・・・金糸雀!あなたの出番よ。あなたの音楽を聞かせてあげなさい。」「任せるかしら!音楽は音を楽しむもの・・・それを見せてあげるかしら~!攻撃のワルツ!」Reカナリアが消えた事によりカナリアの音波兵器が本領を発揮する。心地よい音楽がうなだれ兵士のマーチで荒んだ精神を回復させてくれる。「続けていくかしら!追撃のカノン!!」続いて回復させた精神を向上させる音楽に切り替える金糸雀。彼女の本領発揮だ。「真紅・・・ALICE!そして私のガンダム達よ!奴らを殺せ!!」槐が激昂する。しかし、その槐の前には金色の機体が立ちはだかる。「嬢達の邪魔はさせん。てめえの相手はこの俺だ!!」
「おおおおおおお!!」キラキショウがReキラキショウと激しく打ち合う。雪華綺晶のデータを元に作られている人工知能なだけあって、格闘戦の扱いはさすがのようだ。「だが、悪いな偽者。私は負ける気が全くしない・・・」サーベルがぶつかり合い鍔迫り合いになる。同じ力が押し合う。そこへ、キラキショウは頭部バルカンを放つ。大したダメージはないが、攻撃を受けたReキラキショウは後退。そこへ間髪いれずに接近し右腕を切り落とす。キラキショウは今まで頭部バルカンを使った事はない。Reキラキショウがインビシブルを起動させる。しかし、雪華綺晶は全く微動だにしなかった。「槐、君はミスを犯した。データを・・・と言う事は私達の戦闘記録からとったのだろう?ならば・・・偽者の私は下から襲ってくるだろうな。白崎にそうしたようにな!」キラキショウはサーベルを構える事なく、ただ、ライフルを下に向け・・・そして砲撃した。次の瞬間にはReキラキショウは真上から打ち抜かれ数秒落下すると爆発した。「一応私だったモノだ。手向けに負ける気がしない理由を教えてやろう。」雪華綺晶が爆発して散っていった灰色のキラキショウに言う。「人間は、常に成長し続ける。私があそこでバルカンを使ったようにな・・・そこで止まった人工知能にはできない芸当だろう・・・それがお前の敗因だ。」雪華綺晶はそう言うと機体を翻し、仲間の援護に向かった。
上空にビームの雨が降る。双子とRe双子機の戦闘は2対2の入り乱れた戦いになっていた。ソウセイセキはReソウセイセキと。スイセイセキはReスイセイセキと互いに打ち合いを演じていた。「はぁあああああ!!」ソウセイセキのガーデナシザーソードモードの片刃が唸りをあげて襲い掛かるが、同じようにソードモードのReソウセイセキがそれを受けとめる。すかさずもう片刃で反撃してきたReの攻撃をソウセイセキはかわす。「ちぃ・・・埒があかねーですよ・・・・」スイセイセキはお互いライフルモードでビームを打ち合っている。腕は悪くないのだが、回避だって下手じゃない。お互い決定打を与えれないまま時間が過ぎていく。(考えるんだ・・・これは僕と同じ力を持つ・・・いや、多少は僕が上でも決定機は難しい・・・なら・・・)ソウセイセキはシザーモードで強力な斬撃を放つ。ソードモードの片刃ではその衝撃は受けきれずReソウセイセキは吹き飛ばされる。しかし、すぐに立て直すだろう。「翠星石!今だ。相手交代しよう!僕がReスイセイセキを斬る!しばらくこっちを耐えて欲しいんだ!」「合点承知ですぅ!任せろです!」瞬時に蒼星石と翠星石は戦う相手を変わる。同じものから生まれた双子だからだろうか。以心伝心、翠星石は蒼星石の意図に一瞬で気が付いた。ソウセイセキがトップスピードでReスイセイセキに向かっていく。「確かに、僕らの動きをよく研究してるよ・・・でもね。人工知能はその行動の理由を考えられない・・・」シザーモードの鋏を右手に、帽子型シールドを左手にもつソウセイセキ。Reスイセイセキはソウセイセキに向かってフルチャージのGSを放つ。しかし、ソウセイセキはシールドを押し出し突っ込む。GSはビームの雨。範囲も広く回避は難しい。しかし・・・雨は一粒一粒は強くない。ソウセイセキは傘を手に走り抜ける選択をしたのだ。雨を通り抜ければReスイセイセキの目の前だ。GSはフルチャージで打てばほんの数秒だがチャージが必要となり、普通のライフルを放つ事もできない。Reスイセイセキは武器にもなる砲身を振り回すが、巨大ゆえに大振り。ソウセイセキがそれをかわしてコクピットに鋏を突き立てるのは訳もない造作だったのだ。煙を上げながら落下するReスイセイセキ。「急に接近されるとGSをフルで打つのは翠星石の悪い癖だ。君はそれをただの行動とインプットされてたんだね。近づかれれば打つ・・・ってね。僕もよく注意してるんだけどね。危ないからやめろって。」
