第十話 槐
「超機動戦記ローゼンガンダム 第十話 槐」
白いガンダムと同じく白だが、ウサギのようなふざけたフォルムの機体が光の刃をぶつけ合う。「ふふふっ、いいですねぇ雪華綺晶。相変わらずの太刀筋で。」「抜かせ・・・貴様の本気がこの程度じゃないのは分かってる。」キラキショウの頭部の右目の薔薇が伸びる。その伸びた茎にはいくつかの針がついている。キラキショウの特殊兵装の一つ、「ローズウイルス」。この針に命中すると刺さり具合にもよるが驚異的な速度でウイルスが進入、侵攻。機体のOSを破壊する兵器。綺麗な薔薇には棘があるってところだろうか。もっとも、射程がかなり短いのでかなり接近しなくてはならない。おまけにこの兵装を知ってる相手ならば必ず近づいてくるのが分かるので当てるのは至難の業だ。しかし・・・キラキショウにはこれを効率的に当てる事ができるもう一つの特殊兵装がある。「もらうぞ・・・・白崎!!」キラキショウの体がみるみる消えていく。「ほぉ・・・貴方にはそれがありましたねぇ・・・」ローザミスティカドライブの副産物。不可視の名を持つ兵装「インビシブル」。レーダーにも感知不能と文字通り不可視だが連続使用は5秒。その後は10秒使用できない。しかし、ローズウイルスを当てる程度ならば5秒もあれば充分だ。
「さぁ・・・どこから来ますか?攻撃の際には姿を見せなくてはならない・・・4・・・3・・・2・・・」ラプラスは右手にライフル、左手にサーベルを持ちキラキショウがどこから現れても迎撃できるようにしている。「1・・・・さぁ来なさい!!」白崎が辺りを見回す。しかし・・・どこにもキラキショウの姿はなかった。「何だと・・・!?よもや逃げたとは・・・レーダーにも反応は・・・重なっている!?まさか!」ラプラスが瞬間的に後退する。その刹那、ラプラスの真下から白い一陣の風が吹きぬけラプラスの右腕を切断した。その風は言うまでもなくキラキショウだった。「ち・・・一瞬だな。仕留め損ねたか。」「驚きましたよ・・・まさかそんな手で来るとは・・・おっと?」ラプラスの右方向からビームガトリングガンが放たれる。右腕こそもぎ取られたものの白崎は冷静にかわす。「薔薇水晶ですか・・・これは厄介だ。」キラキショウに並ぶように現れたのは紫の機体バラスイショウ。「白崎・・・何で・・・?何で貴方が?」「何故?これはオカシイ。私達はもともとこっちですから。アリスはローゼンが作った奇跡。そして・・・ローゼンの弟子である槐がこちらにいてもオカシクないでしょう?」
「槐・・・槐はやっぱりそっちにいるんだね・・・?」薔薇水晶に動揺が走る。「ええ、おりますよ。そして、貴方に失望しております。槐は貴方に反アリスになってもらうためにその機体を託したわけじゃないですから。」白崎がニヤリと笑う。しかし、その間に雪華綺晶が割ってはいる。「薔薇水晶、惑わされるな!私と薔薇水晶の目を奪ったのは誰だ!?他でもない・・・・アリスだろう。」「目?確かに貴方の右目は存在しませんが、薔薇水晶の眼帯の下にはちゃんとあるでしょう?馬鹿馬鹿しい。」「馬鹿馬鹿しくなんかない!」薔薇水晶が本当に珍しく感情を爆発させる。左腕のガトリングガンを放ちながら右腕でサーベルを持ちラプラスに向かっていく。「ほぉ?いいんですか?槐は貴方を望んでいるんですよ?貴方を理解している彼がですよ?」「理解してるなら馬鹿馬鹿しいなんて言わない!!私の眼帯はお姉ちゃんとの絆。私がお姉ちゃんの右目になる代わりにお姉ちゃんが私の左目になる誓い。それを馬鹿馬鹿しいと言うなら・・・貴方は敵だ!」薔薇水晶の斬撃を残った左腕のサーベルで切り払う。しかし、尚もバラスイショウの攻撃は止まらない。一方、水銀燈達の戦いも損傷した翠星石を欠きながらも有利に進めていた。「これはこれは・・・またも失敗ですかね。ならば、退散させてもらいましょうか。」「逃がすか!貴様はここで討たせて貰う!!」しかし、キラキショウがその前に立ちはだかった。
「はははっ、これは可笑しい。私は貴方達を二人相手でも負ける気はないんです。なぜなら・・・」ラプラスの背後から無数のファンネルのような兵器が射出される。「私は多数の相手が得意なんですから♪さぁ、行きなさい!ラ・ビット!!」白崎の号令と共にどことなく兎の形をした小型遠隔兵器ファンネルがバラスイショウとキラキショウを囲む。「ふん、兎のラビットとビットを掛けているのか。下らない・・・」(・・・ちょっと面白いかも。)どうやら白崎と薔薇水晶のネーミングセンスは最悪のようだ。二機を取り囲んだファンネル・・・ラ・ビットは縦横無尽に動き回り隙あらばビームを発射する。「っくぅ・・・鬱陶しい・・・」キラキショウがラ・ビットに銃身を向けて打ち落とそうとするがすばしっこく当たらない。「きゃぁ!?しまった・・・」バラスイショウが回避しきれずに左足を持っていかれる。「言ったでしょう?こっちのが得意だって・・・むっ!?」ラ・ビットの回避に追われている二機を傍観していたラプラスが回避行動をとる。ラプラスのいた場所には4つの有線制御式ビーム砲が囲んでいた。「うゆ、兎さんこの前のお返しなのー!!」その主はヒナイチゴだ。逃げ回るラプラスを4つのビーム砲が追いかける。「ちぃ・・・自分がやられると案外嫌ですね・・・ここは大人しく去りましょうか。」ラプラスがラ・ビットを背部に収納し戦線を離脱する。梅岡、白崎とアリスの幹部クラスが立て続けに攻めて来た戦いだが、メイデンは何とかしのぐ事ができた。
「JUM、大丈夫?」センダイ基地で修理、補給を受けている間メイデンのクルーはミーティングを行っていた。「ああ、みんな今回はすまない。迷惑をかけた。」「ま~ったく、JUMはだらしねぇですぅ・・・まぁ、無事ならいいですけど。」翠星石がツンとしながらもJUMを気遣う。「僕達も前回同じような事があったから、気持ちは分かるよ。それより・・・雪華綺晶と薔薇水晶。」蒼星石が二人の方を向く。「何かな?蒼星石。何となく言いたい事は分かるが。」「きっとその通りだよ雪華綺晶。君達はあの兎を知ってる風だったね。よかったら話して貰いたいんだ。」蒼星石がそう言うと雪華綺晶は一旦席を立つ。「少し長くなる。飲み物をとってこよう。何がいい?」雪華綺晶が全員に飲み物が行き渡ったのを確認すると再び椅子に座り飲み物を口に入れ一服する。「そうだな・・・話しておこう。私達とあいつの関係を・・・・」それはあまり自分の事を話さない雪華綺晶が明かす雪華綺晶と薔薇水晶の過去だった。
次回予告 梅岡と白崎を何とか撃退したメイデン。修理などの空き時間を使って蒼星石は雪華綺晶と薔薇水晶に聞きたい事があると言う。果たして二人と白崎の関係とは。二人の壮絶な過去とは。次回、超機動戦記ローゼンガンダム 姉妹の目 その思いは二人の絆に・・・
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