一方、スイセイセキは距離をとりながらライフルモードでReソウセイセキの猛攻を凌いでいた。いかに蒼星石のデータがあるからといっても、翠星石の近づけさせない射撃を前に得意の接近戦に持ち込めないでいた。Reソウセイセキがバーニアをふかし急接近してくる。しかし、スイセイセキは焦る事なく後退して距離をとりライフルモードで牽制する。「翠星石だって毎日特訓してるですぅ!それくらい充分捌けるですよ。」最も、昔なら焦ってフルチャージで放っていた可能性は高いが。翠星石の視界に青い機体が見える。「・・・合わせるですよ、蒼星石!!」スイセイセキがReソウセイセキの左にライフルをニ連射する。すると、当然かわすためにReソウセイセキは右に回避運動をとる。しかし、そこで待ち構えていたのはソウセイセキだ。何の躊躇もなく鋏を横薙ぎすると腹部から真っ二つになりReソウセイセキは爆発した。
「いい加減落ちるのー!」雛苺が4つの有線ビーム砲を操りRe機に攻撃を加える。しかし、Re機も危なげながら回避をして同じように4つのビーム砲を展開する。線と線が飛び交い、絡まりあう。ヒナイチゴはローゼンガンダムの中では基本性能に若干劣る。パイロット自身もメイデンのパイロットの中では残念ながら下のほうだ。あくまで、メイデンの内部であって一般的には優秀なのだが。とまぁ、言い方は悪いが落ちこぼれ同士の戦いだからこれは互角だったのだろう。その戦いに優等生が乱入すればどうなるか。いや、別にタイマンである必要はないのだ。ただ、Re機はデータを重用するあまり、仲間意識が疎外になってたのが欠点だったのかもしれない。「雛苺!!」キラキショウが急襲する。そこでRe機の人工知能は意識が逸れたのだろう。実に雛苺の人工知能らしい。4つの有線ビーム砲の線で四肢を封じ込めるヒナイチゴ。雛苺は分かっているのだ。自分で相手を倒す必要はない。自分には頼れる仲間がいる。その仲間が倒しやすいようにすればいい・・・と。次の瞬間、Reヒナイチゴは胸部からビームサーベルをはやし、四肢の抑制が取れると落下していった。
「ほらほら、いくわよぉおばかさぁん・・・・ファンネル!!」漆黒の翼を生やした機体からいくつもの羽が飛んでいく。ミサイル型のファンネル、「フェザーファンネル」。その羽のような武器はReシンクへ向かっていく。Reシンクはツインテールでファンネルを次々と撃墜していく。しかし、それでも水銀燈から余裕の表情は全く消えていなった。「もう貴方じゃ私に勝てないわぁ・・・今の真紅のデータなら分からないけどねぇ。」水銀燈がチラリとシンクを見る。紫の右腕を輝かせながらReスイギントウと戦っている。Reシンクが中距離からツインテールでスイギントウを襲う。前回水銀燈はこれに苦戦した。スイギントウには中距離の武器は存在しない。「私が・・・もっと早く気づけばあの子だってもしかしたら・・・」水銀燈が唇を噛む。その言葉の続きは言わない。言ったところで薔薇水晶が戻ってくるわけがない。「ほぉんと・・・私ったらおばかさん。貴方に付き合う必要がなかったのよぉ・・・」水銀燈は真紅をライバルだと思っている。それは恐らく真紅もそうだろう。そこに前回の苦戦があった。人工知能と分かってても、元は真紅。対抗心をむき出しにした水銀燈は自分は苦手、相手は得意の中距離でずっと戦っていたのだ。なんて事はない。スイギントウの得意分野は接近戦。「悪いけど、私の得意分野でやらせてもらうわぁ・・・ファンネル!!」再び羽が舞う。次の瞬間、スイギントウは漆黒の翼を広げその驚異的な機動力で接近していく。Reシンクがツインテールでファンネルを払う。その一瞬の隙。ファンネルを撃墜させるためにツインテールを振り切った瞬間! 一気にスイギントウは間合いに入る。Reシンクは後退しようとするが、もう遅い。「ふふふっ・・・さよぉならぁ・・・」Reシンクはその翼に飲まれて消滅したのだった。
「馬鹿な!私のローゼンガンダムが・・・なぜだ!アリスにはこんな予想はなかったぞ・・・」「余所見とは余裕じゃねえか!喰らえ、ギャリック砲!!」狼狽する槐にべジータが必殺の大口径超高インパクト砲「ギャリック砲」を放つ。槐は狼狽しているはALICEは全くの冷静。ギャリック砲を回避すると頭部インコムを放つ。「信じられん・・・愚かな人間が神であるアリスを覆すというのか・・・?」「そうよ、槐。」Reスイギントウ交戦中の真紅が言う。その表情には一点の迷いも曇りもない。「私達メイデンの体は・・・ひとつひとつが生命の糸で繋がっている・・・」シンクが右腕に握り拳を作り、Reスイギントウに向かっていく。Reスイギントウもホーミングミサイルを放つが、シンクはそれを悠々と回避し懐にもぐりこんだ。「誰かはそれを・・・」そしてその紫の右腕をReスイギントウのコクピットに叩き込む。JUMが必死に強化したその右腕は易々とReスイギントウの装甲をぶちやぶる。そして、真紅は咆哮した。「絆とも呼ぶのよっ!!」その打ち込まれた右腕から閃光が走る。手首に付属されているビームマシンガンがドガガガガと激しい音を立てて、機体の内部をズタズタに破壊する。背部から打ち込まれた弾丸が突き抜ける。そのあまりの衝撃にReスイギントウの頭部がはじけ飛ぶ。シンクが右腕を引き抜き、少し離れるとReスイギントウは光に包まれ消えていった。「・・・全滅・・・だと・・・?認めない・・・認めないぞ!!私は認めん!!私がローゼンに劣っているなど・・・!?なんだ・・・ALICE。何故後退する!!」槐の思惑とは別にスペリオルは何と撤退していった。「その子・・・ALICEは貴方を守るものなんでしょう?健気ね・・・このままで貴方が死ぬと分かってるのよ。」「くっ・・・だがメイデンよ!忘れるな!アリスこそがこの世の神、全て、真理!貴様らはそのアリスの名の下に必ず裁かれるだろう!!!」「馬鹿な奴だ・・・そのアリスこそがお前が負けを認めぬローゼンの物だというのに・・・」撤退していく槐に雪華綺晶は哀れみをこめて言った。
サクラダに各機が帰還していく。あの圧倒的不利な状況にもかかわらず勝ったのだ。「真紅・・・・」最後に帰還した真紅をクルーが全員で迎える。「みんな・・・心配掛けたのだわ。だけどもう大丈夫。私は、まだ戦えるのだわ・・・」真紅が眩しいくらいの笑顔を向ける。「真紅・・・ありがとう・・・あの子もきっと喜んでくれてるよ。」雪華綺晶が真紅の前へ出る。真紅は薔薇水晶に抱きついた。「私こそ、ありがとう雪華綺晶。ごめんなさいは言わないわ。貴方は望まないでしょうから。だから、ありがとう。」その真紅の言葉に雪華綺晶も笑顔を見せる。「さぁ、まだ戦いは終わってねぇですよ!勝って兜のなんとやらですぅ!だからのり、御飯の用意するですぅ!」翠星石が声をあげて食堂に向かっていく。「そうね。私達がみんなでこの戦争を終わらせるのだわ・・・」真紅が空を見上げる。それは驚くほど透き通った青空だった。「メイデンの誇りに懸けて・・・!!」
次回予告 悪夢は去った。しかし、戦いはまだ終わっていない。それでも、各地で盛んになるレジスタンスの活動にアリスは確実に弱ってきていた。そんな中、べジータの計らいでメイデンは一度日本に戻る。次回、超機動戦記ローゼンガンダム 再会 繰り返す事は出会いと別れ、そして再会・・・
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